08 キューティーミラクルガール
そのあきらかに乙女全快の手紙にはジェームスさんの
容姿からは思いつかない丸文字でこう綴られていた。
《はぁい、クレアちゃん!
体調はどう?元気??
倒れたって聞いて乗り込みに
行っちゃったわよぉ!もう!
でも、あのルイスちゃんの変身には
どこか脅威的なものがあるわよね……
アタシも興奮しちゃったわ!
それと今日はクレアちゃんは休んでるといいわ!
じゃあまたねぇ!
キューティーミラクルガール ジェームスより
PS.ルイスちゃん心配してたから
元気な顔見せてやってねん!》
ジェームスさんの優しさが溢れていて心も温かくなる。
手紙を戻してリボンを結び直す。
……結び直すとやはり手紙のごてごてさが目に突き刺さる。
何とも言えない複雑な気持ちに言葉がつまり、
目をキョロキョロとさまよわせる。
「んっんー……」
「じゃあ私は仕事行ってくるわね。
あんた少し体温高かったから休んどきなさいよ」
体温が高かったのは先ほどあんな夢を見たからかもしれないと
恥ずかしくなるが、そんなこと言えない。
とりあえずアンナの目を見てこくんと頷く。
「えーと、うん。分かった」
「じゃね、お妃さまー」
「ちょっ!やめて!仮の!仮のなの!!」
「はいはーい」
にやにやと意地悪く笑うアンナにむぅと頬を膨らませる。
軋む扉をバタリと閉められるとクレアは
ベッドにだんご虫のようにころんと丸くなった。
(……あー、どうしようかなぁ)
王子があのポンコツ王みたいなタヌキ顔だったらなぁ
とか、ジェームスさん並みのゴツさがあればなぁとか
できもしない願いを望みながら天井を見上げ、
ふと目を閉じる。するとどこからか言い合いするような声が聞こえる。それもだんだん近づいてくる。
その音にどきと胸が高鳴る。
(もしかしてーー)
「~って!」
「うるさい!関係ないだろう!!」
バンッと開かれた扉の向こうに立っていたのは
海のような青い瞳にシルクのような美しい銀の髪の
青年、ルイス……ではなく。
「…オーディン王子……」
にこにこと笑う姿が尚更苛立たせる。
まったく母親の気を引きたい子供のようだ。
「やあっ!クレア嬢!!体調はどうかい?
僕に会いたいかと思って見舞いにきたぞ!」
(迷惑を飛び越えてすごく迷惑……)
ここ数年静かだったのがウソのようだ。
あの事件のことはすっかり忘れたようで、
"君のために"と言うところが変わってない。
「ほら、クレアはこの通り具合悪いのでお帰り下さいな」
「む!なんださっきから!メイドごときがうるさいぞ!」
その言葉でアンナの理性にぴきっとヒビが入ったのが
分かる。つり目気味の目が更に急角度に上がる。
「……うるさいのはどっちよ!とっとと帰りなさい、
このポンコツ!!!」
「ひっ!」
鬼の形相とはこれ、と教えてもらっているような
顔にクレアもひぃと口元を布団で隠す。
慌てて走っていったオーディン王子が少し
可愛そうになるけれど。
「アンナ?……ありがと」
「いいわ、クレアも大変ね。
じゃあ体調気をつけて」
パタンとアンナができるだけ優しく扉を閉めた。
どっと疲れが出ると一つため息がでる。
「……クレア?」
「!る、ルイス、王子?」
高く透き通る声に振り向くと
きしりと軋む窓に足掛けた美青年がいた。
彼の瞳は海のような美しい青をしている。
「大丈夫?昨日倒れたから心配でここまで来ちゃったんだけど」
「でも窓からって!」
「……良かった、少しは元気になったみたいで」
ふにゃっとクールな顔が緩まると
やはりルイス王子は文句1つつけられないほどの
美しさがある。
「……昨日はすみません。
なんかもう情報過多でパンクしちゃって」
「大丈夫。……それより」
「へ!ちょ!王子!?」
ぐいっと距離を縮められ、まさに床ドンならぬ
ベッドドンに鼓動が高鳴る。
(何これ……恥ずかしすぎる……!!)
「さっきの兄上でしょ。
……なんでクレアの部屋にいたの?もしかして……」
「や!違います!勝手に来ただけで……」
「……そうなの?仮にもクレアは僕の妃なんだから
気をつけてほしいな」
伏し目で色気たっぷりな青い瞳に見つめられると
頭がぱんぱんになる。顔もだんだん火照てってくるし
逃げ場もなく下を向く。
「……なんて。クレア、顔真っ赤だよ」
(……~!確信犯!!)
「もういいですか!私急に具合悪くなりました!」
ガバッと布団をかぶって顔をかくす。
「ほんと?」
しかしその心配そうなルイスの声には勝てっこない。
「……う、うう嘘です!」
その反応にくすっと愉快そうに笑ったルイスは
かぶった布団を優しくはがす。
「じゃあ、一緒に別邸にいかない?
久しぶりにクレアのタルトタタンが食べたい。
体調が戻らないようだったらそのまま帰ろうと思ってたんだけど……あんな浮気現場みたらね」
「……意地悪くなりましたね、王子」
「そう?好きな子には意地悪したくなるっていうのかも」
「!……なんか直球になりましたね」
少し意地悪でストレートな愛情表現になったのは
大人の2人と旅に行っていたからだろうか、彼も
大人らしい言動が多い気がする。
クレアにとっては刺激が強すぎるのだが。
「なるべく他の人に取られないようにしなきゃいけないから」
「?」
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早速2人でりんごなど準備をしていると
ふとあることが気になり隣のルイスに話しかける。
「そういえば2人は何をしてるんですか?」
「えーと、アイザックは宰相だから読める特別な本を
かき集めて読みふけってる。レオは城下町で買い物。
今日は休暇日だから好きなことしてる」
「そうなんですか。旅から帰ったばかりだから
皆疲れてますもんね」
「そうだね。……そうだ、今日は僕も手伝うよ」
「え!」
まさかの言葉に驚きを隠せず大きな声をだす。
するとルイスは怪訝そうな顔でこちらをみた。
「……え、ダメなの?」
「違いますけど……いいんですか?」
「いいの、クレアも昨日の今日だし疲れてるでしょ。
僕のわがままくらい手伝わせてよ」
(何このできる旦那さんみたいな人……!!)
一国の王様になった人がこんなにも素早く
りんごの皮を剥いてるなんて……。
それにクリームの準備まで万端だ。
それに昨夜は大人っぽく凛々しかった瞳も
タルトタタンの完成を待ちわびてルンルンと輝いている。
彼の極度の甘党は変わっていないようだった。
久しぶりの投稿でした。
別のものを投稿するかも、とウソつきました……
すみません。そっちもいつの日か投稿したいです
では、「遅咲き王子のお隣に」を
よろしくお願いいたします




