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【番外編完結】「醜い」と嫌われた豚令嬢、三年後に元婚約者に嫁ぐことになりました ~ただし離婚前提です~  作者: ボボブラ汁
第一章 本物の婚約者になってみせますわ!

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君から婚約破棄するんだ

「シンシア……では君は、この僕と結婚したくて?」

「だって、あの女は──」

「あの女?」


 ピクッと彼の優美な眉が動きましたが、わたくしは構わずに告げました。


「あの女より、わたくしの方があなたを愛しております」


 気持ちの大きさなら、絶対に負けません。


 ヒューバート様はそれを聞いて、脱力したように背もたれに体を預け、そして呆然と呟きました。


「シンシア、君って子は──。ナディーン嬢に嫉妬して……僕を君のモノにしたくて、彼女を追い払ったということなのか?」

「彼女の父親はお酒の依存性ではなく、ただ財産を──」

「聞かれたことにだけ答えろ」


 冷たく吐き捨てられ、わたくしの喉に言いかけた言葉が張りつきました。


 不快を露にしたその姿を目の当たりにし、わたくしは気が動転してしまいます。普段穏やかな人が怒ると、こんなに怖いのね。


 タジタジになりましたが、この時はどうしても彼に分かってほしくて申し上げました。


「どうせあの方は、もう戻っては来ません。大金持ちと結婚してしまうのです。ですから彼女のことは忘れて、わたくしと──」


 その言葉は、今言ってはいけなかったのだと、すぐに分かりました。


 彼は片手を挙げてわたくしの言葉を遮り、おもむろに立ち上がります。


「そうか……それでナディーン嬢は」


 ヒューバート様は自分のデスクに歩いていき、引き出しから紙とペンとインク壺を取り出すと、わたくしの目の前に置きました。


 わたくしはそれを見て、目を見張りました。


「約束だったろう? シンシア」


 ヒューバート様は、わたくしに優しい口調でそうおっしゃいました。


「君との婚約は偽装だった」


 もちろん、承知しておりました。


「僕に好きな人ができたことが、君には我慢できなかったんだね」


 わたくしは唇を噛み、うつむいたまま顔を上げることができませんでした。


「気づかなかった僕が悪い。まさか君まで、僕を狙っていたなんて」

「ご、ごめんなさい……いつか振り向いてもらえるかと──」

「君のことは、女性としては愛せない」


 彼が呟いたその言葉の中に、わたくしは嘲りを感じ取ってしまいました。


 被害妄想だと思えればよかったのに……でも……彼は、はっきりこうおっしゃったのです。


「君は、醜いね」


 ストレートに傷つく言葉──あの優しいヒューバート様が口にされたとは思えず、わたくしは竦みあがって固まってしまいました。


「婚約解消の契約書だよ。サインして」


 大きな窓ガラスに映る自分の姿に一瞬目をやり、わたくしはすぐに逸らしました。


『あなた、鏡を見たことがございますの?』


 ようやく気づいたのです。


 今まで、ポジティブすぎたのだわ。太っていても可愛いのだと、彼から愛されていると、思い込んでいたのですから。


 いえ、自分が醜いと、本当は知っていたのかもしれません。


 けれど、わたくしが愛している人たち──家族や侯爵一家から溺愛されていれば、その他有象無象が何を言おうと関係なかったのです。


「シンシア、早く婚約の破棄を」


 ヒューバート様が無情な声で急かしました。


 醜いなんて、本来のヒューバート様なら決しておっしゃいません。それを言わせるほど、私は彼を怒らせてしまったのですわね。


 後悔でしゃくりあげるわたくしに、ヒューバート様は迫ります。


「さあ、君から振るんだよ」


 猫なで声に押し切られ、わたくしは絶対に言いたくなかった言葉を口にしていました。


「ヒューバート様、貴方との婚約を破棄させていただきます」


 それは、彼をわたくしから解放する言葉でした。



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