36 喧嘩とプリン
「お前ら二人は今日のオーディン王子の話は聞いたか?」
年上に向かってため口なのはほっとけないが途中で口を挟むとアイザックに後で何を言われるか分からないため黙っておく。これも賢く生きるためのの技だ。
「はい。城下町に降りて、ルイス王子のことや紋章のことを言いふらしたらしいとは」
スフィアさんが端的に答えるとジェームスさんもうんうんとうなずいている。
「そうだ、俺はあいつはポンコツだと前から思っていたが、そこまでだとは思っていなかったんだがな……」
見立てがはずれたというようにううと唸るアイザックを横目に私は気になったことを告げた。
「レオさんは紋章とかって聞いたことあります?」
「ん?ああ、あるよ。俺が第一王子に雇われたときにね。もちろんルイス王子のことも聞いてるよ」
「じゃあ、話が早いな。まず、今日の対処法方から考えるぞ。おい、ルイス。お前分かってるのか?」
腹黒さん立ち直り早いな、おい!という突っ込みはもちろん黙っておく。だって貴族様への不敬罪で捕まりたくないし。
一方話を突然降られたルイス王子はあの細かくてうるさいアイザックについていけるのか心配になって彼の方を見る。
「……まず父上に報告。たぶん今冬前の会議に地方に出ているから今から一週間くらい後。次に父上の判断で国民への報告だけど、僕のことをどうするかはまだ分からない。だけどたぶん紋章の話は兄上の作り話とかいってごまかすと思うからそれに合わせて対策をとる。……こんなところ?」
王子はすらすらとそう答えると、アイザックは呆気にとられた様子だった。
(ルイス王子って本当に12歳なの……?頭の回転が早すぎて子供に見えないんだけど)
「……そうだ。じゃあ次はレオ、お前がさっき言っていたことについてだ」
「あ、オーディン王子についてでいいんだよね?りょーかい」
ガタッと音をたててソファから立ち上がり、レオは髪をさらりとかきあげた。
「……簡単にいうと目が赤く光ってたってとこかな」
「……何を言ってるんだお前は?」
なぜここで色っぽくしようとしたのか分からないけれど、ジェームズさん以外にここにいる人たちには効果は0だ。やっぱり艶っぽく見えるは見えるけどレオさんのことだし……と私もだんだん慣れて来てしまったので。それに加え、アイザックにはお前頭大丈夫かと心配される始末だ。……かわいそう。
「いやマジなんだって、クレアちゃんも見たでしょ?オーディン王子の瞳が赤く光ってるの!」
「あぁ、そういえばそうでした」
「じゃあ何でお前は王子に立ち向かってるんだ!!明らかにヤバいやつだろそれは!」
ドンッと机を叩く音同時にアイザックの周りには怒りオーラがが溢れ出てきた。昔から私が危ないことを少しやるだけでこれだ少し年上だからといって心配される必要はないのだが。
「だ、だってルイス王子も光出すの見たことあったですもん。だから王族はそういうものなのかな~、と」
「……何言ってるんだ、お前」
レオのときと同様、頭大丈夫かと心配された。なんとこれは心外だ。本当のことを言ったまでなのに。
「だ、だって本当ですもん!ね、ルイス王子?」
「ん?」
と、助けを求めて読んだ彼はもくもくと再びプリンを食べていた。……まさか再びプリンに気をとられていたなんて。先程の賢い美少年の姿はどこにいったのか。
「お前!王子だからって許せるもんと許せねぇもんがあんだよ」
ぐわっと飛びかかるようにしてルイス王子と力ずくのとプリンの取り合いになっている。しかしすぐにプリンを取られてしまい、やっぱり王子も年上の男の握力には勝てないようだ。しぶしぶ再びプリンをとられてしまったことにしゅんとしている。
「分かった、ごめん。……でクレアの言うことは本当。この前歌ったら光った。僕の身体から」
「……なーに、それぇ!そんなファンタジーなことってあるのかしらぁ……!でもかわいいルイス王子のことだものあり得るかもしれないわねぇ!!」
驚きの声をあげたシェフだったが、あっさりと承認したようすだ。すかさずレオは抗議の声をあげた。
「いや、あり得ないと思うんですけど」
頭をかかえ、考えているアイザックははぁと深いため息をつき、スフィアさんはうーん、と考え混んでいるようだ。
「……はぁ、なんだかんだ言ってお前もれっきとした王族じゃないか」
「え?」
「体が光るなんて聞いたことないがそんな異様な事態が起きるのなんて王族だけだろ」
「そう……だね」
"王族"だけ……。その言葉を聞いた王子が少し嬉しそうに微笑む。今まで自分だけ違うと思っていた彼にとって嬉しい言葉なのかもしれない。腹黒アイザックの言葉だと思うと複雑だけど。
「はいはーい!ちょっと俺の話に戻ってもらえますか~?アイザックったらや優男の出来る奴みたいな顔してんのに脱線しちゃうんだね」
「俺のせいじゃないだろ!クレアがなぁ……「早くしてください」」
ズバっとスフィアさんがアイザックの言葉を切り捨てた。あのアイザックの暴言を途中で止められるなんて、スフィアさんすごい……尊敬だ。
「えっと、第一王子は一週間前くらいから様子はおかしかったんだよねー。確か……
『おい、レオ』
『……なんですか、王子?』
『今週末、面白いことがおきるぞ』
『はぁ……?』
『楽しみにしてるがいいさ』
……って。その時から瞳はちょくちょく赤かったんだよね。とうとう頭がおかしくなったのかと思ったんだけどあの王子のことだしいっかーって。そしたら今日はこんなことになったってわけ。あと瞳の色はクレアちゃんが来てから特別強く光ってたね」
すらすらーと思い出す彼はさすが騎士というのもありよく主をみている。私ならきっと瞳赤かったけ……?で忘れてしまうだろうに。
「一週間前から……?まだ分からないことが多いな。ルイス、お前分かるか?」
「……分からないよ僕には。それに君、次期宰相候補なんでしょ?
それくらい頑張って欲しいんだけど?」
プリンをとられたせいかアイザックに当たりがきついのは気のせいだろうか。
「ちっ!この野郎……」
今にも喧嘩勃発ような雰囲気にどうしようかとおろおろしてしまう。王子、逃げてください。その人顔に似合わず馬鹿力なんですよ!するとレオが間に入ってアイザックをたしなめた。
「はいはい、喧嘩は控えてよ?女の子たちが困るでしょ」
「……ごめん」
「……分かった」
一瞬で危ない雰囲気が収まるとよしよし、と満足げに二人を見るレオさんは以外に大人みたいだ。まるで2人のお兄ちゃんみたいである。
「じゃあとりあえず今日はお開きねぇ!私とスフィアちゃんは第一王子の一週間がどうだったか同僚たちに聞いてみるわねぇ!」
「使用人たちからの噂話なら任せてください」
仕事に関しては誰よりもできる二人はそう言いきる。こういうこところは本当に頼りになる。本当、こういうところだけは……。
「じゃあ私は王子の赤い瞳の現象について図書館で調べてみますね。王族のことだから載ってるか分からないけど」
最近はルイス王子のためによく図書館に行っているからたぶんうまく探せるだろうと名乗りでる。わかった、とアイザックが了承するとレオさんもすかさず手を上げる。
「はい!じゃあ俺も……「お前は別の仕事だ」……はい」
もちろん却下だけど。下心を隠さないからですよ……。
「俺はポンコツの取り調べ。ルイスは王への報告を完璧に仕上げろ。間違えても変なこと言って殺されるなよ」
「……物騒すぎるんだけど。もちろんきちんとこなすよ」
ルイス王子は何それ、と顔を歪めたが素直に了解をした。
「じゃあ、各自成果がでたら報告。いいな?」
そう閉めるとこの日の会議はこれで解散であった。…………それから王子はアイザックからすぐさまプリンを奪い返してもくもくと食べていた。




