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第46話 天空都市へ行こう



「もう二度と戻って来るんじゃねえぞ」


「へーい、看守さん、お世話になりました」

「ご迷惑をおかけしました」


 王都を騒がせた罪で投獄されていた俺とヘステリアだったが、アレス殿下の口添えもあって特に前科が付く事もなく厳重注意を受けただけで出所する事ができた。

 もともと被害者も全員サクラだったしね。


 やっぱりシャバの空気は美味しい。


「マール様、お勤めご苦労様です!」


「おう、全て作戦通りだったな」


 俺とユフィーアはヘステリアのパーティメンバーを加えてギルドの食堂に集まり、現状の確認と今後の打ち合わせをする事になった


 まずデメテルについてだが、聖女の座を剥奪されて王国から追放されたそうだ。

 原作通りならこの後隣国に向かう途中に山賊に襲われて惨めな最期を遂げる事になっているが、もう彼女には興味がないのでその後については聞いていない。


 今回の事件で王国内から聖女が居なくなってしまったので、王宮内ではヘステリアを聖女に戻そうという動きもあったが、それはヘステリア本人が固辞した為に白紙になった。


 聖女になる人物は清らかな心を持つ乙女でなければならない。

 ヘステリアは俺達に強要されていたとはいえ、罪のない人々に追剥ぎ行為をした自分にはその権利がないと考えていた。


 しかし魔王軍の邪の力に対抗する為には聖なる力を使いこなす聖女の存在が不可欠だ。

 いつまでも聖女不在という訳にもいかないので、俺達の手で次の聖女候補を探す事になった。


 といっても大体の目途はついている。

 原作ファンタシー・オブ・ザ・ウィンドでは、デメテルの断罪イベントを発生させた後に、続けて後任を探すイベントが発生するのだが、その人物は王都の西にあるルシエールの町に住んでいる。


 ルシエールの町はマチュピチュのような高所に作られた都市で、別名を天空都市という。

 険しい山の上に作られたその都市は徒歩で行くのは困難で、そこの住民は気球やペガサス、飛竜を足代わりに使っている。


 ルシエールの領主リカイン侯爵は優れた竜騎士として知られた人物で、配下の兵士全員にペガサスや飛竜を与え独自の飛兵部隊を有している。

 そしてそのリカイン侯爵と元修道女だった妻ローゼとの間に生まれた娘リーディアが次期聖女となるキャラクターだ。

 幼少より母ローゼによって厳しく躾けられており、ゲーム開始時点で既に聖女になれるステータスを持っている即戦力のキャラだ。


 俺達は彼女とその両親を説得する為にルシエールの町へ向かう事にした。


 ユフィーア以外はペガサスや飛竜を乗りこなすスキルがないので、移動には王家が所有している熱気球を使わせてもらう事になった。


 魔法使いが二人いれば熱気球の操作は簡単だ。

 まず一人目が炎魔法で気球の中の空気を温めて空に浮かばせる。

 そして二人目が風魔法で進みたい方角へ空気の流れを作る。


 俺達の場合はヘルメスが炎魔法を担当し、ユフィーアが風魔法を担当する事になった。

 一応俺も魔法戦士の端くれなので魔法を使えない事はないんだが、如何せんレベル10では魔力不足は否めないので出しゃばらない事にした。




◇◇◇◇




「マール様、このままでは気球が壊れます!」


 ルシエールへ向かって雲海の中を進む俺達に試練が待っていた。


 気球の周りには雷鳴が轟き、稲光が走る。

 雷雲の中に入ってしまうとは運が悪い。


 ルシエールまではまだ百キロメートル以上はある。

 もし雷が気球に直撃したら全滅は免れない。

 早く手を打たないと天空都市に辿り着く前に天国に到着してしまう。


「そうだ、ヘステリアさん結界を張って気球を守れませんか?」


「いえ、聖女の力は魔を打ち破るものですので自然現象には無力です」


「じゃあ早くこの雲から抜け出さないと……」


 炎魔法担当のヘルメスが俺に尋ねる。


「上か下かどっちから抜けますか? 気球内の温度を調節すれば高度を変えられます」


 現在の高度は二千メートルぐらいだろうか。

 雷雲は雲頂までの高さが一万メートル以上ある事も珍しくない。


 俺は迷わず下に抜けるように指示を出す。


「それでは気球の空気を冷やします。アイスクラウン!」


 ヘルメスが冷凍魔法を詠唱すると気球内の空気が一瞬で凍り付き、気球は高速で降下する。

 いや、これはもうほぼ自由落下だ。


「ヘルメスさん、雷雲を抜けて地上が見えたらすぐに降下速度を落として下さい!」


「言われなくても分かっています!」


 やがて雷雲を抜け、眼下に山岳地帯が広がる。

 ルシエールの付近は山が多い。

 既に地上すれすれだ。


「ヘルメスさん、今です」


「承知しました!」


 ヘルメスが炎魔法を使おうとしたその瞬間、鈍い音と共に気球のゴンドラの底に何かがぶつかったような衝撃が走る。


「何だ? 何にぶつかった?」


 まだ地上までは距離がある。

 山肌にぶつかったという可能性はない。

 俺達は気球の周囲を確認する。


「マール様、あれは何でしょう?」


 ユフィーアが気球の周りを飛ぶ巨大な魔獣を見つけ指を差す。


「鳥……いや、鳥人間だ! あいつは……」


 鉤状に曲がった特徴的な嘴に、二又に別れた長い尾羽。

 俺はあいつを知っている。

 魔王軍四天王の一人、空飛ぶ軍艦の異名を持つ怪鳥フレガータだ。


 フレガータは頭を押さえながらこちらを睨みつける。


「怒ってる……当たり前か」


 本来はゲームの終盤に飛竜の背に乗りながら戦う中ボスだ。

 何でこんな所で遭遇(エンカウント)するんだよ。






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