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女神がきたりて  作者: 阿能比等
最終章
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41/53

day of end point

「ねーー‼ どこーー‼」


 収穫祭が終わって、お土産を手になりたの家へ向かうと、なりたは布団の前で倒れていた。

 


 魂は既に無かった。



 テレシアちゃんが大家のお婆ちゃんを呼んでくれた。

 運ばれていくなりたを見送ったあと、何日が経っただろうか。

 もしかしたら、なりたの世界の医学は私の世界より遥かに進んでるのかもしれない、だから魔法も使わずに医療が成立してるのかも。


 もしかしたら、肉体さえあれば蘇生できるのかもしれない。

 私はそんな技術を聞いた事がないけど。

 

 そう思ってテレシアちゃんを連れてなりたの家に来た。

 なりたの事だもの、自分がどれだけ心配されてるかなんて理解できずに、いつも通り何事もなかったかのように部屋にいるに決まってる。

 

 そうに決まってる。

 

「…………」


「そういうのいいからー‼ ねーったらーー‼」


「女神様……あの……」


「ねぇ…………まだ……帰ってないの?」


「女神様、落ち着いて下さい……」


「落ち着いてるわよ……ねぇなんで出てこないの⁉ ねぇ⁉」


「女神様! あの、死者転生は…………女神様が以前おっしゃっていた、こちらで死んだ者を転生させれば……」


「死んだとか言わないでよ……」


「女神様!」


「…………」


「…………」


 大家のお婆ちゃんに既に聞いた。なりたは……手遅れだった。

 頭の中の血管の病気だったらしい。死の数日前に頭を強く打ったのが原因らしいけど、私には心当たりがない。

 こんなの、ちっともなりたらしくない。

 

「私……死者転生できない……だから直接呼びに来たのに……」


「そんな……」


「……私……私……」


「女神様……きっと女神様のこんな姿……」


「あの世に行く……」


「見たくないと思……はい?」


「私、あの世に行く」


「それは……早まるって事……ですか……?」



 何もせずにいるって事ができなかった。

 本当に最後の最後が終わった後、もう全ての結末が起こった後じゃないと諦められない。


 どうにもならない事なんて数える程しかない。諦められない事の方が圧倒的に多い。

 私は……なりたを生き返らせたい。ダメならちゃんと別れたい。

 やらなきゃいけない事なんて存在しないし、やりたい事はいつだってできる筈。

 でも今は急がなきゃ……



「テレシアちゃん、ついてきて‼」


「えええ! 嫌ですよ!」


「多分大丈夫よ! 死ぬ訳じゃないから、きっと! カベルをあの世に繋ぐのよ! そうすれば恐らく生きたままあの世に行ける筈よ!」


「え……あの……確証は……」


「準備はいい⁉」


「女神様は大丈夫かもしれませんけど私は人間なので……」


「行くわよ‼」


 召喚したカベルにテレシアちゃんを押し込んで天国に入ると、強い光が私たちを迎えた。

 その光はすぐに消えていき——


 カベルを抜けた先は、真っ白な世界だった。

 壁があるのかも分からない、自分が立っているのか浮いているのかも分からない。


「あのー……女神様? ここは……」


「天国……の筈……」


 見渡す限りの白。影もない。まるで真っ白な空間に浮かんでるみたい。私の世界の天国はもっと自由で色々あるんだけど。


「テレシアちゃん! なりたを探すのよ!」


「えっと……いないみたいです」


「もっとよく探して!」


「そんな事言われましても、探す場所すらないんですよ?」


「……ここ本当に天国?」


「ええ⁉ 知りませんよそんな事‼」


『女神様……女神様……聞こえますか?』


「女神様? 呼ばれてますよ?」


「どこ⁉ いるの⁉」


「いえ、なりたさんではないみたいですよ?」


『女神様……女神様…………』


 どうやらテレシアちゃんには何かが聞こえているみたい。周波数を探っても私には聞こえない。

 この世界、あの世でさえも面倒なのね。


「テレシアちゃん……何が聞こえてるの……?」


「聞こえないんですか? ずっと呼んでますよ?」


 

『……少女テレシア、女神様に伝えて下さい。私は神よりこの天国の管理を任されている聖なる者。肉体を持たず意思と意識のみの』



「管理人だそうです」


「管理人?」



『……ここは天国。天国とは死者の魂が思い描く理想郷が描かれるキャンパス……死を経てない貴女達には何も映りません。貴女達が理を超越してこの天』



「天国だそうです」


「えー……私の世界の天国と全然違う……つまんない……」


 

『……残念ですが、貴女達の探す者はここにはいません。彼は、地獄へ向かいました』



「地獄にいるそうです‼」


「え? ふふっ……ごめんなさい、なんか……ふふふ……地獄って……ぷっ……ふふ……」


 笑ってる場合じゃないけど、あの世で叱られて落ち込んでるなりたを想像したらなんだか笑えてきた。どうせ、自分に言い訳でもしてるんでしょうね。

 迎えに行ってあげないとダメそうね。



『…………この世界の理を越えて顕現せし異界の女神よ……貴女は』



「お説教が始まりそうです」


「地獄へ行くわよ‼ テレシアちゃん、いいわね⁉」


「はい! なんだか、なんとなく大丈夫な気がしてきました!」


「さ、行きましょ」


 

『…………早く行けよ……』



「でもどうやって……」


「地獄なら大丈夫よ、どんな世界で死んでも地獄は共通だから」


「へ? そうなんですか?」


「ええ、罪を犯した者が罰を受けるっていうのはどんな世界も同じでしょう? だからまとめてあるのよ」


「どんな世界でも罪はあるんですね……」



『早く行け』



 なりたが地獄行きになった理由なんて大方の察しはつく。

 会って叱ってやらないと!

 それに、慰めてあげないとね。


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