冒険者パーティをクビになる
アランは魔法使いとして、冒険者をやっている。この世界の未知の領域を調べたり、人に危害を及ぼす魔物を狩ったりして日々の生計を立てている。
とはいえ、決して強いわけでは無い。
様々な物事を出来るものの、突出して出来るものが無い人のことを『器用貧乏』と呼ぶことがあるが、アランはまさに器用貧乏なのだ。
通常の人が使える魔法の数は約3種類、多くても5種類なのに、アランは10種類以上の魔法を使える。しかし、一つ一つの威力は他の魔法使いに比べると遥かに劣る。
例えば『ファイアボール』という魔法は、2番目に弱い魔物のオークを一撃で倒せるほどの威力がある。しかし、アランが撃つ『ファイアボール』は最弱の魔物のゴブリンぐらいしか倒せないのだ。
そんな器用貧乏のアランは、複数の冒険者により作られる「パーティ」において、はっきり言って役立たずだと思われている。そのため、今日で首になってしまった。
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「アラン、本当に済まないが……今日で冒険者パーティ『赤い翼』を首にする」
今日会って、最初にリーダーから言われたのが、その言葉だった。
「あ、首ですか……」
「すまんなアラン、しかしこれも仕方のない事だ」
「そうですよね……」
アランにも、自分が器用貧乏だという自覚がある。
今後の生活をどうしようか考えようと思ったとき、リーダーから少し重い小袋を渡された。
「いわゆる退職金ってやつだ。次の仕事が見つかるまでの一週間分くらい生きていける金が入っている、今まで一緒にいたから、その礼として渡しておくよ」
「あ、ありがとうございます」
袋を受け取り、宿に戻る。今後の生活が、とても不安になってきた。
さっきまでいたパーティのリーダーはとても優しく、アランが器用貧乏だと分かってもとりあえずメンバーに加えていてくれたのだ。そんなリーダーにもクビと言われたのなら、おそらくどのパーティにも入ることは叶わないだろう。
(宿にいてもあまり考えられないし……少し歩こう)
そう考えたアランは宿を出て、道を歩いて街の外へと向かった。
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