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世界滅亡少女  作者: 岩戸 勇太
望愛を楽しませよう
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不本意ながら、コスプレ研究会に入部

「よう。今日もついてきてんのか?」

 家を出ると、玲一が待っていた。そして、熏晴もいた。熏晴に会うのは、もうちょっと先にしたかった。心の準備も兼ねてである。

「よう、玲一、そして、部長、おはようございます……」

 涼成は、苛立ちながらも言った。こんなやつに、こんな口をきかなければならないなんて、屈辱でしかないが、これから、熏晴の世話になるのだ。人として、礼儀を守っておかなければならない。

「なんだ? 俺は何も言ってないぞ……」

 きょとんとした顔をした熏晴は言う。

「お前の考えることは、予想済みって事だ。どうせ、『これからは俺に敬語を使え』とか、『俺の事を部長として敬え』だとか言うつもりだったんだろう?」

 玲一が言う。

「俺の事をなんだと思っているんだ……」

 熏晴は言う。

 だが、そんな事をいうのは今だけだ。少し経ったら、今の言葉などすっかり忘れて、玲一の予想通りのことを言い始めるはずである。

「俺がそんな事を言い始めるわけがないだろう。俺は心の広い熏晴様だぜ。いつもどおりに気楽に接しろよ」

 そう言う熏晴、そのセリフを言った直後に、熏晴は涼成の後ろを見た。

 後ろにいるサラの事を見たのだ。涼成は、熏晴がサラに気があることぐらい気づいているし、サラだって、それは感じているだろう。

 そして涼成は、サラがとても迷惑そうな顔をしているのを、感じ取った。

 それでも熏晴は、『あとひと押し』と、いった感じで、サラに猛烈なアピールをしてくる。

「望愛君。うちの事で何か分からない事があれば、なんでも聞いてくれ。頼りになる俺が、コスプレ研究会の事を、細かく教えてあげよう」

 そう言って、サラに猛烈なアピールを始める熏晴。

「熏晴さん、ありがとうございます……望愛の事をよろしくお願いします」

 そう言うサラ。それを聞くと、熏晴は、まるで天に昇った気持ちにでもなったかのようにして、両手を空に掲げた。

「こんな、分かりやすい反応をする奴は、初めて見たよ……」

 玲一はうんざりした感じで言う。涼成も、そう言いたかったところだが、熏晴の機嫌を損ねるのが嫌だったので、ぐっと、それを堪えた。

 後ろのサラを横目で見ると、『思いっきりうんざりした』といった感じで、頭を振っている。

『おい……サラはドン引きしてるぞ……』

 そう考えた涼成だが、その事には触れずに、熏晴に言う。

「放課後も、よろしくお願いします」

 そう言い、涼成は熏晴に向けて頭を下げた。

「熏晴もよろしく。一緒に、世界の滅亡を防いで欲しい」

 サラが熏晴に向けて言った。

『やっぱり、サラちゃんは空気を読んだか……』

 涼成は、サラの様子を見て、そう考える。サラの顔はピクピクして引きつっているのに、熏晴はそれに全く気づかなかった。サラがガマンをしている事に、全く気づいていないのだろう。

「とにかく、何か必要なものがあるなら、今にでも教えて欲しい。望愛を楽しませるためなら、なんでも協力をする」

 サラが言う。そう言うと、熏晴は「ふふん……」といった感じで、胸を反らせた。

「だったら、コミケを開催させる事とかできる?」

 熏晴が胸を反らしたのはこの考えがあるからだ。そう考えた涼成は思う。

「コスプレをやるなら、コミケだよ、コミケ。やっぱり、コスプレイヤーにとっては、一番のイベントだし、マンガの素晴らしさを知るためには、やっぱりコミケが一番だしね」

 熏晴は言う。それを聞いて、サラは思案するようにして顎に手を当てた。

「その話……ちょっと調べてみる」

 サラは言う。そして、サラは、先に歩いて、涼成の家の門を通っていった。

「熏晴、強力ありがと。これから、どうやってコミケを開くか? 考えてくる」

 サラは最後に熏晴に礼の言葉を言った。

 涼成の位置からでも見える。サラの顔はピクピク引き攣り、今の状況から、早く逃げ出したいと、思っているようであった。その証拠に、サラは、この場から逃げ出すようにして、早足で歩いて行っていたのだ。

 そのサラの姿を見送ると、熏晴は、何かの合図のように、ずれたメガネをかけ直した。

「涼成……これからは、俺の事は『部長』と呼ぶこと。そして、敬語を使って話せ。ただし、サラちゃんの前では、俺に気さくに話しかけろ。お前も空気ぐらいは読めるよな?」

 いきなりの変わり身を見せて、熏晴そう言い出す。

「ああ……分かっていましたとも」

 涼成はそう言って、熏晴に言葉を返した。

『やっぱりこいつはクズハルだ……』

 サラの前だから、俺にフレンドリーな態度をとったのである。

 まあ、こんな事はいつもの事だし、いまさらこいつを軽蔑する気は起きない。すでに涼成の熏晴に対する評価は最悪だ。

 これ以上悪くなりようがないという意味である。

 これには、玲一も、口を出さなかった。

「まあがんばりれよ。もしも何かあったら、俺も協力をするから……」

 玲一が言う。だが、この状況では、玲一にできる事は、何もなさそうだ。

「ああ、そう言ってくれるだけで嬉しいよ……」

 涼成は、そう言う。これから先には、涼成は不安しか感じなかった。


 涼成は、放課後になると、望愛を連れてコスプレ研究会に向かった。

 相変わらず、涼成に対する、周りの目は痛い。

『どうせ、普段と同じだろ? のぞきの常習犯なんだから、普段から女子には睨まれているんじゃ?』

 と、いう熏晴の言葉を思い出す涼成。

 自分のやったことで睨まれるのは、いいが、自分が何も悪くないのに睨まれるのは、ちがった気分の悪さがあるというものだ。

 だが、それを熏晴に言ったところで、『女子達から睨まれているって時点で、人間としては終わりな気がするがな』などと言い出す事だろう。

 涼成はそこまで、熏晴の事を分かっている自分に嫌気がさした。

 熏晴の軽蔑している事はともかくとして、涼成は熏晴の事をなんでも知っている親友なのだ。

 涼成は意を決して、コスプレ研究会の部室のドアを開けた。

「ふふん……待ってたよ」

 熏晴は、縫い物をしながら言う。

 ほかの部員達は、ミシンを使って、服を仕立てているところだった。

「今回は、君のおかげもあって、一大イベントが開かれる事になって感謝しているよ」

 熏晴は望愛に向けて言った。それに涼成も望愛もキョトンとした顔をした。

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