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七話 なんで???

両親の相手はいつも疲れる。

私のことを愛しているのもわかるし、貴族として娘の相手をすぐに決めて子供が欲しいのもわかる。

でもやっぱりまだそういうの要らないしな……

現状が一番幸せなんだよ。

夕飯も食べてる気がしなかった。

ただ風呂に入って、泥のように眠った。

それから一週間ほどした時だった。

両親が再び私の館を訪れた。

だが、用件は前と違った。


「領主になる……? お二人が?」


私の言葉に、うんうんと母親が頷く。


「そうなの! 色んな事情で領主がいない土地にね、移住すると色々と支援してくれるのよ。しかも選ばれし者だけが選ばれるのよ。『領主として優秀な貴族』ってね」


なるほど。人を選ぶ田舎移住支援制度、みたいなやつかな?

父親も喜んでいるみたいだけど……

いや、母親が見せてくれたパンフレット見たけど、これここから結構離れてない?

土地の魔素も少なくて、移動魔法使うにも時間かかる南の島だし。

それ以前に王家が作った制度なんだから勝手にどっか行くことは出来なさそう。


「二人は、ここでいいの?」

「うん! 南の島での生活、お母様ずっと憧れてたのよ~」

「私ももう一度領主として仕事が出来ると思うと楽しみでな。今から腕が鳴るぞ」

「そう……あの――」

「ドロシーちゃんの結婚のこともわかってるわ。もう、それならそうと、遠慮せずにお母様にいってもよかったのにぃ」


……え? 私の結婚?

なんのこと?


「おいおい、それは秘密だろう? まだ、な」

「あらやだ! そうだったわねぇあなた! うふふ。お祝いは楽しみに取っておくわぁ。結婚式は派手になるわねえ」


??????

ハテナマークがずっと浮かんで止まらない。

この二人は何を言ってるの、まじで。

結婚式って言ってるけど、私産まれてこの方彼氏も出来たことないけど?

私の疑問もそのままに、両親はそのまま荷物を纏めて去っていった。


「……どういうこと?」


家の前には首を傾げる私だけが残された。

取り敢えず、わかっていることは両親が離れて暮らすっていう事だ。

それに、どういうわけか私が誰かと結婚すると思っていて、お見合いへの圧力はなくなった。

……っていうか、あれだけ相手にこだわっていた両親を納得させた人間って誰?

私上位貴族と関わったことないだけど?


「ドロシー様、ただいま戻りました」

「あ……おかえり、ルルくん」


そうこうしているうちに、ルルくんがクエストから帰って来た。

私の様子がおかしいことに気づいたのか、彼はそっと訪ねてきた。


「どうしました?」

「ああ……うん。あのね……」


信じてもらえないと思うけど、私は今日あった事を話した。

ルルくんは「ふむ」と唸って、私に耳打ちした。


「……実は、ドロシー様にある噂が立っておりまして」

「噂?」

「はい。ドロシー様には公爵家子息と相思相愛だという噂が」

「……は?」


は? は?

はああああああああ?

待って待って待って。

私公爵なんて会ったことないよ?

港町であった元公爵なら見たけど、あんなのカウントするべきじゃないだろうし。

いくらギルドマスターとしてそれなりに名が挙がってるからって、公爵家なんて同じ貴族だとしても雲の上の存在だもの。


「な、な、なんでそうなってるの?」

「なんでも……大旦那様の元を訪れたその貴公子は、血華(けっか)を浮かべたそうです。なのでお二人は彼を公爵家の子息と思い、その彼が『実は私とドロシー嬢は秘かに想いあっている。なので機会が出来るまでそっとしておいて欲しい』と告げたんですって」

「血華ぁ? 本当なの?」


血華とは、公爵家のみが顕現できる魔術だ。

この国、レオポルド王国には四つの公爵家がある。

彼らの祖先は建国時に最初の王と共に魔王を退けたとされる、四匹の聖獣だ。

故に公爵家の血を引いている者には、その聖なる血統を誇るための特別な魔術がある。

それが血華。

己の血を浮かべ、その血に宿る聖獣の紋章を形作る。

他の魔術師や貴族が出来るわけがない、固有の魔術だ。

だからこそこの世界では、同じ貴族でも公爵家とそれ以外は大きな差がある。

だからこそ、さらに私の頭は痛くなる。

……どうしてそんなことをする人が私の恋人を名乗って、勝手に両親に会っているの? ストーカー?


「どうしようルルくん……私、公爵家の人とはったこともないし、ましてや恋人なんてとんでもないのに。これ、私が悪いってなって、不敬罪になったりしない?」

「そんなことにならないでしょう。まだ大旦那様たちが仰っているだけですし。もしかしたら何か勘違いしただけかもしれませんし。いい方に考えたら、もう婚期についてしつこく迫られることもないでしょう?」

「……そうだけど」


そそっかしくて、思い込みが激しいあの人たちのことだ。

勝手なことを言った人のしたことを、勘違いしただけかもしれない。

それでも勝手に私の恋人だって言ってる人がいるのは怖いけど。


「大丈夫ですよ。不逞な輩がドロシー様に近づかないように、私が守りますから。役所にも『勝手に婚姻届と出す輩がいたら止めてくれ』と命じておきましょう」

「……うん」


彼の言葉に従い、私はルルくんに支えられながら家に向かう。

件の噂のお陰か、私に絡んでくる人間は前より少なくなって来た気がする。

噂の主はしばらく経ってからも見つからない。

不安はあるけど、ルルくんや周りも警護を強めてくれる。


(……このまま、なにもないと、いいけど)



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