第4話 4. 逆翻訳とチェック
本題に入る前に、すべての読者の皆様に二週間も姿を消してしまっていたことをお詫び申し上げます。
今月は急な仕事が洪水のように押し寄せてきて、生活のあらゆる時間をほとんど取られてしまいました。
仕事はもう少し長引くかもしれませんが、これからは時間をより上手にやりくりしていけるよう努めます。
この段階は、翻訳作業の中で最も難しくて時間がかかるステップです。
それは、意味の確認と文脈のチェックを行う段階なのです。
どうして文脈まで確認しなければならないのでしょうか? 意味だけわかれば十分ではないのですか?
最初に始めた頃、僕はとても単純に考えていました。
ただ日本語版を逆に翻訳して、文章が一致しているかをチェックすれば十分ではないかと。
その考え方が、最初の頃の僕の作業をめちゃくちゃにしてしまったのです。
これは、タイ語には同じ意味のままさまざまな文脈で使える文が多いからです。
一方で日本語には、内容の文脈に応じて表現を変えなければならない文がたくさんあります。
そのため、一部に翻訳した際に文脈や状況に合わない意味になってしまう文があります。例えば、公式な報告と非公式な報告の文などです。
例えば【本日】と【今日】は、フォーマリティのレベルを示すためのものですが、タイ語では【วันนี้】、英語では【today】のようにレベルを区別せずに使います。
この点をしっかり確認しないと、ニュース報道の原稿では、ニュースキャスターが【今日は】という言葉を使って読んでしまう可能性もあります。
(※現在はこの部分をある程度目視で修正できるようになりました)
さて、次は手順を見ていきましょう。
この段階では、AI2 と AI3/AI4 を使用します。
つまり Gemini と GPT/Claude です。
二つの AI を使用する理由は、逆翻訳された文章が希望通りのものかどうかを確実に確認するためです。
一つだけだと誤りが発生する可能性があり、その場合は誤りを特定することができません。
そのため、二つを使って一度にダブルチェックを行うのです。
今回のプロンプトは、たった三つだけです。
一つ目は、Grokにしたのと同じようにペルソナを指定しますが、そこまで詳細で厳格にする必要はありません。
二つの AI は攻撃的な表現をする傾向がないからです。
ただ、指示を拒否しないように伝えておけば十分です。
二つ目は、送った文章を、原文の文字通りそのままの言語で翻訳するよう指示します。
僕たちはすでに文脈と内容を把握しているので、そこまで神経質になる必要はありません。
翻訳されたものが原文と一致しているかを確認するだけで十分です。
そして三つ目は、AI に対してユーザーとの応答部分は自分の言語のままにするよう指示することです。
翻訳を逆翻訳してチェックする手順
1.前段階で得られた翻訳文を、事前に作成したプロンプトをセットした AI に投入します。
Grok が翻訳を終えた直後に、逐次投入していきます。
この方法により、各回のチェックにちょうど良い分量の逆翻訳文が得られます。
Gemini は丁寧な表現を優先して選び、GPT/Claude はやや丁寧さが低めですが失礼でない表現を選びます。
(※Grok は原文を超える強い感情や言葉遣いで逆翻訳し、誤りも多いため、逆翻訳にはおすすめしません)
2.逆翻訳された内容が原文と一致しない場合、特に翻訳が原文から大きく逸脱しているときは、Gemini または GPT/Claude に翻訳の説明を求めることができます。
(これは購読している AI によるのですが、この手順はトークンをかなり消費します。僕は Gemini を購読しています)
僕は AI に、この部分がなぜそのように翻訳されたのかを尋ね、希望通りに翻訳するにはどのような文構造や文字を使えばよいかを聞きます。
(※この点で僕はかなり多くのことを学べました)
その後、Gemini から得た文字や文を Grok に指示して再翻訳します。
このようにする理由は、Gemini と Grok の特性がかなり異なるため、Gemini の文をそのまま置き換えると文のリズムが全く変わってしまうからです。
ただし、GPT や Claude の場合、修正してもらった文は Grok のものとかなり近いので、そのまま置き換えることができます。
3.逆翻訳された文章が原文と一致していることを確認したら
(※必ずしも一字一句完全に一致する必要はなく、僕の場合は85-95%程度で十分です)
Grok が翻訳した日本語の文章を、別のファイルに保存します。
改行を入れたり、各翻訳の区切りとしてマークを付けておきます。
これを一つの章が終わるまで続けます。
もう一つおすすめしたいのは、AI2とAI3からの逆翻訳文も一緒に保存しておくことです。
万一保存漏れやデータの欠落が発生した場合でも、二つの逆翻訳データを使って復元や修正ができるからです。
文脈の確認
言語翻訳と逆翻訳による内容の一致チェックが終わった後
次の段階は、僕の作業の中で最も難しくて厄介なステップに到達します。
それが、文脈の確認です。
今回は、一つの章をすべて翻訳し終えた後、約20行程度の文章を AI3/AI4、つまり GPT または Claude に読ませます。
その後、僕たちの言葉で文脈と状況を伝え、その内容がその状況に正しく適切かどうかを尋ねます。
答えが正しいとまとめられる場合は、そのまま内容の確認を続けますが、正しくない場合は誤りを探して修正します。
大抵の場合、文脈の誤りは小さな誤りであることが多いです。
よく遭遇する文脈の誤り
1.場違いな丁寧さ、例えば親しい友人同士の会話で丁寧語を使ってしまうなど。
2.その瞬間の物語の文脈からずれたセリフ。これは AI が誤解する単語があるために起こることが多いです。
例えば、主人公と敵役が戦う場面で、敵役が満足げに微笑むシーンで、AI が敵役の笑みを恋愛的なアプローチの形に変えてしまい、結果的に原文と同じ文章が出てきてしまうこともあります。
3. 検閲によるソフト化
AI はポリシー上の理由から、時として文章のニュアンスを意図的に和らげることがあります。
そのため、逆翻訳をすると原文と同じ内容に見えても、翻訳先の言語では表現の強さや迫力が弱められており、作品が本来持っている雰囲気と合わなくなってしまうことがあります。
僕が GPT や Claude を日本語翻訳の候補として試していた時期には、この問題によく遭遇しました。
一方で、この点に関しては Grok では比較的発生しにくいと感じています。
これは、僕たちの翻訳方法が小さな部分を複数に分けて翻訳しているためです。そのため、文脈の誤りも部分的に発生しやすいのです。
文脈の問題を発見したら、誤っている部分だけを修正できます。
誤っている箇所を Grok に戻して、その部分の文脈を変更・調整させたり、Claude や GPT に修正させたりします。
一つの章全体が間違ってしまう可能性は非常に低いです。もしそうなった場合は、最初からやり直すしかありません…。
僕の平均的な翻訳手順は、これくらいです。
ただし、実際にはもう一つ、毎回の翻訳で必ず行うわけではない追加のステップもあります。
内容のまとめが短いので、この見出しの中にまとめて入れておきます。
読み上げの確認
読み上げの確認は、僕たちが翻訳した各文の長さをチェックするためのものです。文が長すぎると、読者が疲れてしまい、作品の引き込まれる力が低下してしまいます。
これは、各言語での文の長さが異なるためです。
タイ語の短い文が日本語に翻訳されると2倍近く長くなることがあり、その逆も同様で、日本語の短い文がタイ語や英語に翻訳されると非常に長くなってしまうことがあります。
この確認は、すべての翻訳段階で必ず行う必要はありません。
翻訳者が文が長すぎるかもしれないと思ったときに使うためのものです。
最初のうち、僕は多くの人から「声に出して読んでみる」ことを勧められましたが、ほとんど読めないので困っていました。
しかし、しばらくやってから Text to Speech を思いつきました。
手軽に使える Text to Speech は Google Translate です。
確認したい文を Google Translate に投入して、音声読み上げを聞くだけで済みます。
この手順は時間がかかりません。聞くだけで判断できます。
文が長すぎて読み上げにくい場合は、Grok に指示して文を分け、読みやすく翻訳し直させることができます。
そして今日の最後の部分は、僕が補足だと考えている部分、つまり言い回しの挿入です。
言い回しの挿入は、僕が翻訳で頻繁に行わないようにしていることです。
誤りの可能性が高いからです。
しかし、時にはどうしても欠かせない場合もあります。
僕の言い回しの挿入方法は二種類あります。
一つ目は、タイ語にあり日本語にない言い回しの場合です。
まずそのタイ語の言い回しを直訳して意味を正確に伝える文にし、それから AI に「この意味の日本語の言い回しはあるか」と尋ねます。
あれば、次に「同じ文脈で使えるか」と聞きます。
これは、同じ意味の言い回しでも、二つの文化では全く異なる文脈で使われることがあるからです。
使える場合はそのまま入れますが、使えない場合は直訳を使います。
これが僕の方法です。
二つ目は、原文にない日本語の言い回しを入れる場合です。
二つ目はこの方がさらに難しいです。僕は日本語の言い回しをあまり知らないので、たいてい AI に「この部分で使える言い回しはあるか」と聞きます。
認めますが、Claude が今まで使ってきた AI の中でこの点が一番優れています。
それでも、この方法はあまり頻繁に使わないようにしています。
Claude を使っていても、誤りが起きやすいからです。
今回はここまでにしておきます。次回は、
AI を使って翻訳する中で僕たちが経験したことについて話しましょう。
あまり泣ける話にはしたくないですね(笑)




