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第14話 歴史

 したいことが増えるばかりで消化できない毎日を送っております。

「まず、なぜクロエさんが逃げようとしたのか。それが一番気になるところじゃないですか?」


 イヴにそう切り出され、無言で俺は頷く。押さえこんだことも気にはなるが、やはり一番の疑問はそこだ。


「まあ前座から入りましょうか。マスターの世界では恐らく『銃』というのはそれほど珍しくはないのではないですか?」

「国によって様々だけど、存在自体は珍しくはないな」


 銃社会ではない日本にだって銃はある。警察も持っているし、エアガンだって趣味で所持する人はいる。世界基準で見れば一般人が銃を持つことが普通の国だってあるのだ。


 インターネットにも、実銃を撃ってみたという動画だっていっぱいある。昔でも今でも、銃というものは歴史に登場してからは珍しいものではない。


「私たちのいる世界では、銃というものは珍しい以前にあってはならないものなのです」


 あってはならないもの。現代における核兵器のようなものなのだろうか。それとも、銃規制が世界中へと普遍した世界なのだろうか。


「……神をご存知ですか?」

「え?」

「マスターの世界には、どんな神がいますか?」


 イヴの言っていることが若干わからなかった。神はいるものではなく概念的な何かだと俺自身は思っている。詳しくは全くもって専門外のため知らないが、仏教では確か八百万の神々といったか。


「……宗教によって違う。俺のいた国の宗教ではやおよろず、八百万の神様がいる」

「……宗教って何ですか?」


 珍しくイヴの方からオウム返しの質問が返ってきた。こちらが知らないように、向こうもこちらの常識を知らないのだろう。


「何て言ったらいいのかな。思想の違いというか、それぞれが信じる神の違いというか……」

「……なるほど。何となくは理解できました、ありがとうございます」


 おぉ、早い。俺の下手な説明で理解できるとは、イヴはなかなか頭が回るようだ。


「しかし八百万というと、神がその辺りに歩いていそうですね。少し見てみたいかもしれないです」

「……神様はその辺りなんか歩いてないぞ?」

「え?」


 初めてイヴからそんな返事を聞いた気がする。神がその辺りを歩くというのはどういう発想なのか。……いや、ここは異世界だ。もしかしてと思うが。


「……この世界では、神は実体として存在するのか?」

「ええ。……マスターの世界の神とは少し違うようですね。この世界では、神というものは実際に存在していました」


 やはり、俺は全然この世界の常識を知らないようだ。

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