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第53話 一番の危険人物

 ルシエールに凱旋すると、町を挙げての祝勝会が開かれた。

 祝勝会場は兵士達の手柄話で持ちきりだ。


「俺は鳥型の魔獣を30体は仕留めたぞ」

「お前はスズメみたいな小さい魔獣しか相手にしてなかっただろ。俺なんかアホウドリみたいなでっかい奴を一体倒したぞ」

「大きければいいってものでもないだろう。俺は猛禽類のように凶暴な奴を撃ち落とした」

「俺はペンギンのような魔獣を仕留めたぞ。お前達、あんなレアな魔獣は見た事がないだろう」


 ルシエール史上類を見ない大勝利だ。

 兵士の中で手柄を立てていない者は一人もいない。

 必然的に誰が一番活躍したのかを巡って言い争いが始まる。


「それでお父様、今回の戦功第一は誰なんですか?」


 リーディアの問いにリカインが答える。


「圧倒的にユフィーア殿だな。フレガータを討ち取っただけでなく、倒した魔獣の数も桁違いだ」


「へえ。ユフィーアさんはどれだけ倒したんですか?」


「255体から先は数えていません」


 原作ファンタシー・オブ・ザ・ウィンドでは一度の戦闘でカウントされる撃破数は255が上限だ。

 それ以上の敵を倒しても経験値もお金も獲得できない。

 どうでもいいところまで原作に忠実になっているな。


 ちなみに俺が後ろで見ていた限りではユフィーアは三秒に一体のペースで敵を倒していたので恐らく撃破数は1000を下らないだろう

 まさに一騎当千とはこの事だ。


「やはり勇者様は次元が違いますね」

「これじゃ俺達ルシエール飛兵部隊も形無しだ」


 先程まで戦功を競い合っていた兵士達も、ユフィーアの撃破数と比較されると白旗を上げるしかない。


「でも私の戦功はマール様のお力があっての事ですよ」


「またまだご謙遜を」

「勇者様は謙虚なお方だ。お前達も少しは勇者様を見習えよ」


「謙遜ではありません。私がフレガータを倒せたのはマール様が呪術で動きを止めてくれたおかげです」


 フレガータ戦での処理落ちを利用した作戦については、この世界の人間にバグについての説明ができない都合上、表向きは俺が呪術を使ったという事にしてある。


 しかし、これが裏目に出た。

 本物の呪術に精通しているヘステリアが疑問を持ち始めたのだ。


「それにしてもマール様は本当に不思議な呪術をお使いになりますね」


 ヘステリアは首を傾げながら俺に問いかける。


「私も多少呪術の知識は持っているつもりですが、時間の流れを遅くする呪術なんて聞いた事がありません。原理もよく分からないですし、一体どうやってその知識を得たんですか?」


 俺はこの世界のバグの事を便宜上呪術と言っているだけで、俺の呪術の知識は全てでたらめだ。

 ヘステリアの質問に一瞬思考が停止する。


「マール様、私もそれを聞きたいです」

「私もだ。是非とも教えて欲しい」


 それにユフィーアとアレス殿下も加わってきた。

 全て嘘っぱちだとバレたら俺の立場が危うくなる。


 俺は少し考え、平静を装って回答する。


「えっと……古い書物とか、魔族に近い民族の村で取材してみたりとか、この足で世界各地を回って勉強したんだよ。俺の親父も冒険者でさ、俺が子供の頃によく親父は自分が体験した不可思議な現象の事を話してくれたんだ。それで気になって自分でその原因を調べた結果、呪術に辿り着いたんだ。実験を繰り返して自力で発見した呪術もあるよ」


「そうだったんですか」

「さすがマール様です」

「その貪欲さ、我々も見習わなければいけないな」


 どうやら三人は納得してくれたようだ。


 ユフィーアとアレス殿下はともかく、呪術の知識があるヘステリアは俺にとって危険な人物と認識せざるを得ない。

 ボロが出ない内にヘステリアとは距離を置いた方がよさそうだ。




◇◇◇◇




 フレガータの討伐から一週間後、俺達はリーディアを連れて王都へ戻ってきた。


 リーディアはこれからしばらく王国の聖女になる為に厳しい修行に入る事になる。

 元聖女のヘステリアはグーラー陛下の勅命によりその指導役に任命され、しばらく冒険者としての活動は休業する事になった。


 ヘステリアは原作の主人公キャラクターの中で唯一精力的にメインシナリオを進めていた人物だ。

 これでしばらくは俺の知らない間にメインシナリオが進む事はなさそうだ。


 原作通りなら魔界への扉が開かれるまでに起きる大きなイベントは後一つ。

 魔王軍四天王の最後の一人である屍術師アルパヌの撃破だ。


 原作ではアルパヌは今まで倒してきた全てのモンスターをアンデッドとして蘇らせ、死者の軍団を作り上げて王都への侵攻を企む。

 それを知った主人公はアルパヌの潜んでいる死者の森へ向かいそれを討つというシナリオだ。


 よく終盤に今まで戦ってきた中ボスと連戦するゲームがあるが、まさにあんな感じだ。


 蘇った中ボス達は以前戦った時よりもステータスが大幅に強化されているが、所詮はアンデッドに過ぎない。

 浄化魔法があれば特に苦労する事もなく倒せるだろう。


 またアルパヌ本人を含めて死者の軍団は炎魔法に極端に弱い。

 その為、弱点を知っていれば魔王軍四天王の中で一番簡単に倒せる相手だ。

 その見事な炎上ぶりから、プレイヤーの間では異世界の兀突骨という不名誉な二つ名をつけられている。


 本来ならば俺とユフィーアはそのイベントが発生するまで王都付近のクエストをのんびりと進めていればいいはずなのだが、気になるのは追加ダウンロードコンテンツの存在だ。


 俺の知っている原作ではとっくに死亡しているはずのデメテルがまだ生存していてさらに魔王軍に寝返っている。

 フレガータと戦う場所も変わっていた。


 今後は何が起きるか分からない。

 慎重に行動しないといけないな。



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