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第24話 墓へ行こうよ! 開拓の村


「──という訳で、村人がおかしくなった原因は魔族の幻惑呪術のせいでした。該当する村人を湖畔に隔離し、身を清める事で解決をしました」


 俺とユフィーアは王宮へ戻り、開拓村での出来事を陛下に報告した。

 もちろん解決方法については全部嘘っぱちだ。


 しかし実際に解決しているので説得力は十分。

 俺、詐欺師の才能もありそうだな。


「おお、さすがはマールだ。こんなに早く解決するとは。そなたに任せて正解だった」


 グーラー陛下からのお褒めの言葉と褒美を賜るが、少し胸が痛む。


 俺とユフィーアは王宮を後にすると、今度は開拓村への移民の勧誘を行っているヴェパルさんに接触する方法を探す。


 トリトン船長にはもしヴェパルさんを見かけたら連絡を入れるように頼んでおいたが、同じ海の人間とはいえ世界は広い。

 そうそう出会う事はないだろう。


 ヴェパルさんの代わりに俺がNPCの勧誘を行う事ができれば話は早いのだが、ゲームの仕様上主人公以外の人間が勧誘をするのは並大抵の苦労ではない。


 原作では移民対象者が主人公の視界に入ると、青白い光を放っているのが見える。

 それで移民対象者の判別をする事ができるが、残念ながら俺マールは主人公ポジションではないのでその能力は備わっていなかった。

 手当たり次第声をかける訳にもいかない。

 やはり何としてでもヴェパルさん本人と接触するしかなさそうだ。


 原作でもこの世界でもキャラクターの基本的な行動パターンは変わらない。

 俺は現在のシナリオの進行状況を原作と照らし合わせて、ヴェパルさんの所在地を予想する事にした。


 魔王軍の侵攻イベントは先日終わった。

 その次に起きるのはかつての勇者に封印された魔獣が復活するイベントだが、それはまだ始まっていない。


 その間にヴェパルさんがよく滞在している場所は……。


「ユフィーア、ヴェパルさんの居場所が分かった。急いで支度をしてくれ」


「はい、マール様」


 ヴェパルさんは元海賊と言うだけあって、金銀財宝に目がない。


 この時点で宝探しができるスポットは一つ、王都の南、広大な砂漠の中にある王家の墓と呼ばれる古代遺跡だ。


 この遺跡が発見されてから数百年。

 その中に敷き詰められた巧妙な罠の数々は、財宝を狙って忍び込んできた数多の盗掘者を葬り去ってきた。


「元海賊が砂漠にいるとは盲点でしたね。マール様の推理力には舌を巻くばかりです」


 ユフィーアは尊敬の眼差しで見つめるが、原作をプレイしている俺にはカンニングをしているようなものなので少し胸が痛む。


 俺とユフィーアは砂漠の入り口まで馬車で移動すると、今度はレンタルしたラクダに乗り換えて更に南下をする。


 ラクダに揺られる事さらに半日、王家の墓に辿り着いた時には既に日も暮れていた。


 王家の墓の外見は、平たくいえばエジプトのピラミッドだ。


 王家の墓の前にはベースキャンプが作られており、中では探検家や考古学者達が寛いでいる。


「やあ、見ない顔だね。君達も冒険者の様だけど、あの遺跡に挑戦するのかい?」


 中に入るとひとりの女性が俺達に声をかけてきた。

 流れるようなブロンドの髪に、青い瞳。

 間違いない、彼女がヴェパル・マーメイドさんだ。


「初めまして、俺はマールでこちらがユフィーア。実はあなたに会いに来ました」


「その名前は聞いた事があるよ。あたしの記憶が確かなら、魔王軍を撃退したっていう英雄と、竜殺しの勇者様じゃないか。そんな有名人があたしに何の用だい?」


 俺達の事を知っているのならば話が早い。


「実は、開拓村についての相談なんですけど」


「ああ、シンドルフのおじさんの所だね。新天地を探してる人間を片っぱしから勧誘してるけど、何か問題でもあったのかい?」


 俺は開拓村の状態について適度に嘘を交えながら説明をする。

 彼女が勧誘した船大工や船乗りの中に呪われた人間が紛れており、その呪いが村中に伝染して村民がおかしくなってしまっていた事にした。


「そんな事があったのかい。あんた達にも迷惑をかけちまったみたいだね。それであたしはどうすればいい?」


「人は職業によって呪われやすかったりします。俺が独自に調査をした限りでは、商人や技術者は呪われにくいという事が判明しています。 彼らを優先して勧誘してくれませんか?」


「へえ、そんな考えた事もなかったよ。さすが(ことわり)の勇者様は博識だね」


 まあ全部商業都市や工房を作る為にでっちあげた嘘だけどね。


「とりあえず俺が伝えたかった事はそれだけだ。それじゃあ俺達はこれで……」


「ちょっと待ってよ。もう日も暮れたし、帰るのは明日にしたら? それに、あたしこれから遺跡内に入るんだ。折角だから一緒にいかないか?」


「こんな夜にか?」


「どうせあの中は真っ暗だから昼でも夜でも一緒だよ。それに昼間だと暑さで蒸し焼きになっちまう」


 そう言ってヴェパルさんは俺達に松明を渡す。

 もう既に一緒に行く事が決定事項のような振舞いだ。


 今ヴェパルさんが考えている事は分かる。

 遺跡の中は罠だらけだ。

 ひとりで潜るより、勇者である俺達二人と一緒に潜る方が安全に決まっている。


 それに、この遺跡の地下は巨大なダンジョンになっており、原作でも走破したプレイヤーは現れておらず、その全容は明らかにされていない。

 もしかすると俺の知らない財宝が隠れているかもしれない。

 しかもシナリオがある程度進むと遺跡全体が砂に埋もれる天変地異のイベントが起きる為、中に入ること自体ができなくなる。

 今を逃すと、二度とこの遺跡の秘密を知る機会は訪れないだろう。

 よし、俺の心は決まった。


「マール様、元とはいえ海賊だった人間と同行するのはあまり気が進みません……」


「いや、行こう。俺もあの中が気になる。ヴェパルさん、財宝を発見したら均等に三分割だぞ」


「そうこなくっちゃ!」


 ヴェパルさんは満面の笑みで俺の両手を握って喜びを表現する。


「マ、マール様!? ……分かりました」


 ユフィーアは不満そうだが、俺の言う事には素直に従ってくれるのはきっと好感度バグのせいだ。


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