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第64話 導かれし八人

 俺とユフィーアが西側の救援に到着した時は既に粗方片付いた後だった。


 アップデートで追加された新キャラと思われる虎型の魔獣は、バランドル将軍の大剣によってその綺麗な縦縞模様を横に斬り裂かれて絶命。

 残った魔獣達も兵士達によって各個撃破されていく。


 結局あの虎の魔獣は名前も分からず仕舞いだったな。


 俺達が加勢するまでもなく、西側の魔獣が駆逐されるのは時間の問題だった。


 むしろ北と東の城壁付近に散乱する屍の後始末の方が大変だった。


 全てが片づいた後、俺を含めて特に勲功があった者は謁見の前に招集されてグーラー陛下より直々に労いの言葉が送られた。


「マールよ、今回もそなたの働きは見事であった。本来ならば盛大に祝勝会を開くところだが……」


 グーラー陛下は言葉を詰まらせる。

 シンディア姫の安否が不明なのにそんな事をしている場合ではないのはここにいる誰もが重々承知しているので不満を口にする者は一人もいない。


 王国の魔物が一掃された事で、残るイベントは魔界への扉を開いて魔王城に乗りこむだけとなった。

 俺は原作ファンタシー・オブ・ザ・ウィンドの知識を元にグーラー陛下に進言する。


「陛下、シンディア姫は私が必ずお救い致します。その為には魔界へ行く為の扉を開かなければなりません。まずはその方法を探します」


「うむ。マールよ、全てはそなたにかかっておる。我が臣下達に協力させられる事があれば何でも申せ」


「はい、それでは人探しをお願い致します」


「それはどのような者じゃ?」


「はい、それは──」


 原作で魔界への扉を開く事ができる人物は一人だけだ。

 しかしバグのせいで姿が表示されず、原作をクリアした俺でもそれが誰なのかは全く分からない。


 分かっているのは魔族だという事、普段は仮の姿で活動しているという事だ。

 そして原作ではある程度シナリオが進むと主人公の前に現れる。

 目安としては四天王を全て撃破してから二週間から一ヶ月以内だ。


 俺はその人物を仮に門番と呼ぶ事にした。


 原作では主人公として操作できるキャラクターは八人いる。

 門番はその八人の中の誰かの近くに現れると思われる。


 八人の中にはこの世界ではあまり成長していない人物もいる。

 もしその人物の前に門番現れたらどうなるか。


 その人物が自分の力量を考えて魔界行きを保留にするならばまだいい。

 しかし殆どの主人公キャラは魔王討伐の栄誉を求めて魔界行きを決断するだろう。

 そして恐らく魔界へ飛ばされた彼らはすすべもなく魔物達にやられるだろう。


 魔界への扉を開く為には膨大な魔力を消費する。

 門番は魔界への扉を開く能力を持っているものの魔力が乏しく、開いた扉を維持する事ができるのは僅かな時間だけだ。

 一度閉じてしまうと再び魔力を蓄える必要があり、次に開く事ができるのは遥か未来となる。


 その間に魔王は戦力を整え、再びレイフィス王国への侵攻を企てるはずだ。


 魔界は魔王の魔力によって生み出された世界だ。

 魔王自身はいつでも魔界からこの世界へ繋がる扉を開ける事ができる。

 俺達はいつやってくるかも分からない魔王軍の侵攻に怯える日々を送る事になるだろう。

 それを食い止めるには俺達は魔界へ赴き、魔王を倒して魔界そのものを消滅させるしかない。

 魔界が消滅すれば俺達はまたこの世界に戻ってくる事ができるはずだ。


「──陛下、私がこれから申し上げる八人の人物の居場所を突き止め、ここに集めて下さい。元聖女のヘステリア、元海賊のヴェパル、踊り子カトレーヌ、遊牧民のネネ、剣士ジーク、商家の息子グレイド、魔道士サタナーキ、南方異民族の戦士コンワーク。私の調べでは、この八人の誰かの下に魔界への扉が開かれます」


「あいわかった。我がレイフィス王国の総力を結集して所在を突きとめて見せようぞ。そなたはそれまでこの王都で休み、英気を養うが良い」


「ははっ」


 俺とユフィーアは陛下のお言葉に甘えて暫くはクエストも受けずに王都で時間を潰す事にした。



 王都やその付近に在住しているグレイド、カトレーヌ、ジーク、ネネの四名はその日の内に捕まった。

 レベル90台の剣士ジーク以外はいずれも冒険者としては半人前で、とても魔界での戦いにはついてこられそうにない。

 早めに()()しておいて正解だ。

 離れている間に魔界への扉が開かないように俺達はこの四名と行動を共にする事にした。


 一週間程して、元聖女のヘステリアがアレス殿下達を引き連れて王都へ戻ってきた。

 リーディアの聖女としての修行も無事に終わったとの事で、今後は彼女が聖女の力を持って王都を守る事になる。


 ちなみに先日の屍術師アルパヌのアンデッド軍団の侵攻については、もしリーディアかヘステリアが王都にいたらもっと簡単に片付いていたはずである。

 それだけ聖女の破邪の力は魔物相手には強力な武器になるのだ。

 例えるならGジェットをGに吹きかけるようなものである。


 これで俺達がいない間に魔王軍の残党が攻めてきても安心だ。


 さらに数日遅れて隣国に遠征していた魔道士のサタナーキと戦士コンワークが王都へやってきた。

 彼らもレベル80台後半の実力者だが、魔界で戦うには今一つ力不足だ。

 しかし魔道士のサタナーキはダンジョン内で上下の階層に転移するという珍しい魔法を使う事ができる。

 原作ではよくプレイヤーが転移先を誤って石の中にめり込んだり、うっかり魔物の巣の中に飛び込んで蹂躙されたりと、何かと事故が多いキャラとして有名だった。



 残すは元海賊のヴェパルさんだけだが、王国の情報網を持ってしても一向に行方が分からないそうだ。


「先日私がきつく当たりすぎてしまったせいでしょうか……そのせいで身を隠しているのかも……」


 ユフィーアは先日の港町フェルトでの事を気にしているようだが、俺はヴェパルさんの性格はよく知っている。

 過ぎた事をウジウジと悩むようなキャラじゃない。

 恐らくどこかの財宝でも探しに行っているんだろう。


 しかしこんな時に捕まらないのは困る。

 彼女の下に門番が現れる確率は八分の一。

 決して低い確率ではない。


 そんな時、トリトン船長から通信魔道具を介して連絡が入った。


「やあマールさん、ヴェパルさんの行き先が分かりましたよ。古代ロウラン帝国の遺跡に宝探しに向かってるそうですぜ」


「古代ロウラン帝国ねえ……って、この星の真裏じゃん!?」




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