第6話「崩さない」
朝、目が覚める。
軽く身体を起こし、周囲を確認する。
静かだ。
変わりない森。
「……まあ、いつも通りか」
小さく呟き、立ち上がる。
今日は特別なことはしない。
いや、出来ないと言った方が近い。
明日は三人組との約束の日。
村へ繋がる日だ。
だからこそ、今日は崩さない。
「回すか」
もう、それが生活になっていた。
◇
最初は罠。
設置場所へ向かう。
歩きながら、少し嫌な予感がしていた。
そして――
「……ゼロか」
立ち止まる。
何も掛かっていなかった。
痕跡も薄い。
完全な空振り。
「……やっぱあるよな」
小さく息を吐く。
分かっていた。
毎日取れるわけじゃない。
以前も空振りはあった。
だが、備蓄量を考えるようになった今は、前より重く感じる。
(やっぱ安定しないな)
肉が入らない。
それだけで、生活全体が少し不安定になる。
少し黙って周囲を見る。
足跡。
踏み跡。
枝の位置。
「……ちょっと浅いか」
罠を触る。
蔓の張り。
締まり。
引っ掛け位置。
少し調整する。
さらに、地面も軽く掘り返す。
木を削って作った簡易スコップを使う。
だが――
「……やっぱ駄目か」
先端が削れていた。
硬い地面を掘るたび、少しずつ潰れていく。
石に当たれば割れる。
湿った土でも歪む。
「木は木だな……」
小さく息を吐く。
無いよりはマシ。
だが、効率が悪い。
掘る。
削る。
運ぶ。
全部が遅かった。
頭に浮かぶのは、前の世界の道具。
(……鉄のスコップ欲しいな)
ショベル。
ツルハシ。
金属製の刃。
あれだけで作業効率が一気に変わる。
今はまだ無理だ。
だが――
(村、か)
少しだけ現実味が増していた。
◇
次は山椒。
獲物はゼロ。
だから大量には採らない。
「……五つだけでいいか」
最低限だけ回収する。
必要以上に増やしても意味はない。
◇
そのまま薬草へ向かう。
いつもの場所。
「五つ」
完全に定期回収になっていた。
採り過ぎない。
枯らさない。
回る量だけ。
「……このくらいが丁度いいか」
少しずつ循環が出来始めていた。
◇
そのまま川へ向かう。
「魚、頼むぞ」
石囲いを調整する。
流れを追い込む。
何度か繰り返して――
「……二匹か」
小さく頷く。
悪くない。
今日はこれで食える。
◇
拠点へ戻る。
石組みの簡易かまどへ火を入れる。
魚を焼く。
静かな時間だった。
「……助かった」
今日は干し肉を使わずに済む。
それだけで大きい。
魚はその日のうちなら悪くない。
だが、時間が経つと一気に臭みが出る。
腹も壊しやすい。
(やっぱ保存向きじゃないな)
だからこそ、干し肉が強い。
加工出来る。
持ち運べる。
保存出来る。
改めて、それを実感する。
◇
食べ終えたあと、魚の骨を並べる。
「……使えるか?」
尖った部分を見る。
小さい。
だが、返しには使えそうだった。
蔓。
繊維。
細枝。
少しずつ加工する。
「……もうちょい引っ掛かり作れそうだな」
完全な知識ではない。
だが、試す価値はある。
罠を少しずつ改良していく。
◇
ついでに拠点の中も整理する。
骨素材置き場。
繊維置き場。
乾燥中の素材。
「……分けた方がいいな」
少しずつ、ただの野営地ではなくなっていた。
作業場。
そんな雰囲気が出始めている。
◇
一息つく。
空を見る。
「……明日か」
三人組との約束の日。
その先には村がある。
少し緊張する。
だが、不思議と焦りはなかった。
「まずは取引だな」
◇
最後に在庫を確認する。
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【在庫】
・干し肉:16
・山椒:20粒(15+5)
・薬草:25束(20+5)
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「……悪くない」
少しずつ積み上がっている。
森の生活は、もう“生存”だけではなくなってきていた。
そして明日。
森の外へ出る。
コウは静かに横になった。
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収支表(第6話終了時点)
■開始
干し肉:16
山椒:15粒
薬草:20束
ルク:0
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■採取・加工
薬草5束採取
山椒5粒採取
魚2匹捕獲
→ 消費
罠改良
魚骨加工
繊維採取
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■消費
魚2匹消費
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■終了
干し肉:16
山椒:20粒
薬草:25束
ルク:0
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資産表(第6話終了時点)
■携帯資産
■武器
木槍1
石ナイフ2
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■作業用品
石斧1
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■食料
干し肉16
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■素材
薬草25束
山椒20粒
魚骨:少量
植物繊維:少量
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■通貨
0ルク
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■固定資産
簡易拠点1
石組み簡易かまど1
干し肉ラック1
薬草乾燥場所1
簡易罠数個
簡易魚囲い1




