↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
遅咲き王子のお隣に  作者: 白澤 五月
第一章 つぼみ王子と没落令嬢
PR
53/77

52 王子が熱を引きまして part1

春になり、ちょうどルイス王子との出会いから一年。

13歳の誕生日になんと"真王"の紋章を持つ王子が出た。

そして国の存続のため旅に出ることを決意したこのごろ、

私はおいていかれることに悩みに悩んで悲劇のヒロインのようにしていたかったのだけど……。


「……あつい」


1人の少年はだるそうにベッドに横たわっていた。

その美しい青い瞳のもつ美少年ルイスの体温は38度をこえていた。頬はほんのり赤く、瞳はとろんとしている。


「もー、こんなになるまで訓練をしていたのは誰ですか……

アイザック様たちとはまだ体力差があるのは当たり前なのに」


「……ごめん」


ルイスは去年からアイザックとレオと三人で剣術や体術、それに知識などを訓練と評して行っている。王子も年相応の男の子だから体を動かしたいのは分かるけれどさすがに今回はやりすぎだ。


「……2人とも、分かってますね?」


ゆらっと振り返るとカタカタと怯えたようすで正座で並ぶ二人の美青年。紺いろの長い髪を1つにくくった優男アイザックと

褐色の肌に魅力的な紫の瞳のレオである。この二人こそこの国の王子に風邪を引かせた犯人だ。


「す、すまないとは思ってる。……でも訓練はルイスにとって必要なことでな」


「そう!ルイスもやる気だったよ……!少しやりすぎたけど。……ってクレアちゃん顔怖い!!」


鬼の形相とはこのこと、クレアの顔はか弱い16の少女とは思えないものだった。


「ごほっごほっ」


「大丈夫ですか、ルイス王子!」


咳き込む王子のもとに駆け寄り額にのせた水布巾を取り替える。

今朝から熱が上がり続けていて、ルイスもつらそうにしている。


「私は王子のために城下町で食べ物とか買ってきます。2人は今日は、お暇なようなので見ていてくださいね」


「「……はい」」


クレアの無言の圧力には逆らえない2人であった。実はルイスが紋章をだした日にレオとアイザックがルイスの勝手な決定のはらいせにいつも以上に長くきつい訓練をしていたなんて言えない2人であった。


― ― ― ― ― ―


クレアは薄めのコートをはおり、

アイザックが派遣した御者さんに馬車を出してもらった。

今日も春ながら外は寒く、風がつめたい。


「はぁ~、冷たいなぁ」


王子が紋章を出した日から2日、

こんなタイミングで熱をだすとはおもわなかった。

ルイス王子の私をおいていく宣言に胸を痛める暇はなく、

こんなことになってしまった。


(……まったく、こっちはどんな気持ちか知らないで!)


急に告白みたいなことを言われたり

そうしたら急に冷たい態度をとられるし、

13歳の少年相手にこちらは振り回されっぱなしである。


久しぶりに訪れた城下町は建国記念祭の時とは

違い質素で地味なものだった。

まだ早朝というのもあり人気があまりない。


(えーと、王子の風邪に効くものを……)


ビタミンやたんぱく質など風邪の治りにいいものを

お店をまわって買い集める。

てきぱきと買い物をすませると我ながら素晴らしい働きに

少し心も安らいだ。


(よし、早く帰って……ってあれ?)


クレアは買ったものをかごにいれ、

馬車に戻る途中1つの本が目にはいった。

その本は売り物にしては古びていて

どこか年代を感じさせるものだった。


(ルイス王子、こういう本も好きかしら……)


「こら、お嬢さんこれは売り物ではないよ」


おもわず本へ手を伸ばしてのを止め、

声のほうをみると1人の老人が立っていた。

大分顔はしわしわにみえたが深いフードをかぶっていて

詳しくは分からない。


「す、すみません。

なんだか不思議な本だなと思って……」


「そうかい、君はモノをみる目がいいね。

この本はこの世で唯一の王族について書かれている本。

ただの平民の女の子相手には渡せないんだよ」


「そうですか……。

残念ですが仕方ないですよね」


せっかくなら王子のお見舞い用に

プレゼントしようかと思ったがそれなら無理だ。


「……ふむ、お嬢さんは

紋章について知っているのかな?」


「っ!なんでそれを……?

城下町の人にはあれは嘘だって……」


まさか一般の人にまで紋章の話が漏れているなんて。

一昨日の今日だから紋章の話にも少し敏感だ。


「わしを甘くみてもらっては困る。

わしは君たちより紋章についてよく知っているよ」


にやりと笑う老人はどこか不審げだが

その瞳には不思議で吸い込まれそうな雰囲気がある。


「それは本当ですか?

もしかして第一王子のあの赤い瞳についても……?」


「もちろんだ。もし知りたければこちらにおいで。

……わしが君に紋章について教えてあげよう」


「……はい」


そう返事すると彼の言葉に脚が勝手に動いた。

……まるで洗脳でもされたかのように。


(……あれ、なんで!?)


老人が布をあげるとそこには黒い闇のような穴がある。

その暗い闇はあの"悪夢"と似ていた。

王子が1人で泣いていたときの夢に。

どこか寂しくて苦しいあの世界に。


(……嫌!)


「クレア!」


遠くから聞こえる声に意識が戻り、

老人から遠ざかる。


「……アイザック!」


馬から降りた彼は不思議そうに辺りを見回した。

「どうしたんだ、お前こんなところで」


「!私この人に操られたみたいに……ってあれ?」


目の前にいたはずの老人が見当たらない。

さっきまで暗い闇のような色をした穴が空いていたのに。


「……よく分からないがここから

離れよう。クレアは俺の後ろに乗れ。

ルイスに変なことが起きたんだ」


アイザックはクレアを持ち上げ馬にのせる。

彼も乗り込むと素早くその場を駆け出した。


「変なことって……?」


「ルイスが突然苦しみだしたと思ったら

黒く光だしたんだ」


引き続きおきる奇妙な出来事に胸がざわついた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。