20 似た者同士
お待たせしました。20話です。(12/13)
「…………え」
(何なになに、なに!?)
突然すぎて一瞬息するのが止まった……気がする。
私より年下だと思ってたのに、彼が立ってみると
私より背がずっと高くすらりとしていた。
さっきまで食べすぎて恥ずかしそうに頬を赤くしていたのも嘘かのようにあんな大人っぽい雰囲気を醸し出されるとびっくりしてしまう。
……けど。
「おでこに……キス、された?」
少し感触の残る額に手で触れる。
ほのかに残る柔らかい感触と熱にぶわっと緊張と恥ずかしさが沸き上がる。
「~っ、うわぁ……」
知らない人にこんなことされるなんて本当に危機感がないというか、なんというか……。
「ルイス様になんて言おう……」
(……ん?いや何でここでの名前が出るの)
確かに仮のお妃になると決まってはいるし、彼の気持ちもいまいち本当のことと受け取っていいのかまだ分からないのに。
(なんか、自意識過剰な気がする……よね)
久しぶりにみんなに会えて嬉しいのは間違いない。
でも、大人になって私の知らないところが増えたみんなを見ているとどこか取り残されたような気がしてならない。
ルイス様も、アイザック様も、レオさんも知らないひとになっている気がして、どこか壁があるような気がして。
やっと帰って来たと思えばすぐに紋章の事件が起きるやら非日常が繰り返されてしまっていて。
(気持ちの整理がつかないよ……)
「うぁー……」
「なに野生動物みたいな声を出しているんだ、
クレア」
「うぁぁっ!?」
急に後ろから声が聞こえて、とんでもない声で叫ぶ。
それはもう野生動物のような荒々しい声で。
「あ、アイザック様ですかぁ。驚かせないでくださいよ。……と言いますか、どこに行ってたんですか!私もうそれは困ったことに……」
「はいはい、話は後で聞いてやる。じきにあちらも用が片付くことだろう。別邸でルイスたちと合流する、お前も早く馬車に戻れ」
ーー端的。
ええ、それはもう端的かつ簡潔に。私の驚きや興奮も簡単に収まりましたとも。けどもうちょっと話を聞いてくれたって……。
(この偽優男のアホ!この人でなしっ!)
「クレアー、顔に良からぬことを考えていると出てるからなぁ?その顔、よーく覚えておく」
「……はい、すみません」
⭐⭐⭐⭐⭐⭐⭐⭐⭐⭐⭐⭐⭐⭐⭐⭐
一方、首都から遠く西。
複数の騎士をつれたすらりてした体躯をした顔立ちの雰囲気の異なる美しい青年が2人森を歩いていた。
「……はぁ、クレア大丈夫かな。作戦の内容分かってなさそうだったし」
「あはは、クレアちゃんは頭脳派ではないからねぇ。まぁあっちはアイザックがついてるからどうにかなるとは思うけど」
静かにごうごうと燃える松明を片手に褐色の肌を持つ青年、レオは愉快そうに笑った。
まるで悪戯をして怒られている子供を面白がるかのように形のいい瞳をアーチ状に歪め、楽しげだ。
「笑い事じゃないよレオ。クレアったら言うこと聞かないで危険ばっかり冒すんだから。さっきだって僕のために飛び出てきたりひて、ひやひやするよ」
むぅ、と頬を膨らませる碧い瞳の彼はレアリウス王国の第二王子ーー今や次期国王のルイスである。
先ほどから彼はしゃらん、と優雅に揺れる瞳と似た碧のピアスを指先で撫でながら元専属メイドの不満をこぼしていた。
(ーー好きな子に心配されて嬉しいけど、危険にさらしてしまうかもって素直に喜べないって感じかなぁ)
歳の一回り近く下の彼の落ち着かない様子を見て、くすりと笑う。せっかく成人して、ようやく彼女の隣に胸をはって立てると思っていたのにこれでは不満なのは同じ男としては共感できる。
でも、兄のような立場から見るとルイスがまだ王として不安定なのは事実で俺たちが支えてやらなければという気持ちに駆られるということは秘密だ。
クレアちゃんもルイスも、お互いの時間のブランクに慣れて本音を伝えられるのも時間の問題だし、俺からの野暮は厳禁だ。
……でも
(クレアちゃんには悪いけど、5年も旅を一緒ににしてくると、だいたい相手が何を考えているのか分かるんだよね)
ーールイスがピアスを触るのは不安なとき
「ふふっ……」
「……なに?さっきからずっと、にやにやしてるけど」
何でもない、と返すとルイスは再び不満げにピアスを無意識に触る。壊れ物を扱うかのように大事そうに、とても大切に。
(2人そろって、顔とか態度に出やすいとか面白すぎるでしょ)
騎士たちの手前、気高い王族らしく振る舞ってはいるもののクレアやアイザックのことが心配でならないらしい。
顔はポーカーフェイスでも、その細く綺麗な指先が心のうちを明示している。俺とは正反対だ。
「あーあ、ーーーー」
ぼそりと口からこぼれるように、星空の下で呟かれた声は誰にも聞こえることはなく広がる。
それは静かにゆっくりと夜空に溶けていく。
「……っ!ルイス様、レオ団長っ!こちらを見てください!」
周りを警戒していた騎士たちは何かを見つけたように声をあげる。音を立てないように静かに彼らの指差す方向に視線を向ける。
ーーそこには、予想通りの光景が広がっていた。
「……ん、ビンゴ」
「よし、こちらも作戦を進めようか」
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