高田馬場
「だからやめておけばよかったのに……」
「うるさい」
梢織に背中をさすられながら、鞍作荒騎はドンキホーテで買った烏龍茶を飲んでいた。
「大盛無料だからって絶対鞍作君は並盛だって残しちゃうんだから、がっつくのは卑しいよ? 環境破壊だよ?」
「食べ残しだって土には還って巡り巡ってまた人類の食糧になるじゃないか。人間の口に入らなかったからって環境汚染をしたみたいに言われる筋合いはないね」
高田馬場駅近くの小路に入った所にあるラーメン屋で二人は食事を終えた。
特別な有名店、行列店ではないが、長年ラーメン激戦区の高田馬場の最前線で戦っている店だけあって味も、そして学生街であるので量も申し分ない店であった。
「私はこれから卓球用品見にいくけど、鞍作君も来る?」
「……一応」
荒騎は都会の街の顔を大通りでしか知らなかった。
自分の地元は駅前もロードサイドも大して楽しい施設もないが、都会には逆に住宅街やスーパーマーケットがないのではないかと勘違いしていたほどであった。
高田馬場の卓球用品店はすぐ近くに小学校がある。
荒騎にとっての小学校とは碁盤のように整備された、小さいが、しかし煩雑で迷うということはない地理的用地にあるものだと思っていたから、散歩をしている時にふと都会というものにも当たり前の都会人の日常があるのだということを感じさせられた。
「私カットマン嫌いだから超攻撃型のラケットがいいです」
「早稲田」とは固有の学校を指す言葉ではなくただの地名であるため、高田馬場・早稲田の界隈には「早稲田」と名のついた予備校が目立つ。
高田馬場駅を降りた場所はもちろん、JRの構内の広告も予備校だらけなのは昔からだが、最近は中国語話者のための日本の大学用の予備校の広告が爆発的に増えた。
荒騎は中国史専攻だし排外主義的なものとは正反対の性格だが、この街は東京大学よりも中国人の勢力が及ぶニュー・アカデミック・チャイナタウンと化しているのではないか——そんなことを考えながら、池袋で降りて織と別れた。
次回「船橋」




