11話 え、それを聞きますか?
いやぁ、楽しい。映像は綺麗だし、動きもぬるぬる動いてスムーズだった。僕はヘタレなんで、間合いの取りやすい槍を使ったが、祐二は大剣を振り回してた。これで、支援魔法の使える人がいれば、もっと立ち回れるんだけどなぁ。
それは追々考えるとして、昨日は祐二と夜中の二時まで遊んでしまった。
もちろん、学校なんて行きたいわけがない。
行きたくないが・・・
ボスには逆らえません。
「学校来んのかったりーなぁ。」
朝、教室で会うなり祐二がそう言ってきた。同感だ。もう帰りたい。
「帰ってゲームしたいね。」
「だなー。」
始めてしまったら続きがやりたくなるのは当然。授業どころじゃなく、帰ったらあれしよう、これしようをずっと考えてばかりだ。
まぁでも、祐二とその話しを楽しめるってのはいい。
ゲーム内でチャットするより楽だし。
「今夜も行くだろ?」
「行かない理由を探す方が難しいな。」
「だよな、飯食ったら集合でいいか?」
笑いながら聞いてくる祐二に、僕は頷いた。
そこで水奈月さんが教室に入って来る。時間ギリギリなんて珍しい事もあるもんだ。
その水奈月さんの、少し疲れたような顔が気になった。
「聞いていい?」
次の休み時間、水奈月さんが僕のところに来る。祐二は教室から出て言ったので、トイレにでも行ったのだろう。
「どうしました?」
「今朝、早起きして一時間ちょっと、ゲームしてみたの。」
朝ゲー・・・
僕でも滅多にやらない。
いや、時間があったらやるんだけど、どちらかというと夜遅くまでやる事の方が多いから、朝起きれないってだけの理由なのだけど。
でも、明け方のゲームって何故かテンションあがるんだよね。
「うん、それで何処まで行きました?」
「それが・・・」
「それが?」
「名前が決まらなくて始まってないの?」
「へ?・・・」
おいおいおい・・・
そんなところで躓くなんて思わなかったよ。慣れる以前の問題じゃないか。
「名前、何にしたらいい?」
あの、人に聞くような事じゃないと思うんですが・・・。自分の好きな名前つければいいじゃないか。
>町長がいいよ
いや、村長かな
僕の名前にしなよ
ウルメラスリームヘイラアンジェリカ二世
僕、劇的にセンスがない。オンラインで自分の名前晒すわけないし、最後の誰だよ!どっからそんな名前が出て来るんだ、アホか!
>ウルメラ・・・
「ん、どした?DEWの話しか?」
危なく誘惑に負けて選びそうになった選択肢を遮って、祐二が戻って来た。
「うん、水奈月さん名前が決まらなくて始まらないらしいよ。」
「まじかよ・・・適当でいいんじゃね?」
水奈月さんが困った顔をする。
「でも、自分で付けた名前でずっとプレイするのよね?」
「うん。」
「悩むじゃない!」
その段階は疾うの昔に過ぎ去ったからなぁ・・・
「森高くんは何にしたの?」
「ゼット。」
「由来は?」
「ん、単にアルファベットの最後だから、これでいいかって気分だけど。」
ああ、そんな理由で付けたのか。僕も知らなかった。じゃぁ、他にタロウとか、マメとか、カラスとか、その時の気分で付けてんだな。コウヤドウフとかもあった気がするな、晩飯で出たからとか言いそう。
「雪待くんは?」
・・・
・・・
・・・
「Alice、ちゃんと女キャラだぞ。」
言うなーーーーーーっ!!
「ありす?」
「ああ、アリスだ。」
「へぇ、ありす。」
何回言う気だっ!!
絶対馬鹿にしてんだろ・・・
僕は恥ずかしくなって机に顔を伏せた。
「今更だろ。どうせゲームで集まったらバレんだって。」
そうだった!!そんな事を考えもせずに、何時もの乗りで作ってしまった。そう言えば、水奈月さんも一緒にやるって話しだった・・・。
「でも可愛い名前よね、ありす。」
「良かったな、アリス。」
うるせーーーーーっ!
そこでチャイムが鳴り、僕はアリス地獄から解放された。穴が在ったら入りたいとは、こういう事なんだな・・・。
放課後、話しがあるとかで水奈月さんに誘われ、いつものファミレスに寄った。
裏切り者の祐二は、水奈月さんが僕に話しかけた直後に、ダッシュで教室を出て言ったのが見えた。
ファミレスに入って、少し真剣な顔をしていた水奈月さんが、意を決したように口を開く。
「今度の日曜、少しの時間でもいいの、私とデートして。」
急な話しだった。デートしてって真っ直ぐ過ぎて驚いたけど。
「日曜?」
「うん。雪待くんがDEWをやりたいのは分かってる。でも、少しでもいいの、私に時間を頂戴。」
ここまではっきり、何かを要求してくる水奈月さんは初めてだった。
ちょっと強引なところもある、程度だったから。今までは。
水奈月さんの言う通り、日曜は丸々一日時間が出来る唯一の日だ。必要な事以外は、ずっとゲームに時間を使いたい。
「ゲーセンでもいい。まだ二人で行ったことないし。だめ?」
場所が何処かって問題じゃない。
でも、水奈月さんの懇願するような眼差しには逆らえなかった。可愛いから。ってだけじゃなく、何処か真剣だったからだ。
僕がコクリと頷くと、水奈月さんの顔が明るくなった。嬉しいけど、なんで僕なんだろうという疑問が、また湧いて来た。
「良かった。後は、一緒にDEW出来るように頑張らないと。」
何故、そこまでするのだろうか。
僕には意味が分からない。
「良かったら今夜、手伝いますか?」
「え、ほんと!?だったら嬉しいな。」
「ある程度進めないと、一緒に出来ないので、そこまで進んだら連絡ください。」
「うん、頑張ってみる。」
水奈月さんは可愛い。悪い人でもない。でも、僕みたい奴に、そこまでする意味が分からない事から、一緒に居て嬉しいという気持ちに、複雑な思いが混じっている。だから純粋に喜べてない自分に、この時僕は気が付いた。




