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オズ  作者: みえさん。
三章 海に棲む魔物
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「なんだ、ここは?」

 問いかけたレオの言葉に応える者はなかった。

 ヴィズの目を通して映し出された空間は紫色をしている。暗がりで体外ランプ一つで照らしているために見間違いかもしれないが、鍾乳洞のように見えて、そうでないことはレオでも容易に想像がついた。

 いや、過去は鍾乳洞だったかもしれないが、今は違うと言った方が正しいか。

「嬢ちゃん、こういうものは自然に存在するのか?」

「残念だけど、地質学は私の分野外なの」

 言って少女は肩をすくめる。

「だけど、もし私の想像が正しければここは……」

 どんっと船体が揺れる。

「きゃあっ!」

「うっっ!」

「うわっ!」

 三人がほぼ同時に悲鳴を上げた。シートベルトをしていなかったユマとレオは床に転がり、船体と繋がっていたドロシーはいくつかのケーブルを引きちぎられ険しい表情を作った。

 船内が暗転する。緊急用の薄暗い電灯だけが点灯した。

 何が起こったのか確認をする前にユマが通信用のスイッチを叩いた。

「ヴィズ! 聞こえる? ヴィズ!」

 ザーと言う砂嵐の音だけしか戻ってこない。

 ユマは椅子に座り直して自分を固定するとすぐさまキーボードを叩き始めた。

「レオ、ドロシーを繋ぎ直して! ドロシーは状況確認!」

「もうやってる!」

 叫ばれてレオもまた叫び返した。

 繋がるだけのケーブルをドロシーに繋ぎ直し、ちらりとモニタを確認する。損傷箇所を示すランプだけは点灯しているが、映像は映し出されてこない。椅子に座って身体を固定せずに分かる範囲で修復を始める。

「くそったれっ! こんな事ならもっと勉強しておくんだったぜっ!」

「泣き言は結構よ。レオ、照明弾の準備!」

「そっち方面なら任せておけ」

 言って彼は操縦席の方へ座る。

 ソフト面では役立たずだが、ハードの方なら役に立つだろう。緊急用のスイッチを押し電力を回復させ照明弾を出す準備をする。

「巨大な何かに襲撃を受けた。船体後方部分損壊、現時点で修復不可能」

 ドロシーの言葉にユマは頷くことで答える。

 バラバラと打ち込む音が激しくなったかと思うとモニタが回復する。暗い海の中が映されていた。ヴィズの方の映像の回復はしていない。

「照明弾!」

 言われすぐに発射する。

 海中を照らす明かりは暗く濁った海の中に巨大なウミヘビのような影を映し出した。レオは息を飲む。

 ユマの打つ手も一瞬止まった。

「……出やがった」

 巨大な影は放たれた照明弾に食いつきそれを打ち砕く。

 再び海に暗黒が戻った。

 レオは再び照明弾の準備をする。搭載しているのは二発のみ。魚雷などの武器になるものは限られている。あれと戦うことは不可能だと判断した。

「回避するぞ! 船長! 聞こえるか、出やがった!」

 ザーザーと音を立てる中で微かに船長が応じたのが聞き取れた。

 何を言ったのかは分からなかったが、こちらに何か起きたことは認識できたはずだ。出来るだけ遠くに逃げられればいい。小回りがきく分、潜水艇の方が逃げやすい。

「死んでやるつもりはないぜ」

 不敵に笑って操縦桿を握る。

「上方船体の移動を確認。Unknown、船体に向かって移動を開始」

「……てめぇ相手はこっちだ、化け物!」

 レーダーが回復した。

 映った反応を確かめて威嚇の射撃をする。

 どん、と鈍い音が響き、潜水艇を揺らす。レーダーに映し出された海竜の反応が再び進路を変える。狙いが再びこちらに戻った。

「回避!」

 叫んで操縦桿をひねる。それに反応して斜めになった潜水艇は海竜の脇をすり抜け後方に回り込む。がん、と鳴った音にレオは顔をしかめた。海竜の尾が船体を掠めたのだ。

「左舷損傷!」

 ドロシーの声にレオは舌打ちをした。

 思っていたより動きが早い。

 操縦桿を握る手が汗ばむ。

 最悪、ユマだけでも脱出用ポットに押し込んで逃がす。だが、まだ諦めるには早い。全員で逃げる手だてを考えなければ・・・

 瞬間。

「きゃあぁ!」

 船体への衝撃、ばち、という何かがはじけたような音。ドロシーの悲鳴。

 再び船内は暗転した。


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