第二十五話
ぜぇ~、ぜぇ~、ちょう疲れたよ。
あの偽妹、すっごい追ってくるんだもん。死ぬかと思った。
あれはガチキチガイですよ、奥さん、目がいってましたね。
ああいうのに関わってはダメですよ、身の破滅です。
って、俺は何してるんだ!
そうだ東堂さんの身辺警備的ストーカーを実行していたんだ。
完全に見失った、あの偽妹のせいで。俺の妹がこんなにキチガイであるはずがない!
どうっすかな。
この際、東堂さんは諦めて他のメンバーのとこ行くか。
とりま、河合さんはハードル高いから、徹君か埼玉君に辺りにしよう。あまり仲良くないけど、昨日いっしょに穴掘ったから、穴友だからいいだろう。この響き、エロいな!
ということでさくさく歩き、数十分。
とある料理店に到着、場所自体は昨日東堂さんに聞いていた。
では、ウォッチ開始!
さくっと店を窓から覗くと、おっ、彼は厨房で働いているようだ。
鍋を翻しながら、チャーハンつくってますね。中々手慣れた様子。
仲間のコックともいい感じにコミュってます。埼玉君はそういうの上手そうだからね。
おっ、かわいい子発見。その子が埼玉君に近づき、んん?彼の尻を摩る。
あれ?埼玉君、ちっこい女の子にお尻摩られてる。なんですと!
そうされながらも鍋でチャーハンを炒める彼。女の子はもっと過激になって、尻穴にゆびをいれるような仕草。うっほ!
なんだあの女、やばいぞ、あの子。埼玉君の腕が震えとる。
なんだセクハラか、それとも、そういう関係か。
ちょっとここはまずそうですな~。
そうだ、逃げよう、見なかったことにしよう。そうしよう、それがいい。
さっとその場を後にしようとしたが、不意に振り返った埼玉君と目が合ってしまった。
反射的にとりあえず手を振る俺。
彼の視線に気づき、尻を撫でまわしていた女の子もこちらを向く。
さっと埼玉君から手を離す。
「おっす」という風に口を開け、こちらに手を振りくいくいっと手首を動かす彼。
どうやら「中に入れば?」という事らしい。
無視する訳にもいかず、俺は店内に入った。
空いている席に促されて座ると、彼と女の子がテーブルにくる。
仲良さげな二人、というか一方的に女の子が埼玉君に懐いているような気がする。
わさわさと彼の服の裾を握って引っ張っている。
これが初対面なら、「なんてかわいい子!」っと思うけど、あの尻触り場面を見た後では、逆に怖い。歳の差が離れたカップルを街で見かけた時のそれと似ている。あのなんともいえない、もんもんとした気持ち。
「どしたん?クッキー」
いつもの調子の埼玉君。
まるで先程の尻を撫でられたことなどないようなその笑顔。
「えっと、街を散歩・・・かな」
「へぇ~、そうなんだ。ちな、どこいったの?」
「えっと、屋台で焼き鳥食べて・・・」
先程の尻の件には触れず、当たり障りのないの会話に終始する。
埼玉君の尻をまさぐっていた女の子も何故か熱心に俺の話を聞いている。
というか、俺、ものすっごい見られている。
思わず、尻の穴がきゅっとしまる。何故だろうか?
それに埼玉君が気づいたのか、彼女の背中をそっと押す。
「あっ、この子、オーナーの娘さんのレイスちゃん」
「よろっ!」っと俺に挨拶する尻娘。
ほ~う、そういう事ですか。
オーナーの娘なら断れませんな、軽いいたずらとして受け流しているのですな、埼玉君あ大人ですな。
小さい子は何にでも興味を持つし、狭いとこに色々入れたがりますからね。
何をどこにとは言いませんがね。
「よっす」っととりあえず挨拶を返す。
手の動作も付けて頭の横に上げると、少女がこちらに手を伸ばす。
握手かと手を伸ばすが、少女はひょこひょこ動き、俺の背後に回り込む。
しまった!
裏を取られたっと思った瞬間、僅かに臀部に感じる感覚。
尻をまさぐられ、ぞわりとした感覚が脊髄をかけめぐる。
がっ、すぐに腰を動かし、手で女の子の腕を払う。
「こらこら、レイス、だめだよ」
埼玉君が女の子を引き寄せると、俺の方を見て、「駄尻ね」っと呟くレイスちゃん。
あれ?俺、今、けなされたのかな。
いきなり尻を触られて、何故か罵倒されたのかな?おかしいなぁ~。
そんなことあるわけないと思うんだけど。
ちょっと意味わかりませんね、私には理解不能ですよ。
「駄尻だからもう触らないもん、ほら」
そういって埼玉君の尻をさするレイスちゃん。
どうやら尻の触り心地評価では、「俺の尻<埼玉君の尻」のようだ。
べ、べつに悔しくないからね。一位じゃなくてもいいから!オンリーワンが大事なんだ。
「ちょ、だめだって」
「あなちょー、あなちょー」
謎の呪文を呟くレイスちゃん。
この手の部族用語は妹で慣れている。
多分、「穴に指いれさて、ちょーだい」の略であろう。彼の尻穴?に向かう手の動きでそれを察する。
「いや、だめっしょ」
「あなちょー、あなちょー」
さっとレイスちゃんの手を払う埼玉君。
頬を膨らまし、むくれる少女。
俺がその光景に目を奪われていると、
埼玉君が苦笑いでこっちを見ている。
「くっきー、これ、違うっしょ」
何が違うのかは、なんとなく分かった。
きっと、色々違うんだろう、知的探究心豊富な少女と優しいお兄さんの心温まる交流と、良い方に納得する。
「埼玉~、あなちょーさせてくれないと、お父さんにいいつけるもん」
ビクッと震える埼玉君。
その隙を突いて、レイスちゃんは彼の尻をさすると、その顔に溢れる満足そうな表情。
充実感溢れる表情とは、まさにあれですね!
俺は先程からずっとこの建物から出て行きたいのだが、中々そのタイミングを掴めずにいた。いたたまれない様子の埼玉君、苦笑いを顔に張り付いている。
「えっと、良く分からないけど。分かった。皆には言わないから」
「ありっしょ。ほら、レイスも、もういいだろ」
「あなちょー、あなちょー」
女の子をさっと払う埼玉君。
彼女は満足したのか、それに従った。
そして何故か俺を見る。
「誰?」
そう呟き、唇に指を持っていき、頭をコテンっと横に倒す彼女。
倒しすぎて、耳が肩についているその柔軟性。まるで妖怪だ。
まるで、初めて俺を見たかのような表情。
え?俺。
えええええええええええええええ!
っておかしいだろ。
いや、さっきからずっとここにいましたよ。
あなたに尻を触られて「駄尻」と評価された田中狗壱ですよ。
因みに尻穴は未私用ですよ。
「埼玉君の仲間の田中狗壱です」
「そっ」
誰かさんのようにそっけない態度の女の子。
何故かその態度に落胆する。べつに彼女に好かれたいという気持ちなどないが、なんとなくね。
女の子はコテンと倒した顔のまま、
「あなちょー、くっきーのあなちょー見せて」
「んん?」
「ちょ、レイス」
ちょっと意味が分かりませんね。
一体何をいってるかさっぱりですね、誰か翻訳して頂けないでしょうか、っという視線を埼玉君に送る。
申し訳なさそうに視線を返す彼。
んん?あの、その「しょうがないから、よろしく」みたいな目線が少し怖いんですけど。
私に何をさせる気ですかな、埼玉君は。
「あなちょー、あなちょー、見せて」
謎の言語を発する女の子。
「えっと、埼玉君、この子、なんていってるの?」
「え、うん。ぶんただけど、、尻の穴見せてって意味っしょ」
はい?何を昼からいってるんですか。
座薬でもいれてくださるのかな?あいにく私は便秘でもありませんよ。
健康体ですがね。
「レイスちゃん、それは無理かな」
優しいお兄さん風に語りかける。
「あなちょー、あなちょー、見せて」
この餓鬼、するっと無視しました。
そのつぶらな瞳で、埼玉君を不安げな表情で見る。
「埼玉~、埼玉~」
そんなことを呟きながら、彼の服をぐいぐい引っ張る彼女。
その無邪気な表情に思わず心が動かされそうになる。
まるで俺が何か悪い事でもしたかのような雰囲気になる。
なにもしてないはず!「尻の穴を見せるのを断る」という、全うな事をしただけのはず。
断じて間違った事はしていないはず。
埼玉君は苦笑いしながら俺を見る。
え、あの、その笑いはなんですかな・・・誠に!
「くっきー、ちょ、悪いけど、少し、少しだけよろできない?先っぽだけいいから」
少しだけ尻の穴、先っぽ、よく分かりませんね。ちょっと意味が分かりませんよ。
埼玉君の苦しい笑顔を見ていると、彼が困っているのは分かるけど、やっぱりよく分かりませんね。
「それは、さすがに・・・ちょっと無理かな。先っぽって、良く分からないし」
「だよね~。レイス、お魚のお尻で我慢しよう。冷凍庫に、大きなのあるから」
激しく頭を振る女の子、髪がふわっと揺らめく柔らかそうな髪。
良く手入れされているだろうその髪。
「あなちょー、あなちょー、くっきーのあなちょー」
意外と頑固なようですね、この女の子。
それを見てますます複雑な笑顔になる埼玉君。
「くっきー、やっぱ、先っぽ、無理な感じ?」
「・・・うん」
私の尻は安くありませんよ。
高級な未使用品ですから。
「あなちょー、あなちょー」
さっきから呪文のように呟く女の子。
これはもう、どうにもならないだろう。
しょうがない、それならば。
俺は腰の天使の袋からとある本を取り出す。
そしてペンを持ち、本を開き絵を描き始める。
その様子を眺める二人。
「ど、どしたん?くっきー」
「あんちょー?」
「ちょっと待って、もう少しだから」
「あ、うん」
「あん・ちょー?」
俺は脳のハードディスクに保存されている絵を思い出すようにして、スケッチを続ける。
そして出来上がった一つの絵。
それにペンを当てて唱える。
「――ドロップ――」
すると、本の中から出てくる、手のひらサイズに収まる肌色の物体。
それをレイスちゃんに渡す。
「これで我慢して」
目を輝かせて、それを受け取る彼女。
それは、とある傑作エロ漫画でみた美尻を書いたもの。
そのあまりの素晴らしさに何度も絵をトレースしたため、すぐに書くことが出来た。
手のひらサイズの美尻だ。
「ちょ、くっきー、なにそれ?うぇ?」
めちゃくちゃビビってる埼玉君とは反対に、レイスちゃんはその尻の眺め、尻穴を指でつついている。
「ぷにぷに」っと呟きながらつつく彼女、それに合わせて揺れる手乗り尻。
その動きから、その尻の完成度の高さを伺える。
初めてこの本を使用したが、上手く機能したようだ。
よかった。本物の尻の感触をイメージしたので、そちらも問題ないはずだ。
さぞ、尻狂いのレイスちゃんは満足する事だろう。
彼女は一通り手乗り尻をまさぐった後、満面の笑みを浮かべながら去って行った。
これで一件落着。又、良い事をしてしまった。
「ちょ、ちょ、ちょ、くっきー、どういうこと?まじ、うぇ、よく分かんねぇ」
テンパってる埼玉君。
尻を触られることに慣れているようだが、尻が本からで出てくる事には慣れないようだ。
そういえば、この能力は誰にも説明してなかった。
そのうちしようかとは思っていたけど、まずは能力を試したかった。
いきなり説明して、上手くいかなかったらあれだから。そんなガッカリ発表には耐えられませんがな。
「俺の能力かな。皆も何か貰ってると思うけど」
「うぇ、そ、そんだけど、くっきー、まじチート。俺らのそれと、ダンチだから」
ほ~う、あの天使の言う通りか。
彼らに能力はあるが、まだ十分に成長していないのだろう。
「そうなんだ。でも、すぐに皆のも成長するよ」
多分、そのはずだ。問題は、どうやって成長させるかだが。
恐らく、モンスターを倒した経験値的なもので成長するのだろう。
「そんだといいんだけどね~、中々大変っしょ」
てっきり、「やるよ、やっちゃいますよ!うぇ~い」的な返しが来るかと思いきや、わりと現実的な埼玉君。
なんだかんだいってこのパーティーの中で一番の常識人な感じもしなくない。
「あっ、やべ、ちょ、長話し。もう、厨房戻るわ」
「うん、じゃあね」
「ちゃら~す」
そういって厨房に戻っていく彼。
俺は料理と注文して食し、店を後にした。
中々美味だった。




