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第21話 肌着

 さてどう言えばいいのやら。久しぶりにこんな自覚できるほどの苦々しい表情を浮かべながら、イヴに伝える方法を考える。世界の常識を知っているくせになんで人間の常識を知らないのか、これがわからない。知らないのだから教えるしかないのはわかっているが、やりたくないのが本音だ。


「……これは俺の世界の言葉だからこっちで通じるかわからないけど、シャツとか聞いたことないか?」

「ないです」

「あ、そう……」


 まず一つ目を外す。これで通じればよかったが、世の中そんなに甘くないということだろう。


「肌着といったりするものなんだが、服を着る前にこういう薄い布をつけたりしないか?」


 二つ目は実際に見せる。実例があれば何とか伝えやすいだろう。俺自身のを見せようと首元からシャツを少し伸ばして見せようと手を突っ込んだ時、俺に電流走る。――ない。おおよそ肌着と呼べるものが存在していない。


「……どうしました?」

「いや、ちょっと待ってくれ……少しよそを向いていてくれないか?」

「はーい」


 大人しくそっぽを向いてくれたところで、構造がよくわからない服をかき分け腰回りに手を伸ばす。そう、こっちまでなかったら今の俺はやばいことになっている。冗談だろ、と思いつつ明らかに肌着ではない材質の布を分けて分けて体へと手を近づけると、やはりというべきか……


「……ない。なんでだよ……」


 似たような世界だからと思って油断していた罰だろうか。落胆しため息をつき諦めて、もういいよとイヴに声をかけようと顔を上げると、彼女はクロエに何かをしていた。


「何してるんだ?」

「マスターよりクロエさんの方がわかるかと思いまして。ほら、同じ女性ですし」

「……まあ、そうか」


 見た感じまた変な魔法を掛けるような様子はないので、少し見守ることにする。確かに男の俺よりクロエの方がわかるだろう。包丁を置いてイヴの方を向き、腰のひもをほどいてするすると……ん?


「ちょっと待って、何してるんだ?」

「服の下に着るんですよね? クロエさんのを参考にしようかと思いまして」

「そういうことじゃねぇ……!」


 イヴと話している間にもクロエは服を着々と脱いでいく。元々大した枚数は着ていないようで、すべて脱ぐには十分な時間だったようだ。ただ、脱いだ後が問題だった。クロエも同様、着ていない、付けていない、履いていない。生まれたばかりの姿になったクロエを、俺は直視できずに目を逸らす。


 これも魔法のせいだろう。さすがに裸を見られて恥ずかしくないという世界に来ている何てことないはずだ。もしそうなら俺は生きて行けそうにない。


「……マスター、ないですよ? マスターの世界だけじゃないですか?」

「……そう、らしいな」


 胸はまだわかる。言っては悪いが服の上からでもあれを付けるほど膨らんではなかった。だが、下まで履いていないのは想定外だった。


「とにかく。股や胸を直接見られるのは避けてくれ。人間にとっては恥ずかしいことだからな」

「そうですか。あんまり理解できませんでしたが、わかりました」


 イヴは、何をされれば恥ずかしいと感じるのだろうか。

 下着を着用するのが一般的になったのは最近らしいですね(Wiki調べ)

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