表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
全てを識る百識の男  ~ また俺だけ知らない伝説が増えている ~  作者: 浦賀やまみち


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
6/6

第06話 世界の闇、カスパー




「やったぜ」



 真っ裸で暴れたかいがあった。

 超デカいカバを倒した報奨金はすごかった。


 一年は遊んで暮らせる額だ。


 心が踊る。

 今夜は、カジノで大フィーバーだ。



「しかし……。どうして、あいつは『ああ』なのかね」



 ティアナは不満顔だったが、宿でお留守番をしている。

 カジノは未成年禁止だから、仕方がない。



「ちょっと暇つぶしに、剣を教えてやっただけなのに……。」



 俺は正しい。


 下手に年齢を偽り、カジノにハマったら危ない。

 大人として、青少年を導く必要が俺にはある。



「まっ、明日の朝には、もうこの街にいないけどな」



 明日の朝、俺は新大陸へ旅立つ。


 報奨金をカジノで三倍にし、豪華客船で優雅なクルージングだ。

 南国パラダイスが俺を待っているぜ。



「やあ、それはちょうど良かった。間に合いましたね」

「げっ!?」



 路地裏に響いた、聞きたくない声に思わず足が止まった。



「一か月ぶりにございます。

 フェリクス・デ・アーレン・ローゼンベルク様」



 枝道の影から、にこにこと笑う糸目の男が出てきた。

 借金取りの『カスパー』だ。



「……捨てた名だ」



 すぐさま腰を落とす。



「はははっ! 困ります。借金は捨てられません」

「……な、何の用だ?」



 駄目だった。


 後退ろうとして、何かにぶつかった。

 いつの間にか、背後に用心棒の『メルキオール』がいた。



「これは、妙なことを……。

 百識と呼ばれる、ローゼンベルク様なら私の意図は、すでにご承知のはずです」

「ぐぬぬぬぬっ!」



 ズシリ、と重い布袋を震える手で差し出す。

 メルキオールが乱暴に掴み取り、カスパーに渡す。


 布袋を開くと、三日月の光を吸い込むように白銀貨が輝いた。

 それを間近に浴びたカスパーの糸目が、はっきりと見開かれる。



「やあ、これはすごい……。」


「借金が、三年分は縮まりましたよ」



 その割に、減った年季はたった三年。

 クソ親父のクソっぷりを再確認するだけだった。



「あと何年?」

「あと三百四十一年と七か月になりそうですね」



 俺の問いかけに、カスパーは即答した。

 金勘定だけは早い奴め。



「ねえ、それさ。俺もお前もとっくに墓の中だよね?」

「はい、早く結婚して、子どもを産んでくださいね」



 さらりと言いながら、カスパーは袋の口紐を結び直す。



「ちなみに、私は彼女が出来ました」

「今すぐ、死ね!」



 俺は本気の殺意を込め、右拳を放つ。



「御冗談を……。

 今、子々孫々までのお付き合いを結んだばかりですよ?」



 パシッ、と乾いた音。

 メルキオールの手が、俺の拳を止めていた。



「くそっ……。」



 俺の一撃を止められる奴は、そういない。

 勇者のティアナですら、五回に一回だ。


 だが、こいつはそれを当然のように受け止めている。


 なぜ、こいつはカスパーの用心棒なんかやっているのだろうか。

 今、カスパーに渡した額の半分で、裏切ってくれないかな。


 しかし、メルキオールの忠誠は絶対だ。

 密かに何度か交渉したことがある。


 きっと、メルキオールも子々孫々まで借金に縛られているのだろう。

 もしかしたら、二代目、三代目なのかもしれない。


 俺たちは、同志だ。

 いつか、判り合えると信じている。



「はははっ! では、また来月にお会いしましょう!」



 メルキオールはカスパーを小脇に抱えた。

 次の瞬間、大きく跳躍する。



「二度と顔を見せるな!」



 二人の影は、屋根の上へ、そして闇の中へ消えていった。




 ******




「ふっ……。馬鹿め」



 路地裏で膝を抱えていた俺は、ゆっくりと立ち上がる。

 チート能力を全開にする。


 だが、カスパーの気配はもうどこにもなかった。



「俺は、リスク管理ができる男」



 靴を脱ぎ、逆さまにして振る。

 チャリン、チャリン、と白銀貨が二枚落ちた。


 これを元手に、カジノで四十倍にすれば、すべてチャラになる。


 完璧すぎる計算だ。

 自分の才能が憎い。



「南国パラダイスが俺を待っているぜ!」



 俺は靴を履き直し、軽やかに駆け出した。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ