Chapter 3 : E-Gun (3)
アイテムドロップ!『E-Gun』を入手しました。
かつて、ある冒険者が奇妙なドロップアイテムを手に入れました。それは彼が使ったことも、見たこともない武器。
彼はそれを使う気がなかったのか……あるいは、単に理解できなかったのかもしれません。結局、その品は王国へと預けられることになりました。
時は流れ、E-Gunは譲渡され、受け継がれ、贈答品として扱われましたが、最後にはある賢者の手に渡りました。古今未曾有の知恵者と謳われた、あの賢者の手に。
その賢明さゆえに、賢者は恐れたのです。もし自分が死んでしまえば、積み上げてきた知識がすべて灰とともに消えてしまうのではないかと。
失われた知識のせいで、この世界が滅びてしまうかもしれない……少なくとも、彼はそう考えました。
彼はその能力を試しました。
王国の騎士たちを実験台にして、ついにその本質を理解したのです。
そして、それを最も歪んだ形で用いました。
……賢者は自分自身に向けてE-Gunを撃ったのです。しかし、冒険者ですらない彼の肉体はあまりに脆弱でした。たとえ銃に殺傷能力がなくても、引き金を引いた瞬間に、彼の体は絶命しました。
けれど、そんなことは賢者にとって重要ではありませんでした。 知識に満ちた元の精神が、肉体から抜け出したのですから。空腹も、老化も、死すらない体。
「これで、私の知識は永遠に不滅だ……」
透明な姿となった賢者は、悦びに浸りながらそう呟いたのです。
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「……なんか聞いてる感じだと、一時的な人格を体にブチ込むっていうのは、本来の使い方じゃないみたいね?」
私は顎に手を添えて、フォーに尋ねたわ。
フォーは答えた。
「使い方は人それぞれでございます」
「で、どうなったのよ? その知識がなくなれば世界が滅びるって思い込んでた人。結局、その知識は役に立ったわけ?」
フォーは首を振った。
「いいえ。先ほどリン様にお見せした通り、E-Gunによって分離された元の精神を視認できるのは、引き金を引いた者のみでございます」
「ってことは、あの賢者は幽霊みたいな姿で浮いてるだけで、戻る体もなく、誰とも喋れず、おまけに死ぬこともできないってことなの!?」
「それが彼の末路でございます。彼が満足しているかどうかは……私には分かりかねますが」
フォーは間を置いた。
「聞きに行くことも叶いません。あいにく、E-Gunの起源となった異世界はすでに崩壊しております。女神様がそれを回収し、当館に収蔵されたのです」
「異世界って、滅びることもあるの?」
「様々な要因がございます。崩壊した世界は女神様によって消去されますので、彼の精神が共に消え去ったのか、それとも……。神界ですら把握していないかもしれません」
もし消されていなかったとしたら、あの賢者は何も存在しない虚無の中を、永遠に彷徨い続けていることになるわね……。
「使い方を間違えたら、思ったよりヤバい代物じゃないの、これ」
「ゆえに、万が一の事態を避けるため、私がリン様を撃たせていただきました。たとえその可能性がわずかであっても」
「そんなに危ないなら、最初から撃たなきゃいいじゃないのよ」
「左様でございます」
こうして、かつての所有者の使い道が私の予想とは全く違っていた銃の物語は幕を閉じたわ。
私はフォーの後に続きながら、ガラスケースの中の黒い銃を横目でチラリと見たの。
その時、フォーが問いかけてきたわ。
「実のところ、当館には他にも銃の展示がございます。もし興味がおありでしたら……」
「銃の話はお腹いっぱいだわ。遠慮しとくわね」
それに、どんな物語があろうと、私が無事に元の世界へ帰るのを助けてくれる銃なんて一丁もありゃしないでしょうし。 何より、話を聞いて自分で体験した限り、銃にはもう関わりたくないわ。
けれど、この遺物のおかげで分かったこともある。
この博物館の中では、あらゆるスキルが使えないけれど。
ここに展示されている「デブリ」はすべて……。
実際に、使うことができるんだわ。




