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第30話 適性試験

 なんという忙しさよ。家族の足に使われることにもなり忙しさに拍車がかかりました。

 言われたとおりにやってみよう。それでだめなら何とかしてくれるというのだから、何もわからない俺が気負ったって仕方ない。


 紙を睨みつけるようにして集中し、イヴの言うとおりに見えない何かを出すようにイメージした。子供の頃こんな風にして遊んだようなことがあったが、まさか真面目にやる羽目になるとは。


 ほんの数秒集中すると、紙を挟んでいる親指と人差し指がずれる感触があった。わずかに見えるそれは、紙が焦げているように見える。


 適性があれば燃えると言っていたが、これはあるのかないのか。――と思っていた矢先。


「うおっ!?」


 ぼっ、と目の前に一瞬だけ火柱が現れた。見間違いではない。マジシャンがよくやる、一瞬だけ燃える手品のようだった。どうなんだという思いを込めて二人を見るが、双方共にあまりぱっとしない表情をしていた。


「……どうなんだ、これ?」

「ん~……クロエさん、どうです? 微妙な感じですけども」

「適性がない、わけではないと思うんですけど、詳しいことは私なんかでは……」


 なんというか、訳の分からない雰囲気になってしまった。説明していた時のようなイヴの自信に満ちた表情はどこへやら。とにかく全部やってみましょう、と俺に試験紙を渡すイヴの顔はあまり明るくはない。


 まあ悩んだところで仕方がないだろう。魔力の流し方は合っているはずだから、これをあと何度か繰り返すだけだ。


 水属性。適性があると試験紙から水が垂れるほど濡れるらしい。結果は濡れた紙を1時間ほど乾かした微妙な感じの濡れ具合。適性は無きにしも非ずとのこと。


 風属性。適性があれば試験紙全体からある程度の風が吹くという。結果はおかしなことになった。確かに風は少々強い程度に吹いてはいるが、離れると途端に風が消える物理法則を無視したことに。聞いてみると、少し距離を置くと魔力が急激に霧散しているらしい。火の時も同じだろうとはイヴの予想だ。適性はあるが使える魔法は限定的だそう。


 雷属性。試験紙から雷が見えれば適性あり。バチバチと盛大な音を立て、尚且つ規模もそれなりに大きな雷を紙がまとうという結果に。適性は大有りのようだ。


 土属性。紙がボロボロと崩れ去れば適性があるらしい。魔力を流した瞬間、火の時と同じように指元が一瞬で崩れ崩れかけの状態の紙が出来上がり地面へと落ちていった。魔力が上手く紙全体に伝わっていなかっただけで適性はあるらしい。


「……とまあ五大属性はやってみたわけですが。どうもマスターの魔力はおかしなことになってますね」

「俺に言われたってなぁ……」


 クロエも不思議がっているあたり、おかしなことはわかっている。だが俺自身ではどうしようもないことだ。こうしてくれと頼んだわけでもない。むしろ頼めるなら無双できるほどの力を要求している。


 ……実現不可能なことを思ったって仕方ない。まだ他の5属性が残っている。ただイヴがああまでして珍しいというのだから、俺には使えないだろうな。


 次の属性の試験紙をもらおうと手を伸ばすが、妙にだるく感じた。体から何かが抜けきっているような、力が入らない感じがする。


「あぁ、魔力使い切っちゃいましたね。無理すると大変ですから、今日はここまでにしましょう」

「そ、そうか。ふぅ……」


 スタミナみたいな言い方をするなと思った。実際この世界ではそんなものなのかもしれない。見た目的には使ったように見えないが、俺が未熟なせいか。今の俺ではクロエの足元にも及ばないだろう。……イヴが多少驚くような魔法を使う時点でクロエは別格なのだろうが、なんというか男としての意地が許してくれない。鍛えられるなら鍛えるしかない。


「実技はこれぐらいにして、今度は中に入って勉強しましょう。マスターにはできるだけ早く覚えてもらわないと困るかもしれませんからね」

「……どういうことだ?」

「……内緒です」


 口の前で人差し指を立てて、そのまま家へと向かってしまった。訳が分からないが、聞いたところで話してくれそうもない。俺はどこか楽しそうなイヴの後ろ姿をクロエと一緒に追っていった。

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