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遅咲き王子のお隣に  作者: 白澤 五月
第一章 つぼみ王子と没落令嬢
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5 ポンコツ王子はストーカー

簡単にいうと、オーディン・ヴェルダー第一王子は私のストーカーである。今から5年前、私がまだ貴族令嬢であった頃、弟と参加したお城のパーティーで彼が私に一目惚れしたそうだった。

 

"君の髪はなんかこう、美しい金色!そして…その美しい瞳は…マスカット…!!結婚して、僕を毎日叩き起こしてくれないか!!"


これが彼が私に初めて話しかけてきた時の言葉であり、私へのプロポーズだ。色気も何気もないこのプロポーズ(?)の詩はもちろん私の心に響かなかった。響かないどころか『うぇ……』と思わず口からこぼれた。


それに、隣にいた幼い弟さえ固まっていたし。彼のプロポーズは冒頭の私への賛美の詩もひどいが締めくくりに詠まれた"僕を毎日叩き起こしてくれないか"は流石にいただけない。


叩いてほしいってそういう趣味なの…?それともまったく自分で起きられないポンコツなの…?と子供心にどん引いた記憶がある。言葉のあやもあると思うが、"無理"と即決した私はその場で丁重に断った……はずだけれど。


『恥ずかしいのか?まったく…よし分かった。君がプロポーズを受け入れるまで待っていようじゃあ、ないか…!』と自分に酔いしれた彼は取り合ってくれなかったのだ。


面倒くさくなってそれを放置して現在、彼は見事そのまま誰もが認めるポンコツ王子へ成長し、今となっては没落令嬢になった私とお城で会うたびに私のことは考えずにプロポーズをするストーカーみたいになってしまった。なぜそんなに私に執着するのかは分からないが、あの時からずっと彼に結婚を迫られている。


(普通、王子様にプロポーズされたら胸がときめいて嬉しいものではないの…?)


そんな甘い夢を抱く年頃のはずのクレアだが、このポンコツ王子とギャンブル父のお陰で夢など持たない現実主義者になってしまった。それに加え、彼のポンコツ具合は年々磨きがかかっているような気がするし……。


先ほどの演奏も実際には聞いていないけれど、たぶん世にも恐ろしい音が鳴り響き、ギィギィとヴァイオリンから悲鳴の嵐だっただろう。だって今もまだ令嬢たちの顔がひきっているもの。さすがポンコツ。


もちろん令嬢たちの王子を見る目は恋情や尊敬の意はまったく見当たらず、これほどかというほどの絶対零度である。しかし、彼女たちは彼が王から受け継ぐであろう財力や権力を自分のものにするためにはなんだってするのだろう。


王子のいつまでたっても上達しない聴くのも恐ろしいヴァイオリンの演奏も、ポンコツ丸出しの変な詩も、そして極めつけに執事や令嬢たちへの傲慢な態度も。それをみても彼女たちは精一杯のお世辞を我一番にと言い出すのだ。


健気だなぁ…とクレアは彼女たちを見かけるたび冷ややかな目で尊敬している。しかし、そんながんばり屋な令嬢たちの乱戦の中、いつも王子の気を引いて邪魔をしてくる女がいる。


…………私だ。


不本意だし、もちろん私にそんなつもりはまったくない。爪の先、いや針先にもない。書面に"私はあなたたちの邪魔はしません。これからもするつもりもございません"とサインしてもいいくらいだ。しかし、周りから見れば努力もしていないのに王子に気に入られている私の存在は令嬢たちを苛立たせるようだった。


『下手な演奏も、ダメダメな詩も聴かないのに王子と結婚して権力、財力を得ようとはこの女、許すまじ…』ということらしい。


先ほど私にワインをぶっかけ喜んでた令嬢3人ももちろん王子の権力を手に入れることを望んでいて、"悪女 クレア・アステリアから王子(の財力、権力などなど)を守り抜くのよ!"という集まりを作って仕切っているらしい。


さすがに自分たちの欲望丸出しではないか…と思うし、それに私は何も悪いことはしてないのにひどいものだ。ちなみに、この情報はアンナの『知りすぎ!情報網』から聞いた。


真面目そうな顔に似合わず結構アンナは噂好きなおしゃべりさんなのである。これをはじめて聞いたときは令嬢たちの裏の顔にショックをうけたが5年もたった今、もういいかと諦めたのである。

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