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虹色の電撃姫~いやだからオレは……~  作者: 芦田貴彦
第二部 ガンスリンガー
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茶髪翠目の少女との出会い 2

始める前はぐだぐだな感じであったが、募金活動自体は順調にいった。

午前の部限定だが、もっとも貢献したのは、勠也かあるいはオレであろう。

どちらも立っているだけで人が集まってきたのだ。


勠也は俳優と思われたようで、女の子たちがものすごい勢いで寄ってきた。写真までねだられたらしいが、勠也は断ったらしい。


一方オレのほうは、募金している中で突出して幼い姿、可愛らしい見た目、そしてなにより虹色に光る金髪という目立ちまくる姿だったため、いろいろな人が募金箱にお金を入れてくれた。

……そしてその大半の人が、『高校のお兄ちゃんお姉ちゃんを、一生懸命手伝っている健気な小学生の女の子。制服は貸出』と勘違いをしていたらしく、子ども扱いはなはだしかった。


途中それを眺めていた黒塚が「それなら言ってみればいいんじゃない? 『私、小学生じゃないもん! 高校生だもん!!』て?」とほざいたので『光速』を駆使して蹴り飛ばしてやった。一応注意はしたが、道行く人たちに見られた可能性もある。だが後悔はしていない。



……話を戻そう。



とりあえずそんな感じで、午前は終了した。あとは午後の募金活動である。

「午後はそんなにする気はない。みんなこれまででもう充分な働きをしているからな。あと少しだ、頑張ってくれ!」

午後の始まりは先生のその言葉から始まった。


「……ん」

「どうしたの雷牙?」

午後の活動が始まって数分後。

「あ、いや。……悪い、少しトイレに行ってくる」

そう言ってオレは募金箱を楓に預けて、人込みをかき分けそそくさと駅の構内に入る。



「しまったな。さっきのレストランで飲みすぎたかな?」

さっきまでは全然だったのに、急に尿意を催したことにオレは苦い顔をする。

「……駅は広いからな。それにあんまりオレは利用したことないし。トイレってどこだよ……」

辺りを見回しながら早足でオレは駅構内をめぐる。


この駅は、地元でも一番大きな駅で、新幹線も止まる。それゆえにそこらの駅よりも圧倒的に人が多く、同時に店の数も半端じゃない。あっちこっちで人だかりができている。その人だかりを避けながら歩くのは、小さな子の体には結構つらい状況であった。

「お、あったあった」

お目当てのものを見つけて、オレの顔がちょっと喜びに染まる。急いで入ろうと……したところで、オレははたと立ち止まった。

「……無意識にこっちを選ぶとか……オレはもうやばいのかもしれない」


足は当たり前のように女性用トイレに向かっていた。


この姿になった当初は、何度男子トイレに入り込んだことか。それが今では……。

軽くショックを覚え、そのショックで顔をうつむけながらオレはトイレに足を踏み入れ――



ドンッ



「うわっ」

……たと思ったら何かにぶつかって、オレは思わずしりもちをついた。


「いってて……何だよ」

「ご、ごめん! 大丈夫?」

頭上から聞こえてきた声に、オレは痛む尻を撫でながら顔を上げた。


「ごめんね。あまり寝てなくてぼおっとしてたから……」

声の主は、一五,六歳に見える少女であった。しかし日本人でないことは、その茶色の髪と翠色の眼を見ればすぐに分かった。しかし、口にしているのは流暢な日本語という変わった少女でもあった。


「大丈夫、立てる?」

そう言って少女は片手に大きな旅行用バッグを引きながら、空いた片手をオレのほうに差し出してきた。

「……あ、ありがと……」

その手を取りながら、オレは立ち上がった。


「……なん、ですか?」

立ち上がっても、手を持ったままオレを眺めている少女に、オレはおずおずと言った。


「……え、ああごめん! 君の髪きれいだなーって思ったからつい見惚れちゃってた」

あははと笑いながら、少女は慌てて手を離した。

だが、その時オレは何か違和感を感じた。どんな、と聞かれたら首をかしげてしまうが、確かになにかを感じた。


「……ホントに大丈夫? どこか痛めた?」

「え……? うわっ」


オレがなにやら難しい顔をしたので心配になったのであろう、少女がオレの顔を覗き込んできた。オレはいきなりどアップで現れた少女から、ばっと身を引いた。急に女の子の顔が近づいてきて、テンパらないだけの度量はオレにはない。……自らも女の子だけど。


「どこか痛い?」

「ああいえ、大丈夫です、大丈夫……」

オレはそう言った後、表情を硬くした。


「ど、どうしたの!? やっぱりどこか……」

「い、いやチガウンデス……」

その様子を見た少女が慌ててなにかしようとしたが、オレは片手を振ってそれをやめさせた。代わりにもう片方の手をお腹に当てながら一言。




「と、トイレに行かせてくれません、か?」




さっきしりもちをついたせいか、なかなかやばい状態になっていた。

「え……ああ、ごめん! どうぞどうぞ!!」

それを聞いた少女は、慌てて横にずれた。

「す、すいません……」

「ううん! こっちこそ引き留めてごめんね」

「い、いえ……では失礼します……」

少女がそう言ったのを聞くと、さっとオレはトイレに駆け込んだ。


「…………」

少女はオレの後姿を眺めていたようだが、やがてころころとバッグを引く音をたてて離れていった。



「……みつけた」



そう、つぶやきながら……。


非常に申し訳ないのですが、ストックがなくなってしまいました……。出来るだけ早めに更新していこうと思いますが、毎日とはいかないかもしれません。それでもこの作品にお付き合いいただけると幸いです。


誤字、脱字、修正の指摘、感想をお待ちしています。


10/19 一部駅描写など修正しました。

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