猫の復活
元は猫だったであろう骨が立っていた。そして、普通の猫と変わらず鳴いている。とりあえず触ってみることにした。
触れた指先から青白い光が溢れ出し、骨を包み込む。光はしばらく形を定めずに動いていたが、そのうち猫の形を取った。少し青白く光った猫が現れていた。
「えーっと、君は誰なのかな?」
喋りかけてみるが、猫が答えるはずもない……
『ボクは生きていた時は名前が無かった。今君のおかげで復活したような状態だ。名前は君が付けて欲しい』
「えぇぇ〜!」
猫が喋った!
『どうしてそんなに驚いている? 復活させてくれた相手とコミュニケーションが取れるのは当然だろう。母親とコミュニケーションを取るのと同じだ』
「いやいや、そう言われてもね……」
猫が喋ってきたことに驚かない人間なんて、なかなかいないだろう。
『とにかくさっさと名前をつけてくれ』
「う、うん。じゃあクロスケとかどうだろう?」
『ボクは一応雌だぞ?』
「じゃあティビアとかは?」
『一気にいい名前になったな……じゃあこれからボクの名前はティビアだ。よろしく、アラン』
「本当に訳のわからないことが大量発生してるんだけど、まず一つ質問するね。どうして僕の名前を知ってるの?」
『当然だよ、復活させてもらったときに教えてくれたから』
「うん……」
いろいろと訳のわからないことがあるので、いくつか質問をしてみる。
「君は誰?」
『ティビアだよ。アランに生き返らせてもらった』
「……うん。じゃあ、なんで生き返ったの? というか、なんで死んでたのに生き返ったの?」
死者の蘇生なんて聞いたことがない。
『それはまた後で話そうと思う』
「じゃあまた後で色々と聞かせてもらうことにするけど……ティビアはこの後どうするの? また会えるかどうかもわからないよ?」
『ボクはアランについて行く。それ以外の選択肢は無い。だから、アランと会えなくなることは無い』
「じゃあまずは街に帰ろう」
とりあえず宿に帰る。トコトコとティビアがついてくる。途中、屋台で軽く食事をする。とても安いからだ。
宿につき、自分の部屋に上がる。
「じゃあ質問するね。まず最初に、僕はティビアに何をしたのかな」
『まず、何ヶ月か前の話だけどボクの肉体は死んだんだ。だから、ボクの魂は肉体に宿っていられなくなった。だけどアランに特別なエネルギーを渡されたので、肉体が仮の復活を遂げた。だから、ボクは魂を肉体にくっつけ直して、アランについて行くことにした』
「よくわかんないけど……僕がティビアのことを蘇らせたってことでいいのかな?」
『そういうこと。そのときに、ボクはアランに従うことになった。そして、アランについてきてもいいと言われたからついてきた』
「死者を蘇らせるって誰でも出来るのかな?」
『できない。まず、死者の肉体の仮蘇生なんて出来る人間はほとんどいない。ボクが知っている限りでは君と後1人しかいない。そしてさらに、死者の意識を完全に保った状態に出来るのは、その死者がかなり高度な知能を持っていなければならない。つまり、ボクは激レアな死体っていうことだ』
「ふーん」
『百年とちょっと生きてきたボクの経験の話だけど、死者を仮復活させることが出来る人間は、その死者の力を全て受け取れていた。つまり、ボクの力をアランは使えるっていうことだ』
「例えば、どんなことが出来るの?」
『高速猫パンチ連打。だから、アランの連続パンチはとても強くなってると思う』
「……他の動物を復活させたときでも、その能力を使うことは出来るの?」
『多分出来ると思う。けど、死者の復活とか使役とかって、かなりエネルギーを使うからあまり多くは使えないと思うよ』
「そうなんだ……」
けれど、エネルギーの上限を超えないレベルならとても強くなれるのかもしれない。
それよりも気になることがある。
「さっき百年とちょっと生きてきたって言ってたけど……」
『レディーの年齢を覚えてるなんて最低だと思うけど、一応教えてあげる。ボクは化猫、年齢はヒミツ。高い知能を持ってるから、死んでから復活しても意識を保っていられる』
「化猫でも、使えるのは猫パンチ、ということ?」
『う、うん、まあね、そういうことだね。認めたくは無いけど……それより、明日からの予定とか聞いてもいい?』
「明日は冒険者ギルドに行って、何か依頼がないか見てみる。で、手頃なものがあったらそれを受けてお金を手に入れる」
『オッケー。じゃあお休み……ゴロゴロゴロ』
寝てしまったみたいだ。とりあえず、明日のために寝ることにしよう。
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余談なんですけど、ティビアって「脛骨」っていう意味です。