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第五話:接続された孤独と、密室の解体場

※本作は実際の複数の事件から着想を得ていますが、被害者および関係者の尊厳を守り、事件の特定を避けるため、人物名は一切登場しません。また、発生時期、場所、人物の年齢や背景など、意図的に複数のフィクションや設定の改変を交えて構成しています。

※本作には残酷な事象を淡々と記述する表現が含まれます。猟奇的な遺体損壊や連続殺人に関する直接的ではないものの生々しい描写が含まれます。娯楽性は一切排除されており、事実の羅列による精神的な重圧を伴うため、閲覧には十分ご注意ください。


現代日本において、人はかつてないほど他者と繋がっている。掌の上のスマートフォンを通じ、二十四時間いつでも誰かと連絡を取ることができる。しかし、その網の目のようなネットワークは、時として深い孤独を抱えた人間を、最悪の捕食者の口元へと一直線に導く蜘蛛の巣となる。

これは、社会から孤立し、SNSの海に「助けて」「消えたい」という微かなSOSを書き込んだ若者たちが、見知らぬ男のワンルームマンションに誘い込まれ、次々と解体されていった連続猟奇殺人事件の記録である。我々のすぐ隣の部屋で、死臭が日常に溶け込んでいたという恐怖の事実である。

蜘蛛の巣の構築

平成から令和へと時代が移り変わろうとしていた頃。

現場となったのは、都心から電車で一時間ほど離れたベッドタウンにある、築年数の浅い木造アパートの二階の一室である。家賃は月に数万円。隣人の顔も名前も知らない、現代日本においてごくありふれた単身者用の住居だった。

そこに住み着いた男は、二十代後半の無職であった。彼は過去に違法なスカウト業などで糊口を凌いでいたが、特別な知能やカリスマ性を持っていたわけではない。ただ、他者の「弱み」に付け込み、甘い言葉でコントロールする狡猾さだけは持ち合わせていた。

男は金と性的欲求を満たすため、ある計画を立てた。それは、SNS上で「死にたい」「家出したい」と呟いている脆弱な若者たちを標的にすることだった。

男は複数のアカウントを使い分け、首を吊るための知識を装ったり、自らも死を望んでいるかのように振る舞ったりした。

「一緒に死にましょう」

「殺してあげますよ」

「とりあえず、僕の部屋で休んで作戦を練りませんか」

親や学校、社会から見放され、あるいは自ら繋がりを絶って暗闇の中で震えていた若者たちにとって、男のその言葉は「救済」のように響いた。彼らは、画面の向こう側にいるのが血に飢えた怪物であることなど想像もせず、自らの足で、男の待つアパートへと向かってしまったのである。

ワンルームの屠殺場

初秋のわずか二ヶ月という短い期間の間に、十代から二十代の男女複数名が、次々と男の部屋のドアを叩いた。彼らは皆、二度と生きてそのドアから出ることはなかった。

部屋に入ると、男は優しい態度を一変させた。

睡眠薬入りの酒を飲ませる、あるいは背後から突然襲いかかるなどの方法で抵抗を奪い、女性に対しては性的暴行を加えた。そして、金品を奪い取った後、あらかじめ用意してあったロープや結束バンドで首を絞め、確実に息の根を止めた。被害者の中には、男の目的が殺害ではなく暴行と強盗であることに気づき、必死に命乞いをした者もいたという。しかし、最初から「証拠隠滅のために殺す」と決めていた男に、慈悲の心などあろうはずがなかった。

一人を殺害すると、男はその遺体を「処理」しなければならなかった。

狭いワンルームマンションの、ユニットバス。そこが男の解体場となった。

男はホームセンターで購入したノコギリ、包丁、園芸用のハサミを用いて、人間の肉体を切断していった。頭部、四肢、胴体。血の海となった浴槽で、男は淡々と作業をこなした。切り刻まれた肉や内臓は家庭ゴミとして指定のゴミ袋に入れられ、近所の集積所に生ゴミとして捨てられた。清掃員も近隣住民も、自分たちが日常的に目にするゴミ袋の中に、数日前まで生きていた若者の肉体が混ざっているなどとは夢にも思わなかった。

処理しきれなかった頭部や骨は、部屋に持ち込んだ複数の大型クーラーボックスや収納ケースの中に隠された。男は腐敗臭をごまかすために、大量の猫砂をボックスの中に敷き詰め、その上に切断された頭部を並べた。

一つ、また一つと、部屋の中にクーラーボックスが増えていく。

男はその異臭が漂い、人間の頭部が転がる部屋の中で、平然とスマートフォンをいじり、コンビニ弁当を食べ、次の獲物をSNSで物色し続けていたのである。彼の精神構造は、我々が理解できる人間のそれとは完全に異なっていた。

暴かれた密室と、残された骨

事件の発覚は、一人の被害者の家族による執念の追跡が発端だった。

行方不明となった妹のSNSアカウントにログインした兄が、不審な男とのやり取りを発見。その情報をもとに警察が動き、男のアパートを特定したのである。

秋の深まる頃、警察が男の部屋に踏み込んだ。

ドアを開けた瞬間に鼻を突く、強烈な死臭。そして、狭い部屋のあちこちに積まれたクーラーボックス。捜査員がその一つを開けると、猫砂の中から、腐敗の進んだ複数の人間の頭部が現れた。

最終的に、その六畳ほどの空間から、九人分もの遺体の一部が発見された。日本犯罪史に残る、未曾有の連続猟奇殺人事件が明るみに出た瞬間だった。

しかし、アパートの他の住人たちは、この異常事態に気づいていなかった。

「何か変な臭いはしたが、下水の臭いだと思っていた」

「夜中にドンという物音はしたが、気にならなかった」

壁一枚隔てた隣の部屋で、九人もの人間が殺され、解体されていたというのに、誰も警察を呼ぶことはなかった。他者への無関心が極まった現代の集合住宅において、他人の部屋の異変は「関わってはいけないもの」としてスルーされる。この「他者への徹底した無関心」こそが、男が短期間に九人もの命を奪うことを可能にした最大の要因であった。

その後——死刑囚の冷ややかな日常

逮捕後、男の態度は一貫して冷酷で利己的なものだった。

取り調べや裁判において、彼は被害者への謝罪を口にすることはなかった。むしろ、「被害者も死にたがっていたのだから、自分が殺してやったことは人助けの一面もある」という、自己正当化の論理を平然と展開した。

法廷では、被害者の遺族たちが涙ながらに極刑を求めた。

「娘の骨を返してほしい」「どうしてあんな男に殺されなければならなかったのか」

しかし男は、遺族の悲痛な叫びに耳を傾けるどころか、裁判長に向かって「早く裁判を終わらせてほしい」「拘置所の食事が美味しくない」と不満を漏らす始末であった。彼にとって、九人の命を奪った事実よりも、自分の日々の処遇の方が重要だったのだ。

判決は、当然のように死刑であった。

現在、男は東京の拘置所に死刑囚として収監されている。

彼は今も生きている。毎日三度の食事を与えられ、雨風をしのげる独居房の中で、手記を書いたり、支援者と面会したりしながら日々を過ごしている。報道によれば、彼は面会に来るジャーナリストや女性に対し、金銭の援助や差し入れを要求しているという。彼の中には微塵の反省もなく、ただ「自分の命が尽きるその日まで、いかに快適に過ごすか」という欲求だけが存在している。

一方、被害者の遺族たちは、完全な形で肉体を返されることもなく、永遠の苦しみの中に置き去りにされている。

「死にたい」と呟いた若者たちが本当に求めていたのは、冷たい刃物でも、ノコギリでもなく、誰かに話を聴いてもらい、抱きしめてもらうことだったはずだ。しかし、社会は彼らの孤独を掬い上げることができず、結果として彼らは怪物の餌食となった。

彼らが最後に見た光景は、薄暗いワンルームの天井と、自分を見下ろす無機質な男の目だった。

我々の住むこの国は、防犯カメラが街中に溢れ、警察組織が機能する「安全な国」である。しかし、スマートフォンの画面を一枚隔てた向こう側には、血の匂いが充満する解体場が、今この瞬間も口を開けて待っているのである。

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