十話 まるで主人公では?
フィンがいないヒロインたちが私たちのギルドに加入して、数週間。
いつか単独の冒険者としてフィンがやってくるかと思いきやそんなこともなく、時は流れた。
『四つ葉』ならぬ『三つ葉』の三人は、地道かつ順調にキャリアを積み上げていった。
トーカの鋭く正確な攻めと、攻撃魔法を得意とするブリュレの神出鬼没な戦法。
そして二人にバフを付与し、回復などをして支えるエリチカ。
三人の息の合ったコンビネーションは見事なもので、着々とランクを上げていき今、C級となった。
「昇級おめでとうございます。『三つ葉』の皆さん。これでC級クエストの受注が許可されましたよ」
「ありがとうございます、女将さん。私たちはこれからも精進します」
「ま、ブリュレたちならヨユーだしぃ?」
「ふふ。そうね、皆で頑張りましょ」
手を胸の前に添えて礼をするトーカ。
ふんぞり返って胸を張るブリュレ。
口元を手で隠して上品に笑うエリチカ。
原作では嫌われていた彼女たちと、こうして信頼関係が築けてよかったなぁ……
そんな時に聞き覚えのある声が受付に寄ってくる。
「ほぉ~なかなかやるじゃねえか。若い女だけのパーティーのわりにしっかりしてんなぁ」
ゴーマンが私と三人の間に割って入り、トーカたちを品定めするような目で、その足先から顔を眺める。
悪意を隠しもしない、いやらしい目だ。
三人は彼を睨むだけで、何も言わない。
こういう輩には慣れているのだろう。
そんな彼女たちからの敵意に気づいているのかいないのか、ゴーマンは続ける。
「お前らの成長性を見込んで、このA級剣士のゴーマン様が使ってやってもいいぜ? このギルドでオレ様に並ぶ冒険者はいねえからなぁ。お前らのキャリアにもいいと思うぜ? なあおい、何とか言えよ――」
無言を貫くトーカたちに手を伸ばしたところで、私は止めようとした。
が、その前に彼を止めた人物がいた。
「ゴーマンさん、ここにいたんですね。探しましたよ」
それはルルくんだった。
彼はスタスタと、男性モデルのランウェイのように優雅にゴーマンに歩み寄ると、その肩に触れた。
そしてアルカイックスマイルを浮かべ、こう言ったのだ。
「酒場の皆がゴーマンさんを探していましたよ。会いに行ってあげてください」
「ああ~ん? ははっ。仕方ねえなぁ~いってやるかあ~! 伝言ありがとよ!」
ルルくんの言葉にゴーマンはニヤリと歯を剥きだし、そのまま浮足立って集会所を出ていく。
トーカたちは「ふう」と息をつき、安心したようだった。
そんな彼女たちに、ルルくんはペコリと頭を下げる。
「不快な思いをさせてごめんね。大丈夫だった」
「……なにもされていない。だが、礼を言う」
まだ警戒を崩さないトーカはルルくんに軽く頭を下げる。
「あの人が来たら、適度に距離を置くと良い。酒場と娼館を行ったり来たりしてるから、集会所の外で必要以上に会うことはないだろうし」
「わかった。気を付ける。では、私たちはクエストがあるので……失礼」
そうして『三つ葉』はルルくんの横を去っていく。
まだ女の子たちは警戒心MAXだったけど、さっきのルルくんはスマートな対応だったなぁ。
まるで主人公みたいだった。
ん……?
もしかしてこの世界の主人公のフィンがルルくんだったりしないかな?
あのクズ男悪役のドロデスが女体化になる世界だもん。
外見は平均的な少年だったフィンが、チート与えられて美形化した、なんてこともあるかもしれない。
そうだとしたら色々と納得できるな。
ルルくんの強さも。フィンがいなくなっているのも。
これからルルくんが『三つ葉』に正式加入して、ヒロインの誰かとくっつく……なんてことがあったりして?
ちょっとお節介かもしれないけど、後押ししておこうかな。
原作のフィンも鈍感なとこあったし。
「今の子たち、すごくいい子たちだよ」
「そうですか。確かに成長性はありますね」
「うん。だから、ルルくんが支えてあげて」
「その必要はないでしょう」
……きっぱり断った。
まるで眼中にないみたいに。
「ど、どうして?」
「彼女たちの信頼関係やコンビネーションはもう完成しています。部外者が入ってもかえって成長を邪魔するだけになるでしょう。もし伸び悩みがあるとしたら、向こうから頼ってくるだろうし、だから、大丈夫ですよ」
せ、正論だ。ぐうの音も出せない。
こんだけハッキリ断るってことは、なんとも思ってないのか?




