プロローグ
タイトルも未定の完全見切り発車です。
文法ミス、誤字脱字、表現技法などに関するご指摘、心よりお待ちしております。
拙い文章ですが、よろしくお願いします。
──全ての命は平等か?
そう問われたら俺は迷わず、否、と答える。
「お、おかしいだろ!?」
俺の目の前には、怒り狂う黒いスーツを着込んだ白髪な頭のおじ様。
──ここは高層ビルの最上階、豪華なシャンデリアが天井からぶら下がり、壁には鹿の剥製。
床には豹柄の絨毯。人のインテリアの趣味にあまりどうこう言うつもりはないが、あからさま過ぎる悪の幹部の部屋はいかがなものかと思います。
さらにご立腹なご様子のおじ様へと視線を戻す。
……何がそんなに不服なのだろうか?
俺はそんねおじ様をじっと見つめる。
「何で儂がこんな目に!?」
すると、汚い唾を飛ばしながらおじ様がまた喚く。
……何を言うかと思えば、そんなことか。
仕方ないから一から説明してやることにする。
「お前よりもそこに転がっている餓鬼の方が価値があるからだ」
「そんな小汚い餓鬼と、クサカベコーポレーション社長、どっちが価値があるかなんて明白だろぉがぁ!?」
そういうおじ様の憤怒に震える指先は、ボロ布を体に纏っただけの餓鬼に向けられている。
「このクソ野郎! アンタが俺の父さんを追い詰めたんだろぉ!? 父さんがそれでどんだけ追い詰められてたか知らねぇだろ?」
と、その指先対して反撃し始めたこの餓鬼は俺の依頼者。
このおじ様の暗殺を俺に頼み込んできたのだ。
「それはお前の父親が無能だっただけだろぉが!」
「父さんは頑張ってたんだよ!」
「そんなこと知るか! この世は結果が全てなんだよ!」
......どっちもどっちだな。
二人の言い争いなど心底どうでも良かったので、さっさとやるべき事を済ませることにする。
「……もういいだろ? 予定が押してるんで、この辺で死んどけ」
俺は熱くなり始めた二人の間に割って入る。
──さて、おじ様も自分が殺される理由は理解できただろうし、思い残すこともないはず。
俺は手に持った拳銃で黒服のオッサンの眉間を打ち抜く。
『――パンッ!』
──一瞬の躊躇もしない。
簡素な破裂音が一人の人間の命を容易く奪った、という現実をどこか他人事のように思える。
俺はおじ様だった肉塊を見つめる。
「……ありがとう、ございます!」
そんな惨状を見て、俺に礼を述べてくる依頼者の餓鬼。
「気にするな。どうせ、後悔することになるからな?」
「……え?」
『──パンッ!』
俺は一応の警告のあと、唖然とした顔のボロ布を纏った少年の眉間をも撃ち抜く。
「──大した演技だ」
──さっき殺したのはブラック企業の社長。
今殺したのはブラック企業に父親を追い詰められ一家離散したという境遇の息子……。
──という設定で俺に復讐を依頼し、この部屋の金庫の中身を狙っただけの盗っ人である。
「......任務終了、と」
ブラック企業の社長として多くの人間を苦しめた人間と、ただの盗っ人。
──まあ、どっちも等しく屑、である
俺はホルスターに拳銃を戻し、二つの肉塊を見下ろす。
「お前らホント、馬鹿だよ」
真面目に生きてればこんなことにはならなかっただろうに。
まあ、俺に言われなくても、それができるようならそうしてたんだろうが……。
いずれにしろ、こうなってしまった人間は、そうでない人間の害にしかならない。
今の社会では、後者が正義。ならば害虫は駆除、これ常識。
『──パンッ!』
──不意に鳴り響く3回目の銃声。
同時に、部屋の窓ガラスにヒビが入り、次いで俺の足に鈍痛。
「……これで、終わり、か」
……どうやら、隣のビルからの狙撃、らしい。
右足の腱を見事に撃ち抜かれている。
これでは身動きが取れない……。
──所謂、ゲームオーバーである。
──俺は、黒を白に塗りかえるゲームをしていた。
白に染まりきった世界は、どんな世界なんだろう?
ただ、ひたすらにそれが気になったのだ。
何故俺が白の方に回ったか? 答えは単純。
──そちらの方が数的に勝っていたからだ。
もし、黒の方が勝っていれば俺はそちら側につき、先程の二人を殺すことも無い。
ゲームオーバーになる事もなかったのだろう。
俺は長い物に巻かれる主義なのである。
『パンッ!』
──4回目の銃声を最後に、俺の視界は一瞬で闇に飲み込まれる。