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ただいま戻ってきました

「それにモーちゃんにハイエス家の呪いが隔世遺伝してないか心配だったのよ。」


 ハイエス家の呪い?


 そういえばアレクサンドラ様が亡くなった翌年に大規模なクーデターを興されたロシアーニア国の王朝がそんな名前だった。帝国が武力介入して失敗、国民の約半数を失ったと聞いたことがある。


 王朝は善政でクーデターが何故起こったのか、帝国の歴史家は首を捻っているらしい。


「キャラバン公爵家の怖がられる体質のことですか?」


 公爵様が口を挟む。そういえばアレクサンドラ様は元ロシアーニア王太子妃だ。ということは御実家なのかな。


「アドリアンに呪いが遺伝していることを知ったときの絶望感ったらなかったわ。皇族のいくつかの呪いや体質で相殺されて無くなったと安心していたのに。でも、あのときは使えるだけの権力を使って、キャラバン公爵家に諜報部を統括させることで怖がられても大丈夫な立場を与えてあげられた。」


 皇族にも呪いがあるらしい。あまり聞きたい話じゃないなあ。


「あの体質がモトラヴィチにもあると言うのですか?」


「だって、おかしいでしょ。10歳の子供がクリスティーナを誘拐した手練れの元Aクラス冒険者と相討ち出来ただなんて、貴方みたいに制御出来るとは思わないけど、何かの感情に連動して出てくるものじゃないかと見ているわ。」


 公爵様は制御出来るんだ。ということは僕にはワザと恐怖体験を強いているだけなのか。まあそのおかげでシロさんの死の恐怖を克服出来たんだから、構わないといえば構わないんだけど。いい加減止めてほしいな。


「そんなことを言いますけど、私だって苦労したんですよ。この体質のおかげで何度妻に怖がられたことか。」


「うんうん。本当に凄いよね。まさか皇族の恋愛体質がハイエス家の呪いに打ち勝つ日が来るとは思わなかったわ。」


 帝国の皇族は1人の女性を一途に思い続けることが多いらしい。代表的なのは、メリー皇帝が諦めきれず隣国の皇太子妃だったアレクサンドラ様を奪ったことだ。


 公爵様は奥さんを一途に思い続けて制御出来るようになったらしい。なんてすばらしい。


「どちらにせよ。私はモトラヴィチを養子にして、公爵家を継いで貰おうと思っていましたけどね。」


 公爵様がいきなりとんでもないことを言い出す。


「あらそうなの。」


「ええ、皇太子殿下が即位なさるまでには、全ての準備をして後継に譲ろうと思っていました。」


「引退後ラブラブの毎日を送ろうと画策しているのでしょうけど。そうはいかないわよ。後追い自殺しかねなかったリオーナには『生涯公爵夫人として生きなさい』と遺言を残してきましたからね。」


「ですよね。道理で引退の話をすると嫌がるはずだ。」


 公爵様ががっくりと肩を落とす。


「そもそも、長年侍女として私に仕えて呪いに耐性があるリオーナが怖がるはずが無いじゃないの。あれは体よくフル理由にしようとしていただけよ。」


 公爵夫人はアレクサンドラ様の侍女だったらしい。しかも公爵夫人になることよりも侍女を取るなんて凄い忠誠心だ。


「もちろん、わかっていますよ。貴女に出来なかったことをやり遂げからこそ、私に価値を見いだしてくれたんだと思っています。」


「私が転生していることはリオーナには内緒ね。自由を満喫するんだから。」


「無駄だと思いますよ。皇宮内の情報をお庭番の元当主でもあったお母様が見逃すとお思いですか? 今頃、ここの侍女として入り込むべく。手を打っているところでしょうね。魔界側からの情報網の構築方法を見て相当疑っていましたから。」


 公爵令嬢が話に加わる。公爵夫人も怖い人間のようだ。


 それから延々と公爵様の公爵夫人への愛と幻惑王の公爵夫人への愚痴を聞かされることになった。


 ツッコミ役はもちろん公爵令嬢である。


 このときが死んで一番つらかった気がする。




















「ただいま戻ってきました。ご心配をおかけしましたシロさん。おかげさまで助かりましたマッチャさん。鍛え上げて頂いたおかげで互角に戦えましたコーヒーさん。死んでいるときに聞いたことはノーカウントです公爵令嬢。」


 あまりにも怖い公爵夫人のエピソードばかり聞かされていたせいで第1声をどうしようか悩んで思考の逃避をしていたのは内緒だ。


 死体に向かって告白したなんて恥ずかしいことは無かったことにしたほうがいいに決まってますよね公爵令嬢。


「ねえ。ボクちんには? ボクちんにも何かあるんでしょ。なんと言っても最後に遺言を残すくらいなんだから。」


 ウザイ。やっぱりクロノワール様宛てと思われたか。クロ宛てのつもりだったんだけどなあ。


「はい。クロノワール様には優しくて慈愛に満ちた大人(・・)の分体を派遣して頂き、とても心強かったです。」


「モーちゃんはあの子を気に入ったんだね。キスまでしたと言っていたよ。ボクちんにはいつキスしてくれるの。いつエッチしてくれるの。」


 全くお子様だなあ。こんなところでキスしたことを喋らなくてもいいのに。


「いつも分体のクロを通してクロノワール様にキスしていましたが、足らなかったでしょうか。では、もっと沢山クロにキスやエッチしておきますね。」


 どさくさに紛れてクロにエッチすることを明言する。


「うん。いっぱい、いっぱい、してね。」


 よしっ。気付いていないみたいだ。


「ほらほら、モーちゃんに無理をさせないの。死に戻ったばかりで身体がきついはずよ。」


 身体がまる1日動かなかったせいか。上手く身体が動かない。まずは準備体操・・・と思ったら、マッチャさんが僕の身体を包み込んでくれる。


 身体が温かくなり、木の香りが頭の芯の重みまで取り去ってくれる。そして無理の無い程度に変形して、僕の身体を動かしてくれる。


『気持ち良さそうね。このまま、エッチする?』


 僕の身体の一部分に触れているところだけが温かくなってくる。口に触れていた部分から生暖かい舌が入り込んでくる。いつの間にか木の香りが違う香りにかわっている。


 気分がだんだんとエッチな気分に変わってくる気がする。ヤバイ。このまま、流されてしまう。あまりの快感に息が荒くなり、変な声が漏れてしまう。


「ねえ。大丈夫。背中さすろうか。」


 公爵令嬢の声と共に強烈な快感が襲ってくる。や、止めてっ!


???「リオーネったら王妃の座を捨てただけでなく王女だったはずの子供までお庭番にしてたのよ。」

そして延々と愚痴につき合わされるハメになった(汗)

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