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【番外編完結】「醜い」と嫌われた豚令嬢、三年後に元婚約者に嫁ぐことになりました ~ただし離婚前提です~  作者: ボボブラ汁
番外編 ケンカップルの姫始め

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バカバカ言うほうがバカなんですぅ~

 

「バカとは何よっ!」

「君が板胸なのは、百も承知だ」


 こんのやろぉおお!


 視線で殺せるなら殺していたのに!


 その時、彼がナイトドレスの前を大きく開いた。私は咄嗟に目を固く閉じる。彼の失望した顔を見たくなくて。


「……シュミーズを、着ていないのか」


 どろりとした声が落ちてきた。


「初夜はそういうものだって、シンシアのメイドが……」


 恐る恐る目を開けると、彼の目は声と同じくどろりと溶けていた。


「正直、板胸どころか抉れているのかと思っていたが……」

「抉れてなんかないわよ!」

「ああ……思ったより、大きい。ささやかな方が、上品な感じがして好ましいが」


 ええっ!? まさかの貧乳好き!?


「どうしよう、ミルクがぶ飲みしちゃったわ!」


 クライヴは首をかしげる。


「あのな、別に大きさにはこだわらないよ」

「だって、からかうし」

「あれは賞賛だ」


 そうだったの!?


「俺にとって大事なのは、ミラベルの胸か、そうでないかだけだから」


 ドキドキしてきた。ということは……。


「クライヴ……あなた私を──」

「いや、あと一つある。俺がこの手で触っていいか、ダメかだ」


 そう宣言し、覆いかぶさってきたクライヴを、私は必死に脚でガードした。


「待って! 待ちなさい! だから! 私に言ってない言葉があるでしょ!?」

「君を俺のものに出来るなら、いくらでも払う! 言ってくれ、いくらだ!?」

「このバカッ! だからなんでお金に物言わせようとするのよ!」

「なりふり構っていられないからだろ!」

「単純なことでしょ! 『愛してる』って言いなさいよ!」


 彼は意表を突かれたように、目を丸くした。


 私はそれを見てカンカンに怒った。


「なによっ! やっぱり愛してないのに私に結婚を申し込んだの!?」


 ポカンと口を開けたまま、彼は私を見下ろす。


「何を言ってるんだ、君は。やはりバカなのか?」

「またバカって言ったわね、バカって言った方がバカなんですっ!」

「だって、愛してなきゃ結婚なんて申し込まないだろ!」



 ──なんだ……。



 まずいわ、顔が緩む。ニヨニヨが止まらない。


「ふーん……」


 優越感たっぷりにクライヴを見上げてやった。


 あ! 頬がかすかに赤くなってる!


 彼が背けた顔を、私は首を伸ばして覗き込む。


「ふーん、そーなんだ……そうかなーと思ったのよね」

「え?」


 私は勝ち誇って言った。


「要はね、あなた、ガキなのよ」

「はっ!?」


 クライヴが目を剝いた。


「好きな子に意地悪しちゃう、お子ちゃまなの」


 きゅふふふ。好きだったんだぁ。私のこと、愛してたんだ。くふふふふ。


 なんとも決まり悪そうなクライヴの表情を見るのが楽しい。


「なんで早く言わなかったの? いつも自信たっぷりなのに、私が美しすぎて怖じ気づいた?」


 クライヴは手首の紐を解き、私を抱えて起こした。軽々と、膝の上に乗せる。


 そして私の髪をひと束摘んだ。沈黙の後、観念したように長い息をつく。


「君の隣に、俺は相応しくない」

「……身分のこと? バカバカしい、あなたらしくないじゃない」


 クライヴは苦笑した。


「うん、君を前にすると、眩し過ぎて卑屈になる。だから兄のポジションでいる方が、楽だったんだ。手に入らない果実は酸っぱいってね」


 物欲しげに私の胸に視線を落とす。今まで彼から、こんな目で見られたことはないのに。兄でいようとしたから?


「実際は、たまらなく甘いだろうな」


 彼のねっとりした視線に気恥ずかしくなり、さりげなく胸を隠しながら、私は尋ねた。


「なんで、手に入らないって決めつけてたの?」

「……君は、王太子妃にだってなれたんだ」

「は?」

「王太子殿下が駄目なら、アーサー殿下とか」

「性格最悪じゃない! 彼らがこの私に相応しいって?」


 クライヴはうなずいた。


「俺よりは」

「いったいどうしたの? シンシアみたいに自分を薄汚い豚だとでも思っていたの?」

「豚は薄汚くなどない! 可愛いだろ、訂正したまえ」


 もういいからそれは。話がややこしくなる。


「とにかく、俺は平民だし──」

「貴族は没落しているし、あなたは自力で社会的地位を築いてるじゃない」

「……一番のネックは、父親さ」


 私は戸惑った。


「ステイプルトンさん?」


 クライヴは自分の黒髪に触れた。


「俺もいつか、禿げるかもしれないじゃないか。美しい君の隣に、ハゲが並ぶのは許せん」

「ぶっふぁぁあぁっ!」


 申し訳ないけど、ごめん、笑うのを堪えきれない!


 クライヴったら、あんな威張り散らしていたのに! ハゲに怯えていたの!?


 顔を覆ってヒーヒー笑いの発作と戦っている私を見て、彼はぽつりと言った。


「でも、ダメだった」


 ようやく笑いが収まって、彼の方を見た瞬間、ぞっとした。ギラギラとした瞳は、野生の肉食獣だ。


 喉笛を食い破られそう。


「シンシアがヒューバートを手に入れたのを見て、俺も──たとえ俺が成金だろうがハゲの遺伝子を持っていようが、君を誰にも渡したくなくなったんだ」

「クラ──」


 かき抱くように抱きしめられる。直後、噛みつかれたかと錯覚するほどの強い刺激が首筋を貫いた。


 でも、歯は立てられていない。吸いつくような圧だけが残る。


 彼はチュポンと唇を離し、耳元まで這わせて囁いた。


「俺のものだという痕をつけてやった」


 さらに荒々しく自分のシャツを脱ぎ捨てる。


 私はうっとり見とれた。昔はヒョロガリだったのに……。


 今では、フェンシングで学院の連勝記録を誇るヒューバート兄様と、対等に渡り合えるほど引き締まった筋肉になっている。


「今から完全に君を手に入れるつもりだが、異論は? まあダメだと言っても無駄だがね」


 口を開きかけた私の言葉を遮るために、彼は身体中に口づけを落とし始めた。



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