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第4話:忍び寄る悪意

「えっ?もう完了したんですか!?」


アーネが驚くのも無理もないだろう。


正直、俺自身もこんなに早く終わるとは思っても見なかった。


って、レオがめっちゃどや顔しとる!


何あれ!めっちゃ可愛いんだが。


くそっ!この世界にスマホがあったら速攻で写真撮るのに!


脳内に焼き付けるしかないか。


…と言うよりも、男女別のテントみたいなので夜営したりするのかなぁ、レオと一緒にテントの中で寄り添って寝るのかなぁって楽しみにしていたのに…。


「俺もまさか、到着して話を聞いているときにブラッディベアが出てくるとは思わなかったさ。」


「あぁ、ユーキの言う通り俺も本気で焦ったぜ!」


本当に、本当に俺の期待を返して欲しい。


結局日帰りだし、宿の部屋は別々だし…。


ブラッディベアめ!許さん!


…まぁ俺が真っ二つにしたんだけど。


「いえ、ブラッディベアが現れたとしてもすぐに倒せるのはおかしいですからね?普通は罠を設置したり少しずつダメージを与えていって、それでも3日間くらいはかかるんですよ?ブラッディベアはその巨体の攻撃力もさることながら、刃を通さない強靭な毛皮と無尽蔵な体力が恐ろしいんですから。」


ん?そっち?


てか、スッゴいキレイに真っ二つにしちゃったけど…。


「レオが頑張ってくれたからな。」


「ははっ!アーネさんにもあの時の俺の活躍を見て欲しかったぜ!」


…あの時のレオはカッコ良かった!


俺を守るために必死になってくれたし、なんかこう…俺、愛されてるなぁって感じられたなぁ。


「ふふっ、それは残念ですね。ではクエスト完了しました。これが今回の達成報酬です。またよろしくお願いしますね!」


「ああ、こちらこそ。」


アーネとクエストの話が終わるとレオがアーネに話しかけた。


「アーネさん!そう言えば、他のBランク以上の冒険者パーティーはいつぐらいに戻ってくるんだ?俺たちだけでこんな依頼を毎回受けてたら回らないぜ?」


ああ、確かにそうだな。


今回はたまたま人的被害が無かったが、それは運が良かっただけだ。


複数のクエストが重なると、ひとつを受けている間にもうひとつの問題が悪化する可能性もある。


「それが…いつ戻ってくるのかがわからないんです。ギルドマスターが王国に抗議したのですが、侯爵の行いを王家の皆様も知らなかったようで…。肝心の侯爵も王都を離れていまして連絡がとれていないのです。」


「侯爵のヤロー迷惑かけやがって…。ありがとうアーネさん!くそっ!侯爵のヤツには急速に禿げる呪いでもかけてやる!」


…レオのヤツ、かなり不満が溜まってるな。


「そうだ、アーネさん!これから俺達、クエスト完了の打ち上げをするんだけど、アーネさんも仕事が終わったら来ないかい?」


な…!レオ!何を言ってるんだ!


「うーん、じゃあお邪魔しちゃいましょうか!」


「よっしゃー!美人が来るからユーキも嬉しいだろ♪」


なんだとー!全然嬉しくねぇよ!


アーネも断れよ!レオの顔見ろよ!カッコいいだろ!…じゃなかった、下心満載だろ!


「ああ、そうだな…」


レオのヤツ、余計なことを!


「ふふっ、ユーキさんとお話したかったんですよ♪」


本当にやめて…。レオが俺をめっちゃ睨んでるじゃねぇか!


…睨んだ顔のレオもカッコいいな…。



……


「じゃあ、まさかの当日のクエスト完了に…」


「「「「「乾ー杯!」」」」」


「アーネさんも来てくれてありがとう!」


「いえいえ、こちらこそ誘っていただけて嬉しいです!」


打ち上げが始まった。


まぁ、レオのストレス発散になるし、アーネが来るのは許容しよう。


だが、なぜ俺とレオの間にアーネが入ってきてるんだ?


邪魔!めっちゃ邪魔!レオの横顔を見ながら飲めないだろ!


「そう言えばユーキさんはどこから来たんですか?」


アーネが俺に話しかけて来る。ついでにレオが俺を睨んでくる。


「ああ、ちょっと山奥からな…」


しかも、答えにくい内容を…。


「あ、すみません!言いたくなければ言わなくて良いです!黒髪・黒目が珍しいなぁって思いまして。」


「そうなのか?」


…確かに黒髪・黒目は見かけないな…。


「ええ、この辺りだと勇者様のご子孫の王家の方が黒髪・黒目で、他は王家の血を引く貴族家の方でも黒髪か黒目のどちらかくらいしかいらっしゃらないんですよ。」


「ふ…ふーん、そうなんだー…」


おぅふ!なにそれ!え?ヤバくない?


「そうなんですよー。だから、この辺りじゃなくてもっと遠い所からいらっしゃったのかなぁって。無理に聞くつもりは無かったんです。すみませんでした。」


「いや、かまわない。俺も拾われたから、よくわからないんだ。」


…焦ったー!異世界から来たのがバレたと思った!


でも、そうだったのか…。通りでギルマスと初めて会ったときに色々と聞かれたのか!


おそらく、王家との繋がりを疑われたんだろうな。


「ふふふ、案外ユーキさんは勇者様と同じ所から来たのかも知れませんね。こんなにお強いんですから。」


「だとしたら光栄だな。」


アカーン!まさかの大正解!


…冗談だよね?冗談で言っただけだよね?カマかけたんじゃないよね?


「ふふっ♪登録の時はビックリしたんですよー。だって………」


…動揺を隠すのに精一杯だった俺は、その後の話は全然耳に入らなかった。


顔に出さなかっただけ、俺すごくない?



****


『私の話を聞き役に徹してくれて嬉しいなぁ。このクールな感じが結構好きかも!あの時は驚いたけど、酔っ払い冒険者に絡まれたときも私を庇ってくれたのにすごく自然体だし…』


アーネはユーキの動揺に気付かずにそんなことを思っていたのだった。



****


<王城にて>


王や宰相とギルドマスター等の限られた人物達が話をしていた。


「侯爵の潜伏先の特定はまだか?」


「まだ判明しておりません。ですが、侯爵の娘が学園で何やら問題を起こしていたようで、誰かの暗殺計画まで出ているようです。」


「あの一族は…!」


「こちらでの調査では侯爵家の不正の証拠を掴みました。巧妙に隠されていましたが、国に納める税をどこかに横流ししていた様です。」


「侯爵が怪しい人物と繋がっているとの話も。噂の中には魔族と繋がっている等と言うホラ話まで出てくる始末です。」


「なんにせよ、これでヤツの容疑が決まったな。ヤツは国家反逆罪だ。見つけ次第捕らえて処刑だ。」


「くそっ!優秀な冒険者を大量に連れ出しただけでなく余計なことばかりしおって…!」


「ギルドマスター殿、すまぬがもう少し時間をいただきたい。こちらでも可能な限り支援させていただきますので。」


「難しいとはわかってはいますが…急いでください。優秀な冒険者でなければ解決できない問題もありますゆえ。支援に関しては感謝します。」


「うむ。ではまた次の報告で。」


****


翌朝ギルドに行くとギルマスに会った。


相変わらず渋いぜ!


ただ、疲れた様子だな。


「おお、ユーキか!昨日はクエストを受けてくれて感謝する。」


「いや、仕方なかったのはこちらも承知している。それよりも、ギルドマスターも疲れているようだな?」


よしっ!感謝されました!この調子で好感度を上げなければ!


「あの侯爵の行方がまだ掴めなくてな。おかげてギルドの業務も滞っておる。本当に余計なことを!」


まだ侯爵の行方が掴めていないようだな。と言うことはまだ冒険者たちは戻ってこないのか。


「まぁ俺としてもなるべく力を貸そう。俺達しかBランクパーティーが居ないしな。」


そんなに頻繁に大事は起こらないだろうが、こう言っておけば好感度が上がるだろう。


あ、むしろマッサージしてやろうか?


も、も、も、もちろん、い、いかがわしいことはしないぞ!純粋に疲れを取ってやろうとだな…。


でも、マッサージしてるときに筋肉触ってコリをほぐしたりするのは仕方ないよな!


ちゃんとコリをほぐすために、上半身も裸になってもらうのも仕方ないんだ!ちゃんと疲れているところを見つけるためなんだ!あくまでもマッサージするために仕方ないんだ!


そしてマッサージに気持ちよくなってきてお互いの気持ちも高まってきて…つい熱くなっちゃう可能性もゼロじゃないよな!


うん。これ、めっちゃ良い案じゃないだろうか?


「あ、もし良かったら…」


「ふむ、ではまた頼みたいクエストがあるのだが…」


あれ?クエストあるの?マッサージは?全身しっかり丁寧にマッサージするよ?


その後の数日、俺達はギルマスからの指名依頼を片付けるため、様々なクエストを受けさせられた。


もちろんマッサージは出来ていない。


…。


…ちょっと調子に乗りすぎたようだ。



****


<???>


「まだ準備は出来んのか!」


「黙れ侯爵!こちらも時間がかかるのだ。それよりもわからないのが、時間稼ぎとしてオーガ亜種やブラッディベアを王都近くに呼び出したのに討伐されたようだ。」


「なに?」


「侯爵よ、本当にBランク以上の冒険者どもを全て雇って別の場所に向かわせたのだろうな?」


「ふざけるな!お前が全てと言ったから、ちゃんと全て雇ったのだ!おかげで、王国の国庫から集めていた隠し財産の半分を消費したではないか!」


「では何故だ…?あのクラスの魔物を討伐できる人材が王都にいるというのか?」


「話をちゃんと聞かんか!約束通り私をこの国の王にしてくれるのだろうな?そのためにお前に協力をしているのだぞ!」


「ふん、王や公爵共が死んだ後は好きにすれば良い。私はあの忌ま忌ましい血を受け継ぐ王家を根絶やしに出来れば良いだけだ。」


「ふはは、ついに私が王だ。おぉ、そうだ!私の娘から言われておったな。お前には直接殺してもらいたい娘がいるのだ。ついでに王女もまとめて殺してくれ。」


「黒髪・黒目の少女か…。こいつも王家の関係者か?」


「知らん。最近伯爵の養女となった素性の知れん下民だ。だが、王子の婚約者になった様でな。邪魔だから殺せ。」


「ふむ、念のために殺しておくか。」


こうして王都の騒乱の舞台は整っていく…。

次回で物語がクライマックスに向けて動きます!


ちなみに、黒髪・黒目の少女はユーキと全く関係ありませんw

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