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第二十三話

 夜、街の外の森のどこか。

 私にはどこか分からないけど、徹君が知っているはず。


 星空が照らす暗闇の中、俺達は宿からここまで歩いて来た。

 真っ暗闇の道を月明かりを頼りに歩いて来た。


 コンビニに屯する不良が如く、魔物は明かりに寄ってくる傾向があるらしく、光を放つ魔道具は使用しなかった。そのため暗闇の中を、徹君を先頭に進む。


 彼の歩みに迷いはない。完ぺきに道を覚えているようで、暗い森の中を迷うことなく進んでいく。その凛とした足さばきに不安を感じることはなかった。


 前を歩く埼玉君の背中に「魔物反対!」っと書かれたシールが張られている。

 別に俺が小学生のいたずらのように背中にセロテープを貼った訳ではない。これは魔よけの札で、魔物が嫌がる匂いを発するらしい。


 す~っと鼻を突くような匂いがするぐらいで、他はステッカーと変わらない。

 まぁ、そんな物を皆背中に貼っているわけですよ、勿論俺も貼っています。


 皆がビクビクキョロキョロし、細心の注意を払って進む。

 先頭の徹君も常に周りを伺っている。


 俺はというと、あまり恐怖感がなく、それよりも皆で夜の森を歩くワクワクの方がまさっていた。

 女の子と夜の森を歩くとか、ワクワクが止まらない。

 いや、特に何かあるわけじゃないんだけど、何故かテンションが上がってきて歌いだしたい気分だった。それに月明かりで照らされた河合さんの顔は新鮮だった。いつも可愛いが、今のその姿は綺麗だった。

 東堂さんもムーン効果でそこそこよかったが、目線が合うと、「ギッ」っと睨まれた。

 え?何で?何故に?っと思ったが、目線をそらした。


 おかしいな。お互いの気持ち?を確認して手を繋いだはずなのに、その後の変化は全くなかった。振出しに戻るの巻。あれは俺の夢だったのではないかと思うぐらい。


 そんな事を考えていたが、別に気を抜いている訳ではない、一応準備はしていた。

 天使から奪った袋の中をあさり、それっぽい武器は確認している。特に、手榴弾のような物は中々使えるのではないかと思っていて、早く魔物に試したくてうずうずしていた。


 魔物が襲ってこないかな~っと、今からやること全否定の事を考えていたりもする。


 すると、徹君の足が止まる。

 手を上に上げ、下ろす。


「ここに穴を掘る」


 囁くような徹君の声。


 どうやら目的の場所についたようだ。

 なんてことのない森の中だ。だが徹君が選んだからには何か理由があるのだろう。

 ここに魔物の子供をおびき寄せるのだから、それに適した条件を兼ね揃えているのだろう。暗くてよく分からないが。


 俺は天使の袋からスコップを取り出す。

 

 宿で徹君が用意していたスコップを小袋に収納していた。

 この袋の存在にめちゃくちゃびびっていた徹君だった。


 何でもこれは、冒険者が持っている高価なアイテム「アイテムボックス」らしい。

 一般人には高くて手が届かないと。

 

 という事で、色々な備品を袋に入れることになった。

 今いち容量は分からないが特に問題なかった。 


 スコップが皆にいきわたると、 


「掘るよ」

「うん」


 俺達は地面を掘り始めた。


 カツ、カツ、という音が響く。

 さらに、カツ、カツという音が響く。

 

 土を削ってどんどん上に盛っていく。

 そうして穴を掘っていきますよ。


 えっしょい、よっこい、どっこら。わっしょい、えっしょい。

 そうして土を掘って行きますよ。


 どっこい、どっこい、えっしょい、わっしょい、わっしょい。

 土を掘り進めます。


 よっこらせ、どっこらせ、おってほらせ、どっこいしょ。

 掘り掘りしていきます。


「皆、頑張ろう」

「「「「「おう」」」」」


 お気づきだろうか、この「おう」に私も入ってますよ、ニヤリ。

 最早俺は完全なリア充になってしまったのです。

 あぁ~、ぼっちが懐かしい。


 遠くで、集団でがやがやしている奴を眺めて、「けっ」「くっ」「ぺっ」っと心の中で唾を吐いていた時期が懐かしい!誠に!誠に!ああいう侮蔑も乙なものがあるけど、こっちも中々いいですな。


 河合さんもスコップで土を掘っている。

 ほっぺについた土がかわいい、それを拭いてあげたい、綺麗にしてあげたい。

 でも東堂さんがいるからそれはできない、くぅ~! 


 埼玉君も徹君もがっつり掘り進めてますよ、頑張っていまっする。

 働く男ですなぁ~、その姿はみていて気持ちがいい。

 ガテン系の男っぽくて似合いますな。


 それに、口では色々言っていた東堂さんも、なんだかんだいってちゃっかりスコップ持って穴を掘っている。意外に真面目なその姿に胸キュンですよ。

 

 そんなこんなで俺も掘るよ!ガンガン掘り進めますから。

 手にマメができちゃうぐらいだよ!ふっふー!


 深夜に体を動かして体温が上昇しているからか、妙なハイテンションになってきた。

 パーティーの一体感が急速に上がり、それまで合った壁の様なもの取り払われていく。


 おや!何かスコップの先にあたりましたよ。これはお宝かな?

 ワクワクが止まらない、ワクワクさんだよ!


「リーダー、何かにあたりました!」

「そうか、皆手を止めてくれ」


 徹君の声でさっと動きが止まるパーティー。

 連携二重〇、よし!。


 徹君が俺のスコップが突いた先、石らしき物に触る。


「これは!!」

「な、なんなんですか、隊長?」


「石だ」

「ほう」


 知っていましたよ。

 まぁ、石じゃないかかと思っていました。

 ちょっと乗っかってみました。


「これ以上は掘り進められないかもしれないな」

「そうですかな、この私に考えが御座います」


 そうです。実はこの私に秘策があるのです。

 とっておきの方法、これで全ての解決の方法が。


「田中君、それ、本当かい?」

「ええ、誠でございます」


 誠に誠でございます。

 正真正銘の本気でございます。 


「その方法とは?」

「はい、石を破壊するのです」


 そうです、ブレイクするのです。

 ストーンブレイクですぞ、石を割っちゃうのです。


「して、その方法は?」

「分かりませんかな、こうするのですよ」


 徹君もテンションが上がっているのか、ちょっと言葉づかいが変わっておられる。

 

 俺はそれに気をよくして石の上に乗ると、皆の「?」という視線が集まる。

 分からぬか?盲人たちよ。さすれば仕方がない。

 我のムーブを見せて進ぜよう。括目せよ!


「こうやるんです」


 石の上で飛び跳ねる。

 そう、石の上でジャンプする、それが解決方法。

 ピョンピョン意思の上で飛び跳ねる。 


「それに何の意味が?」

「そんなものはない」


 そう、これはブラフ。

 ただの嘘。誰に対してのそれかは分からないが、とりあえず石の上でジャンプしたかった。スコップでの穴掘りで、身体が火照っていた。


「まことか!」

「はい」


 おっ、徹君もノリノリですな。

 我も負けてはおられませんな。

 テンションで負けるわけにはいかない、絶対に。


「それでは空けの様だ」

「ですね。でも、その空けが石を動かしてみせましょう」


 そう、不可能を可能にしてみせましょう。

 それが私の能力、私のスペシャル。


「ほう」

「ご覧あれ」


 腰の小さな袋を手に持ち入り口を広げていく、すると袋に石が吸い込まれていく。

 

 そう、あの天使にもらった袋を使って解決。

 因みに意思の上でジャンプは本当に意味ないですよ。

 あれは演出よ。いきなり袋に入れてもかっこわるいでしょ。


「よし、障害は消えた!いっきににやろう」

「そうだね」


 えっこらしょ、どっこいしょ、どんぶらこ。

 土を掘り進める。


 どっこいしょ、えっこいしょ、しょしょしょ。

 もっと土を掘る。


 はいよ、こいよ、ええこらしょ。

 もっともっと土を掘る。


「これでいいかな?」

「もうそろもそろ、いいかもしれない」


 気づくとかなりの大きさの穴ができていた。

 これなら、マンモスでも落とせると思う。

 なんでもドーンとこいよ。


「そうですね。やりましたね」

「うぇ~い、徹君、うえぇ~い」


 皆でハイタッチ、土の汚れなど気にせず触れ合う、うぇ~い。

 どさくさに紛れて河合さんともハイタッチ。その柔らかな一瞬の感触を記憶する。

 東堂さんにギロ目されたけど気にしない、気にしない。


 やったね、穴をついに掘ったよ。

 何かを達成するのは気持ちいい、さわやかな気分。

 湧き上がってくる充実感で頭が沸いてくる。


 その気分に呼応するように、気が付くと朝日が昇っていた。

 どうやら夜通し掘っていたようだ、そんな長い間ほっているとは思わなかった。


「よし、今日はこれぐらいで帰ろうか!」

「かえって少し寝よう。仕事まで2時間は寝れるだろう」


「ですな」

「いいですな」


「それでは帰宅!」

「「「「「おー」」」」」


 夜通しの穴掘り作業で、異様なハイテンションになった俺達はくたくたになった体を休めるために帰宅した。いい汗かいた、作業の夜。

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