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五話 すごい才能だ。

ラスボスの失踪という情報にモヤモヤしつつも、私たちは帰路についた。

実家の門を開くと、門番より先に外で待っていたルルくんが出迎えてくれた。


「お帰りなさい、ドロシー様! 荷物、私がお持ちします!」


長く伸びた髪を結び、栄養のいい食事を与えられたことで血色がよくなった彼は、どこからどう見ても花のような美少年だった。

まるで映画に出てきそうな感じさえする。

私は収納ボックスに入れていない、自分用の鞄をルルくんに預けた。


「ありがとう、ルルくん。今日の授業はどうだった?」

「はい! 先生にもとてもよく褒めていただきました。これもひとえにドロシー様のおかげです」


そうやって微笑むと、まるで花びらが舞うようだった。

……こんな可愛い子が虐待を受けていたなんて。

今日は頑張った彼の為にも、とびっきり豪華な食事にしよう。


「うん。先生とお話ししたけど、ルルくんの事すごく褒めてたよ? 今日はお祝いに、豪華にするからね。美味しいお魚たくさん買って来たから」

「わあ……私魚好きです! ありがとうございます、ドロシー様っ」


そう言って私たちは家に戻った。

今日の夕飯は魚づくしにした。

サラダは甘みと歯ごたえのあるしっかりした身を持った白身魚のカルパッチョ。

スープは貝と魚をトマトと塩で煮込んで、素材の旨味を引き立てたブイヤベース。

メインは油たっぷりの鮭のムニエル。

どれも舌が蕩けてしまうほど美味しかった。

ルルくんも満足しているようで、一口食べるごとに顔を綻ばせている。


「美味しい?」

「……んっ、はい。とても」

「ふふ、良かった」


出会った頃からすくすく育ち、表情も豊かになっていくルルくん。

そんな彼の成長を喜ばしく見つめていた。



 ※



月日は流れ、ルルくんが13歳になった。

誕生日は不明なので私が彼を拾った日にしている。


「ドロシー様、いかがでしょうか?」


私の前に、照れた様子のルルくんが立つ。

濃紺のシックなコートを纏い、半身以上の長さの杖を持っている。

担当の魔術師の先生と私がルルくんと話し合って決めたセットだ。

無難でありながらもクールな印象を抱かせる服は、大人びた印象の彼にはぴったりだった。

私の家で保護して以来、彼は本当にあっという間に成長していった。

10歳になる頃には私の背に追いついて、今では私より頭一つ伸びている。

「膝が痛みます」って嘆いていたのをよく覚えている。

成長期にもなってないのにこんなに背が伸びるなんて、大人になる時にはものすごく背が伸びるんだろうな。

他の女性より背が低い私からしたら、見上げるのに苦労しそうだ。


「……ドロシー様?」

「あ、ごめんね。ルルくん、大きくなったなって、思って」


感慨に耽りすぎてしまった。

でも本当に色々と思う事があるもんな。


「初めて会った時は、私が抱き上げられるくらいだったのに」

「全てはドロシー様のおかげです」


そういうと、彼は私の手を取った。

あの人は全く違う、大きく、節くれだった男らしい手。

白い手袋越しに力強さを感じる。

ルルくんはその手で私の手を握ったまま、腰を屈めて、その手の甲に唇を落とした。

まるで絵本の中の王子のように。

あまりに突然のことに、私は固まってしまう。


「……っ!」

「そして、あなたを守るために強くなります。これかも、ずっと」


そんな時、彼を呼ぶパーティーメンバーの声がした。

今日、ルルくんを連れていくパーティーは、テレーシア家と家族ぐるみで仲のいい冒険者一家であり、ルルくんと同世代の息子さんもいる信頼のできる人物だ。

ギルドマスターとして集会所を離れられない私の代わりに、彼の保護者としてクエストに連れて行ってくれるのだ。

今日挑むクエストは難易度が一番低いものだし、安心して任せられる。


「では、行って参ります」

「……うん」


ルルくんは爽やかに笑って去っていく。

私はしばらくぽかんとしていて、受付嬢の子に話しかけられるまでじっとしていた。

これはただの……親愛の証、だよね?


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