2.北海道冒険記 〜目指せ道北美深町〜
夜の新千歳空港は閑散としていた。
夏とはいえ肌寒く薄暗い。
もの寂しい雰囲気を携え、静かに旅人達を受け入れていた。
「ひっろ!!」
空港から札幌駅へ移動し、降り立つ北の大地は『デカかった』。
まずもって空が広い。
一等地の駅前とは思えないほど道が奥横に広く。
とはいえ田舎というわけでもなく。多くの人らで賑わっていた。
三宮や大阪、東京にも遊びに行ったことはあるけれど。札幌はそのどれとも違う。
一言でいうのならスケールが桁外れなのだ。
なんせ土地が広いから、上へ上へと階を伸ばすことも、母の作る弁当のようにぎゅうぎゅうと建物を詰める必要もない。
広い砂場で自由な発想の元作られた理想の街だ。
だが僕の目的は観光でない。
(観光する金がない)
散策もほどほどに、二十四時間経営の某ファミリーレストランで夜を明かし。一気に北上を開始した。
その距離なんと二百キロ以上。北海道を地域別に区切ったとき、道北と呼ばれる場所であり。日本列島の頭あたりに、僕がお世話になる牧場があるのだ。
スマホがないためどの電車に乗って、どの駅で乗り換えや下車をするのかわからない。
性格上計画立てて旅行することもないため、事前のチャートも組めていない。
結果全ての要所要所で、人に道順を尋ねるというパワープレイに打って出た。
旅の恥はかき捨てである、惜しげもなく人を頼った。
数時間の格闘の末、最寄り駅まではどうにかたどり着くことができた。
札幌から離れた窓の外の景色は、おそろしいほどのどかで。壮大な緑が果てまで広がっていて。とても同じ日本とは思えなかった。感動した。
JR『美深駅』
時計塔の壮大な音色が、町中に響き渡る。
問題はここからだ。なんとその最寄り駅、最寄りとはいえ牧場から『徒歩二時間分』も離れていたのだ。その恐ろしさを知るのは、しばし先の話である。
駅に到着し、公衆電話で牧場に一報を入れると、牧場主さんが車で迎えにきてくれることになった。
(ちなみに、ジャブ的な挨拶として、白い恋人ならぬ『面白い恋人』を渡すというボケをかましてみたのだが、牧場主さんの反応は芳しくなかった)
かくしてスマホなし計画性なしの未成年であっても。
関西から道北の牧場へ、一人でも行けてしまえたのだった。
この成功体験は、良くも悪くも今後の人生に大きく影響してしまうことになる。
なにせなんとかなる理論でなんとかなっちゃったのだ。
見切り発車な人生により拍車がかかった。
この旅路は僕という人格を形成する、明確なターニングポイントになったと思う。
旅というより、もはや冒険だったが。




