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12話 な・・・なっ・・・!?

ファミレスを出て家に帰ると、もちろんDEWをプレイする。晩御飯は速攻で食べて、ボスに睨まれながらも部屋に戻る。

昨日と同様に祐二と待ち合わせ、狩りに出かける。次の段階に進むには、装備が心許ないので、強化のための素材集めが今日の目的になっている。学校で前もって話せるのは楽でいい。ゲームを開始して直ぐに動けるから。

祐二とプレイしていると、見覚えの無いプレイヤーから話しかけられる。それが誰なのか直ぐに判った。だって名前がRINAだったから。

実名使うとか、今の時代は怖くて出来ないが、初心者はやりがちな事だ。まあ、オンライン上でRINAだけで特定されるって事はまず無いだろうが。

問題は会話内容になる。後で、リアルの事はゲーム内で発言しないように注意しておかないと。


それからは水奈月さんが慣れるのと、装備強化を祐二と二人で手伝ったから、自分達の装備強化はほぼ進んでいない。それでも、三人で遊べたのはかなり楽しかった。

それは上位者には追いつけないという諦めからか、自分より苦手な人を助けるという優越感からか、単に水奈月さんと遊べた事からか、意識はしなかったけど。



翌日の土曜日も学校では祐二と話した。

ただ、水奈月さんは話しに参加して来なかったけど。腕を組み、足も組んで椅子に座っているので、別の方の水奈月さんなのだろう。そう言えば、一緒に買いには行ったけど、DEWはしているのだろうか?


DEWが出てから当然、祐二からのゲーセンへの誘いも無く、速攻家に帰ってゲームをする。土曜だからゲーム時間も平日より取れるので没頭した。

ただ、

今日は水奈月さんはログインしておらず、祐二と夜遅くまでプレイをした。昨日出来なかった素材集めと装備強化をしつつ、新たな場所へも進んだ。


そしてついに、日曜日になった。本当なら朝からDEWをぶっ続けでプレイする予定だったのだけど、水奈月さんと約束をしてしまったので、出かける事にする。祐二にはちょっと予定があるから、昼過ぎからログインするとは言ってあるから、一人でプレイすんだろうな。


「ごめん、待った?」

ゲーセンの前の自販機でカフェオレを買ったところで水奈月さんが現れた。

「今、来たところです。」

着いて直ぐにカフェオレを買ったので、来たばっかりだ。コーヒーは苦くて得意じゃない。

「そう、良かった。」

まだ五分もある開店時間に、カフェオレを買って飲もうと思って買ったところだった。十時にならないと開店しないから、もう少し遅くても良かったのにと思う。

「私も何か飲もうかな。」

水奈月さんはそう言って、自販機を見た後僕を見る。

「ね、一口頂戴。」

はぁっ!?僕が飲んでいるのに、何を言ってるんだ・・・。

「嫌なの?」

「い、いや。僕、口を付けちゃってるから・・・」

関節的とはいえ、キ・・・キス・・・に、なるじゃないか。

「私は気にしないよ。」

と、笑顔で言う水奈月さんには逆らえず、無言で缶を差し出していた。

「ありがと・・・あ、甘くて飲みやすい。」

水奈月さんが言いながら缶を返してくる。受け取ったはいいけど、これ、続き飲んでいいのかな。いっそのこと飲みきってくれたら、余計な事を考えなくて良かったのに。

でも、返したって事は、飲んでいいんだよね?

そう思って僕は残りを飲み干した。

味がよく分からない。

「関節キス、しちゃったね。」

言うなぁっ!

しちゃったね、じゃねぇぇっ!

堂々とその言葉を口にした水奈月さんと違い、免疫の無い僕は硬直したまま、ゲーセンが開店した事に気付かずに立ち尽くしていた。


その後、立ち直ってゲーセンに入ったはいいが、水奈月さんの笑顔としちゃったねが、頭の中でぐるぐるしてゲームどころではない。

「開店時のゲーセンって、あまり人がいないね。」

そりゃそうだ。

「なんか貸切みたいでちょっと楽しい。」

そんな事、気にした事なんてなかった。朝から祐二とゲーセンに来る事なんてよくある事だが、自分のやりたいゲームをするばかりで考えた事もないや。

「あ、これ可愛いよ。」

水奈月さんがそう言って足を止めたのは、クレーンゲームだった。ガラスケースの中には、よく分からないぬいぐるみが入っている。掌に収まりそうなサイズで、ボールチェーンが付いていた。

ただ、可愛くはない。

何かのマスコットか、何かのキャラなのだろうけど、僕は知らない。

「雪待くん、これ取れる?」

僕はクレーンゲームがあまり得意ではない。

「やって、みます。」

でも、下から見上げて懇願するような眼差しを前に、やらないとは言えなかった。だって、どう見ても可愛い。

「はい、上げます。」

「わぁ、嬉しい!」

五百円で六回プレイ、最後の一回でなんとか取れたものを、水奈月さんに上げた。

景品は可愛くないが、喜ぶ水奈月さんが見れたことは嬉しかった。


「あ、そうだ、プリクラ。」

水奈月さんがその筐体を見ると、思いついたように言う。

僕には縁の無い筐体だ。って、まさか・・・

「雪待くん、撮ろう。」

やっぱり来たかぁ・・・

「え・・・いや・・・」

そういうの、苦手ですが。

「お願い、どうしても一緒に撮りたいの。」

言われると断れません。でも、本当になんで僕みたいなのと写真を撮りたいんだろう。今もそうだ。でも、ちゃんと聞けない僕のヘタレっぷりが自業自得だ。

「うん。」


筐体の中に入ると、まるで小さな個室のようで緊張した。

「あまり固くならないでよ。笑顔でね。」

無茶言うな。

結局笑顔なんて無理な話しでした。水奈月さんが肩を寄せて、くっつけて来るのだから、完全に硬直状態で撮影された。

まぁ、肩が触れなくても無理ですが。

「次、隣ので撮ろ。」

まだ撮るのかよ!?

恥ずかしいのでもう解放してください。と、思っても口から言葉を出す事は出来ない。


「よし、じゃぁいくね。」

次の筐体でも、セットした水奈月さんが僕の右隣にならんだ。

「へっ?」

直後、腕を掴まれたのは認識で来た、その所為で変な声が出る。僕の腕に、水奈月さんが腕を絡めてきたので、柔らかい感触が腕に伝わってくる。

そこで硬直した僕に、更なる事件が起きた。

水奈月さんの顔が、僕の顔の横に在る。

な・・・な・・・なぁっ!?

なんで唇を僕の頬に付けているんだっ!?

「ちょっと、恥ずかしい・・・」

どの口が言ってんだぁっ!

自分から付けておいてなんだその言い種は!

僕の中のかなり遠くでそんな突っ込みをしていた。僕は、頬にキスをされた事で、全ての機能が停止したような感覚に陥っていた。


>嬉しさで天に昇る。

 虚ろで足を滑らせ海に落ちる。

 呆然として崖から落ちる。

 ビルの屋上から鳥になれる。


うっすらとした意識の中にそれは降ってきた。相も変わらずアホかって突っ込みたい。

って、どれもこの世から旅立つ選択肢じゃないか。

>・・・

僕は何も考えられず、何も選択出来なかった。

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