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14話 どうして、そうなるんですか?

少し前の時間、水奈月莉菜の部屋。

『莉菜、ありがとう。

 昨日はとても幸せな一日だったの。

 本当に莉菜には感謝してもしきれない。

 私、甘えてばかりだね。

 莉菜も、私に出来る事があったら何でも言って。』


水奈月莉菜は、その文を読むと満足そうに、優しく笑んでノートを引き出しに仕舞った。



今朝の騒動で、僕と水奈月さんが付き合っている事が、祐二に知られてしまった。

まんまと嵌った僕の所為・・・じゃなく祐二が悪い。

顔も要領も良く、勉強も出来るんだから、僕で遊ばなくてもいいじゃないか。

いっぺん死んどけ。


授業中でも、斜め後方からニヤニヤしている感が伝わってくる気がした。まぁ、それに関しては僕の思い込みなんだろう。

・・・

ちょっと振り向いてみたら、気付いた祐二が満面の笑みを向けて来た。

くっそ。


「いやぁ、昨日は盛り上がって面白かったな。」

休み時間に祐二が話しかけてくる。いや、面白がったのはお前らだろ。

「僕で遊ぶなよ。」

「いや、狩り中にぼーっとしていた数音が悪い。」

ぐ・・・そう言われると否定は出来ない。

「で、何時からだ?」

来ると思ったよ。ああ、僕のバカバカバカ!何で言っちゃったんだよ・・・。

「せ、先々週・・・」

素直に言った僕の背中を、祐二はバシっと叩いて無音で笑っている。何が面白んだよ。こっちは死ぬほど恥ずかしいっていうのに。

「なぁ森高と雪待。」

僕と祐二がいつも通り会話をしていると、滅多に話しかけてこない四乃森しのもり 麻美まみが話しかけて来た。

「なんだ四乃森?」

「お前らさ、DEWやってるよな?」

「ああ。」

「私も混ぜてよ。」

まさか、他のクラスメートからそんな話しが出るとは思わなかった。祐二は要領がいいから誰とでも話せるが、僕は苦手だから難しい。

「浩太はどうしたよ?」

「あいつさ、一年の成績が悪かったから、一学期のテストで点数上がるまで禁止になったんだよ。DEW出るって分かってるくせに、馬鹿だよな。」

空井そらい 浩太こうたは四乃森さんの幼馴染だったかな、確か。

「他にやってる奴分かんないし、一人だと大変だろ、野良はムカツクしさ。ね?」

そう言って四乃森さんは、片目を瞑って顔の前で両手を合わせる。

「まぁ、そうか。俺は構わないが、数音はどうよ?」

合掌でお願いポーズ取っている人を断る理由は無い。それに、せっかくプレイするなら楽しみたいって思うのは当然だ。

「僕も、構わない。」

「まじかぁ、さんきゅー。じゃ、早速今夜ね。」

と言って、四乃森さんは笑顔で、ちょっと癖のあるショートボブの髪を揺らして席に戻った。

「まさか、他の人とも一緒にする事になるなんてね。」

「ああ。」

祐二は返事をすると、僕の肩にポンと手を置いた。なんだよ。

「良かったな、ありす。」

しまっっったぁぁぁ!

名前の事なんてすっかり忘れていた。他の人にも知られちゃうじゃないか!

「諦めろ、手遅れだ。」

祐二め、こいつ知ってて促しやがったな。と思って睨もうとしたら、既に席に退散していて、同時にチャイムも鳴り響いていた。




「雪待、ちょっと付き合え。」

放課後、DEWやるぞって意気込みを水奈月さんの言葉が打ち消す。左手の親指で教室の出口を指さしつつ、右手はスカートのポケットに突っこんでいる。

「はい。」

当初のインパクトはもう無いけど、それでも恐い事に変わりはない。逆らうとか無理です。


水奈月さんは前回と同じ、体育倉庫裏に僕を連れてきた。

よくよく考えると、この水奈月さんがR3とDEWを買ったんだよな。でも、ログインしてプレイしているのは別の水奈月さんだ。言動を見る限り。

「あの、なんでしょう。」

「そんなに警戒するな。」

いや無理だから。そう言われても無理だから。不良っぽい雰囲気の人に、体育倉庫裏とか呼ばれたら無理だからね?

心の中で言っておく。

「ちょっと、礼が言いたかっただけだ。」

なら教室で言ってよ。ここに連れてくる必要ないでしょうが。と、言えたらいいな。

「そ、そうですか。でも僕、何もしていませんよ?」

と言っている間に、水奈月さんがスカートの裾を持ちあげた。

はっ?

白い太腿から、付け根までが見える。当然、白のパンツもだ。

また恥じらいの顔で目を逸らしている。

何が、したいんだ?

「こ、これで、いいか。」

「えっと、どういう事ですか?」

恥じらうくらいなら、やめて欲しいんですが。こっちの方が恥ずかしいので。

「だらか、礼だと言っただろう。」

・・・

えーと、何かのお礼で、僕は下着を見せられたって事か?ちょっとおかしいだろ、それ。

「どうしてお礼で、そうなるんですか!?」

「いや、男子が喜びそうだと思ったんだが。」

そりゃ喜ぶでしょうよ。その通りだと思いますけど。僕だって例外じゃないですけど。けど・・・


>はい、ご馳走です。

 それだけですか?

 おかわりを要求します。

 上も一緒にお願いします。


>今は出てくんなぁぁぁぁっ!!

はぁ、はぁ・・・まったく、誰だよこんなふざけた選択肢出す奴は。


「お礼なら、普通に、ありがとうだけで、いいと思います。」

って、意見を言ってしまったが大丈夫だろうか。

「そう、なのか。わかった。」

「それと、理由がわかりません。教えて、もらえますか?」

とらえず納得してくれて良かった。しかしお礼の意味がさっぱり分からない。一番納得いかないのはそこなんだ。

「莉菜が、喜んでいたんだ。」

莉菜ってあなたですよね。

もしかして、解離性同一性障害の一種か何かだろうか・・・。

「あいつが幸せそうにしていた。私はそれが、嬉しかった。」

既に別人扱いなんですが・・・。

「だからだ。」

一人で話しを進めて終わってるけど、僕は追いつけないんですが。突っ込みたい事はいろいろとあったが、見た事のない穏やかな顔を見ると、それは出来なかった。

「いまいま分からないですが、もう、下着見せるとか、止めてくださいね。」

「分かった。」

ふう、良かった。心臓に悪いんだよ、見せられるこっちも。

「嫌、だったか?」

「そりゃ嬉しいですけど・・・も・・・」

って、言っちまったぁぁぁっ・・・

雰囲気に油断して、つい普通に心の中で呟くように。だめだ、この変態とか言われそうだ。

「なら良かった。」

水奈月さんはそれだけ言うと、タバコを取り出して火を点けた。

ってまたっ!?

「雪待。」

「なんですか・・・」

「あいつ、莉菜の事をこれからも頼むよ。お願いだ・・・」

空に向かって煙を吐き出しながら、水奈月さんは言った。何処か、もの悲しげな表情で。

「わかりました。でも、水奈月さんも、それ止めた方が、いいと、思います。」

決して目を向けず、指先だけでタバコを指差して言ってみる。

頑張ったよ、僕。屍は誰かが拾ってくれるだろう。

・・・

「そう・・・だな。」

水奈月さんは、ポケットから灰皿を出すとタバコの火を消して入れた。

あれ、怒られない?

「じゃあな。」

それだけ言って去って行った水奈月さんの姿を、見えなくなるまで僕は呆然としていた。

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