第54話「町へ入る日」
朝。
離れの外は、
もう明るかった。
少し冷たい空気。
だが、
天気は良い。
「……よし」
コウが外へ出る。
リアカーは既に置かれていた。
今日は町へ行く日だった。
フェルド。
熊騒ぎ以降、
ようやく動ける。
離れ側では、
リリアが荷物確認をしていた。
「干し肉良し。
小壺良しです」
「ああ」
葉っぱ包み。
紐。
小壺。
販売用荷物を確認していく。
その横では、
木材と木炭も積み込まれていた。
木材30。
木炭30。
かなり場所を取る。
「結構積みますね……」
「まぁ、
今日は荷物多いからな」
コウが軽く縄を締める。
さらに。
吊るせるくん。
葉っぱ袋。
販売布。
細かい道具も積み込んでいく。
シノはその横で、
普通に座っていた。
「ワフ」
「お前は気楽だな……」
コウが少し笑う。
その時。
離れ側へ、
木輪音が近付いてきた。
ゴロゴロ。
かなり重い音だった。
「あ、来ましたね」
リリアがそちらを見る。
ロイド達だった。
ルナ装備済み。
さらに後ろ。
リア馬。
そこに積まれていた物を見て、
セナが少し止まる。
「……うわ」
圧が凄かった。
熊。
毛皮。
骨。
肉。
脂。
巨大な素材が、
そのまま積まれている。
昨日まで戦っていた化け物。
その残骸だった。
「相変わらずデケぇな……」
コウも少し苦笑する。
ロイドが肩を竦めた。
「まだ臭ぇぞこれ」
「だろうな」
その後ろでは、
若い村人達も準備していた。
以前より、
明らかにリアカーが増えている。
木材。
荷袋。
交換品。
少しずつだが、
村の荷運びが変わり始めていた。
セナはその光景を見ている。
「……こんな使ってるのか」
「最近増えたな」
エミルが答える。
「便利だからな。
そりゃ増える」
その後。
ロイドが革袋を差し出す。
「依頼分」
「おう」
コウが受け取った。
「小麦。
塩。
あと鉄類だ」
「ああ」
購入依頼。
輸送手数料。
今日はそれもある。
ロイドはそのまま、
熊側リア馬を親指で指した。
「今日は流石に売れんぞ」
「あー……」
コウも納得する。
この状態で露店営業は、
流石に無理だった。
熊の圧が強過ぎる。
「まぁ、
今日は町入るだけでも十分だろ」
ロイドが笑う。
その後。
準備を終えた一行は、
そのまま街道へ向かった。
朝の街道。
以前より、
人が増えている。
徒歩。
荷運び。
行商。
リアカー。
馬車。
様々な人間が行き交っていた。
その中で。
熊素材リア馬だけが、
明らかに異質だった。
「おい……
あれ熊じゃねぇか?」
「デカ……」
すれ違う行商人が、
普通に距離を取る。
臭いもある。
圧迫感もある。
セナはその様子を見ていた。
「……こんな通るのか」
街道。
人。
荷物。
流れ。
自分の知っている世界より、
ずっと広い。
「毎日こんな感じだな」
コウが普通に返す。
セナは少し黙る。
そして。
前を引くルナを見る。
重い荷。
だが、
普通に引いている。
「……こいつ凄いな」
「ルナか?」
「ああ」
コウは少し笑った。
「前は俺が引いてたぞ」
セナが止まる。
「……は?」
「最初はもっと小さかったしな」
「人力で?」
「ああ」
かなり普通の返事だった。
リリアも少し苦笑する。
「今思うと、
かなり無茶でしたね……」
「まぁな」
当時は、
今よりずっと小規模だった。
荷物も少ない。
一人運ぶ程度。
だが、
それでも十分役立っていた。
セナはまだ少し驚いている。
「で、
その時にリリア運んだんだよ」
「……運んだ?」
「熱で倒れてたので……」
リリアが少し困った顔をする。
「ほとんど歩けなかったんです」
「だから町まで連れてった」
奴隷契約。
登録。
あの頃だった。
セナは少し黙った。
そして、
もう一度ルナを見る。
「……今は?」
「今のルナなら、
2〜3人は余裕だろ」
「ワフ」
シノまで普通に鳴いた。
コウは軽くルナの首を叩く。
「かなり楽になったぞ」
セナは静かに前を見る。
リアカー。
リア馬。
荷運び。
思っていた以上に、
生活を変える道具だった。
しばらく進む。
やがて。
フェルド外壁が見えてきた。
高い壁。
人。
荷車。
門前の騒がしさ。
セナが少し目を見開く。
「……でか」
門前はかなり混んでいた。
だが。
熊素材リア馬が近付いた瞬間、
空気が少し変わる。
「おい……
なんだあれ」
「熊か?」
「でけぇ……」
門兵まで二度見していた。
周囲も少し距離を取る。
熊臭。
巨大毛皮。
存在感が凄い。
シノも少し周囲を見ていた。
だが、
無駄吠えはしない。
そのまま。
一行はフェルドへ入っていった。
フェルド内部。
相変わらず人が多い。
荷車。
呼び声。
金属音。
村とは空気そのものが違う。
セナは周囲を静かに見ていた。
耳が少し忙しそうに動いている。
「……落ち着かねぇな」
「慣れればそんなでもないぞ」
コウが普通に返す。
「いや、
多過ぎるだろ人……」
かなり素直な感想だった。
その途中。
熊素材リア馬へ、
また視線が集まる。
「おい、
あれ昨日の噂のか?」
「マジで仕留めたのかよ……」
普通に聞こえてくる。
ロイドは少し面倒そうな顔をした。
「ほら見ろ。
だから嫌だったんだ」
「まぁ目立つわな……」
コウも苦笑する。
そのまま。
一行は素材売却所へ向かった。
広めの場所。
既に何組か、
解体素材を持ち込んでいる。
だが。
熊素材リア馬が入った瞬間、
空気が変わった。
「……おい」
「デカくねぇか?」
「なんだこれ」
視線が一気に集まる。
セナは少し止まった。
こんな反応になるとは、
思っていなかった。
ロイド達は慣れているのか、
普通に荷を下ろし始める。
毛皮。
骨。
肉。
巨大だった。
特に毛皮を広げた瞬間。
「うお……」
周囲から普通に声が漏れた。
かなり大きい。
商人風の男が近付いてくる。
「おい、
これどこでやった」
「北崩れ側」
「正気か?」
「ギリギリな」
ロイドが普通に返す。
そのまま査定が始まる。
毛並み確認。
傷確認。
爪。
牙。
次々見られていく。
「傷多いな」
「このサイズでこの程度なら十分だ」
ロイドが返す。
「北崩れ側だぞ?」
「……まぁ、
それはそうだが」
商人が少し唸る。
その横。
エミルがぼそっと言った。
「口ん中入ったからな」
「は?」
「槍。
よく分かんねぇけど、
たまたま奥まで入った」
「お前それで死んだのか?」
「知らん。
でもそっから一気に崩れた」
かなり雑な説明だった。
だが。
ロイドは普通に頷く。
「あれ長引いてたら、
もっとボロボロだったな」
「だろうな」
商人側まで少し納得していた。
コウ達は少し離れて見ている。
セナは完全に止まっていた。
「……こんなになるのか」
「まぁ熊だからな」
コウは軽く答える。
だが。
ロイド達の空気は、
もう完全に違っていた。
「いや高ぇ」
「このサイズ見て言ってんのか?」
普通にやり合っている。
コウは少し苦笑した。
「もう俺ら入れんなこれ」
「ですね……」
リリアも頷く。
セナは静かに見ていた。
昨日。
死ぬ気で戦っていた相手。
それが今、
大量の金になる物として扱われている。
少し不思議だった。
「……熊って、
こんな金動くのか」
「まぁ、
普通はもっと小さいしな」
コウが言う。
「今回のはかなりデカい」
セナは少し黙った。
あの化け物。
ただ危険なだけじゃない。
町。
商人。
村。
全部動かす存在だった。
しばらくして。
ロイドが大きく息を吐く。
「全部今日じゃ終わらんらしい」
「あー……」
コウも少し納得する。
量が多過ぎる。
解体。
加工。
査定。
一気には無理なのだろう。
「また後日来るかもしれん」
「場合によっちゃ、
運搬頼むぞ」
「あー……
まぁ、
どうせまた街来るしな」
コウが普通に返す。
ロイドも軽く笑った。
「助かる」
セナはその会話を聞いていた。
街へ行く。
運ぶ。
また戻る。
それを、
もう普通に話している。
コウ達にとって、
フェルドはもう特別な場所ではないらしい。
その後。
熊査定が一段落し、
一行はまとめて木材側へ移動した。
木材。
木炭。
リアカー。
荷を見た男達が、
普通に近付いてくる。
「また増えたな」
「最近多いぞ」
「便利だからな」
その視線は、
自然とリア馬へ向いていた。
「これが例のか?」
「ああ」
ロイドが答える。
「荷運びかなり変わったぞ」
「見りゃ分かる」
男が苦笑した。
以前より、
明らかに荷が増えている。
人も動いている。
少しずつだが、
街道そのものが変わり始めていた。
その後。
ロイドが肩を回す。
「俺らはこの後、
まだ商会回る」
「おう」
「お前らは露店だろ?」
「その予定」
コウが頷く。
その途中。
ロイドが少し笑った。
「また泊まりか?」
「あー……
多分な」
コウも少し笑う。
「前来た時も泊まりだったし」
セナがそちらを見る。
リリアは少し困った顔をした。
「あの時は本当に余裕無かったですね……」
「熱で潰れてたしな」
「うぅ……」
少し恥ずかしそうだった。
セナは静かに聞いている。
前。
今。
同じ町。
だが、
状況は全然違う。
今は。
荷物もある。
仲間もいる。
商売もある。
かなり変わった。
その後。
コウがリアカー側へ向く。
「じゃあ、
露店行ってくるわ」
「ああ」
ロイドが軽く手を上げる。
「また村でな」
そのまま。
コウ達は露店側へ向かい始めた。
フェルドの通りを進む。
人が多い。
露店。
荷車。
呼び込み。
匂いまで違う。
焼いた肉。
香草。
酒。
鉄。
様々な匂いが混ざっていた。
セナは周囲を見回している。
耳が忙しなく動いていた。
「……凄ぇな」
「今日はまだマシな方だぞ」
コウが普通に返す。
「これで?」
「ああ」
セナは少し黙った。
村とは、
もう完全に別世界だった。
その途中。
リア馬へ視線が向く。
「お、
また来たな」
「今日は熊積んでねぇのか」
「流石にもう下ろした」
コウが苦笑する。
少しずつだが、
顔を覚えられ始めている。
そのまま。
一行は露店側へ向かった。
以前使っていた場所。
通り端。
人流が少し寄る位置だった。
「空いてるな」
「ですね」
リリアも頷く。
コウはそのまま、
リアカーを止めた。
荷台を見る。
干し肉。
小壺。
葉っぱ包み。
販売道具。
今日はここまで。
販売準備は、
次から始まる。
セナは周囲を見ていた。
露店。
客。
商人。
呼び込み。
値段交渉。
全部が新しい。
「……ここで売るのか」
「ああ」
コウは普通に返す。
「どうせ町来るなら、
売った方が早いしな」
かなり軽い返事だった。
だが。
セナには少し不思議だった。
この二人。
気付けば、
普通に町で商売している。
森で生きていた連中とは、
かなり違う。
その時。
シノが小さく鼻を動かした。
「ワフ」
「腹減ったか?」
コウが少し笑う。
シノは普通に尻尾を振った。
周囲の子供が少し見る。
「犬だ」
「ちっちゃいな」
シノは少しだけそちらを見る。
だが、
吠えたりはしない。
セナはその様子まで見ていた。
「……本当に変な奴らだな」
「また言ったな」
コウが笑う。
リリアまで少し笑っている。
フェルドの喧騒の中。
コウ達は、
露店を始める場所へ辿り着いていた。
PL(第54話終了時)
通常収支
項目増減
開始233ルク
変動なし
終了233ルク
⸻
食料変動
普通干し肉A
開始4
変動なし
残4
⸻
普通干し肉B
開始5
変動なし
残5
⸻
普通干し肉C
開始5
変動なし
残5
⸻
普通干し肉D
開始30
変動なし
残30
⸻
塩干し肉A
開始10
変動なし
残10
⸻
塩干し肉B(加工中)
開始10
変動なし
残10
⸻
塩漬け魚A
開始1
変動なし
残1
⸻
塩漬け魚B
開始6
変動なし
残6
⸻
粉類変動
山椒粉
開始56
変動なし
残56
⸻
セルハ粉
開始56
変動なし
残56
⸻
唐辛子粉
開始25
変動なし
残25
⸻
粉塩
開始35
変動なし
残35
⸻
素材・薬品
乾燥薬草
開始51
変動なし
残51
⸻
乾燥山椒
開始80
変動なし
残80
⸻
乾燥セルハ草
開始10
変動なし
残10
⸻
乾燥唐辛子
開始25
変動なし
残25
⸻
木材
開始30
納品預かり中
残0(町側預かり)
⸻
木炭
開始30
納品預かり中
残0(町側預かり)
⸻
BL(第54話終了時)
食料
完成品(携帯・販売用)
* 普通干し肉A×4
* 普通干し肉B×5
* 普通干し肉C×5
* 普通干し肉D×30
* 塩干し肉A×10
* 塩漬け魚A×1
* 塩漬け魚B×6
⸻
加工中(携帯中)
* 塩干し肉B×10
※吊るせるくんごと町へ持参中
※加工継続中
⸻
粉類(小壺・携帯中)
* 山椒粉×56
* 唐辛子粉×25
* セルハ粉×56
* 粉塩×35
⸻
素材・薬品(携帯中)
* 乾燥薬草×51
* 生山椒×5
* 乾燥山椒×80
* 乾燥セルハ草×10
* 乾燥唐辛子×25
⸻
販売用積載
* 干し肉各種積載済み
* 小壺類積載済み
* 葉っぱ包み積載済み
* 吊るせるくん積載済み
* 販売布積載済み
⸻
町側預かり
* 木材×30
* 木炭×30
※フェルド側納品預かり中
⸻
離れ保管
* 離れ簡易かまど
* 水桶
* 水袋
* 簡易寝具
※離れ備品
* 予備葉っぱ
* 予備紐
* 雑布×2
* 薪(大量)
⸻
熊関連
* 熊素材 査定中
* 毛皮・骨・肉・脂 分別中
* 一部後日引取予定
* ロイド側管理
⸻
魚関連
* 魚罠×4(回収済み)
* 交換用魚罠×4(回収済み)
⸻
動物罠
* 動物罠継続設置中
* 本日確認なし
⸻
武器・工具
* 剣×1
* 槍×1
* 片手斧×1
* ナタ×1
* ツルハシ×1
* ショベル×1
* 一輪車×1
⸻
同行状況
* セナ 初フェルド到着
* セナ 街道物流確認
* セナ 熊素材査定確認
* コウ達 露店場所到着
* 次話より販売開始予定
⸻
物流状況
* リアカー利用者増加傾向
* フェルド側でリア馬認知拡大中
* 熊素材量過多により後日追加運搬可能性あり
* コウ側、定期フェルド往復状態へ移行中




