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二人一役の調停者  作者: 襟端俊一
プロローグ
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軋み

 目まぐるしく世界が変化していく中。

 両親を事故で失った兄妹は、それでも幸せに暮らしていた。

 大切な思い出と、大切な友人達に支えられて。

 兄の名は渡橋架おりはしかける

 妹の名は渡橋紡おりはしつむぎ

 子供が暮らすには贅沢すぎる一軒家で、二人は家事を分担して生活していた。

 その日は兄である架が食事当番だった。

 冷蔵庫の中身が寂しかったこともあって、架は妹の紡に留守番を頼んで買い物に出かけた。

 紡を心配させまいと早めに買い物を済ませて帰路についたが、その途中で偶然紡と顔を合わせることになった。


「あれ、ツム? 出かけるの?」

「うん。すぐ帰るから。今日のお夕飯、楽しみにしてるね」


 満面の笑顔で期待されては気合いを入れざるを得ない。

 架は紡に手を振って玄関の扉をくぐった。

 買い物袋から食材をとりだし、冷蔵庫に入れるものは入れて、今日の夕飯に使いそうなものはまな板の上へ。台所に常備されたレシピ本の中から一冊を選び、紡が喜びそうなレシピを求めてページを捲り始める。

 しかし、どれもこれも難しいものばかり。

 完璧に作ろうとすると食材も足りない。

 こんなことならメニューを決めてから出かけるべきだったと深く後悔する。

 十分ほど読み込んでようやくメニューを決めた架は、開いたページを下にして一旦置き、足りない食材を取り出すべく冷蔵庫に手を掛ける。


 そのときだった。

 ピチャリ、ピチャリと。

 何かが滴り落ちる音を聞いた。

 何事も出しっ放し、開きっぱなしが嫌いな架はすぐさま行動を開始し、家中の水場を確認しに行った。

 ところが何処もちゃんとしまっている。

 にも拘らず、ピチャリ、ピチャリという音は鳴り止む気配がない。


「……ん?」


 見落としがないかもう一度確認しに行こうと移動を開始した架の足に、生温かい感触があった。

 視線を落とすと、そこには小さな血だまりができていた。

 架は血だまりを踏んでしまったのだ。

 ゾッとしたのは、その血だまりが今正に形成され始めたばかりだったということ。

 夥しいほどの血液は、二階から滴り落ちてきている。

 階段を一段一段、ゆっくりと。

 架は覚悟を決めて階段を上っていく。

 そして。

 階段上で見つけた。

 見つけてしまった。


 血だまりに沈む、ついさっきすれ違ったばかりの妹の死体を。


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