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二人一役の調停者  作者: 襟端俊一
第五章 左手
34/100

10

「悔しい? 二人共」

 照はたった一人でロープをたぐり寄せながら二人に語りかけた。


「悔しいに、決まってるだろ。結局俺は……架に何もしてやれなかった」

「……っ」

 悔しさを滲ませる優太とは対照的に、蒸籠は無言で涙を流した。


「お、おい、泣くなよ。蒸籠は何も間違っちゃいない。平気で人を殺せる方がおかしいんだ。架だって平気な顔して自分の死神トートを殺したわけじゃない。紡のことも、ああしないと納得できないんだよ。それだけを考えて生きてきたようなもんなんだから」


 妹を殺されて記憶を失ってしまった架に対して、優太は『紡を殺した犯人を殺すために生きろ』と言った。

 架はこの優太の言葉と、後に聞かされる照の言葉で立ち直って、それからはずっと一緒にアルマ・アカデミアで研鑽を積んできたのだ。

 その溜まりに溜まった感情をぶつけなければ、架の復讐は終わらない。


「目的を果たさないとあいつは前に進めない。その結果、周りにどう思われようとも」

「そうじゃない……」

「え?」


 蒸籠は掠れた声で優太の言葉を否定した。

 照にはその理由が分かっていた。

 優太と蒸籠では、架に対する思いのベクトルが根本的に違うのだ。


「そうじゃないの。世間的に間違ってるとか、人としてどうかとか、復讐がどうとか……そんなことじゃない。私は架君に付いていきたかった! それができない自分が悔しくて堪らないの!」

「蒸籠……」

「あはは……照ちゃんと依衣ちゃんが羨ましいな」


 蒸籠はしゃくり上げながら体を縮め、体育座りで顔を伏せてしまった。

 その二人を名指ししたのは、あの極限状態で尚架に理解を示せたからだろう。

 優太も自分の不甲斐なさを省みたのか黙り込んでしまう。


「あの、さ」

 沈黙が訪れて数十秒後、照が控えめに切り出した。


「その、さっきはごめんね。情けないところ見せちゃって。結果的に、あんた達を責めるような感じになっちゃった」

「責めて当然だろ! 俺は仲間を見て怯んじまったんだ。最低だ……」

「私も、ごめんね」

「ううん、あんた達の反応は自然よ。もし私があんなことにならずにあの架と会ってたら、きっと同じ反応をしてた。今だから言うけど、依衣の話を聞いたときも……正直、引いちゃってたもん。最後まで話を聞いて、そんな感情を抱いた自分が許せなくなったけどね」

「それは俺も」

「うん……」

「でも、そんなことがあっても最後は仲間でいられた。だから」


 遙か前方にモンテ・ペルデュードの山頂が見えてくる。

 照はその光景を見ながらロープをたぐり寄せる手を早め、


「全員が同じ気持ちでいれば、架のことも絶対に大丈夫よ。いつまでもふさぎ込んでいないで、今は私達にできることをしましょう」

「……そうだな。捕まってた連中は地下を進んでるんだ。俺達が迎えに行ってやらないとな」

「リーちゃん達には、行きのとき以上に頑張って貰わないとね」


 休憩を挟んで丸一日以上掛かった道程を、今度は全速力で逆走する。

 吹雪いていない分雪原を走るのは楽だろうが、ガリミムス達、特にリーちゃんにとっては災難だ。

 何故か蒸籠はリーちゃんに厳しいから。


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