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コウの物語  作者: パルス


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53/67

第54話「町へ入る日」



 朝。


 離れの外は、

 もう明るかった。


 少し冷たい空気。


 だが、

 天気は良い。


「……よし」


 コウが外へ出る。


 リアカーは既に置かれていた。


 今日は町へ行く日だった。


 フェルド。


 熊騒ぎ以降、

 ようやく動ける。


 離れ側では、

 リリアが荷物確認をしていた。


「干し肉良し。

 小壺良しです」


「ああ」


 葉っぱ包み。


 紐。


 小壺。


 販売用荷物を確認していく。


 その横では、

 木材と木炭も積み込まれていた。


 木材30。


 木炭30。


 かなり場所を取る。


「結構積みますね……」


「まぁ、

 今日は荷物多いからな」


 コウが軽く縄を締める。


 さらに。


 吊るせるくん。


 葉っぱ袋。


 販売布。


 細かい道具も積み込んでいく。


 シノはその横で、

 普通に座っていた。


「ワフ」


「お前は気楽だな……」


 コウが少し笑う。


 その時。


 離れ側へ、

 木輪音が近付いてきた。


 ゴロゴロ。


 かなり重い音だった。


「あ、来ましたね」


 リリアがそちらを見る。


 ロイド達だった。


 ルナ装備済み。


 さらに後ろ。


 リア馬。


 そこに積まれていた物を見て、

 セナが少し止まる。


「……うわ」


 圧が凄かった。


 熊。


 毛皮。


 骨。


 肉。


 脂。


 巨大な素材が、

 そのまま積まれている。


 昨日まで戦っていた化け物。


 その残骸だった。


「相変わらずデケぇな……」


 コウも少し苦笑する。


 ロイドが肩を竦めた。


「まだ臭ぇぞこれ」


「だろうな」


 その後ろでは、

 若い村人達も準備していた。


 以前より、

 明らかにリアカーが増えている。


 木材。


 荷袋。


 交換品。


 少しずつだが、

 村の荷運びが変わり始めていた。


 セナはその光景を見ている。


「……こんな使ってるのか」


「最近増えたな」


 エミルが答える。


「便利だからな。

 そりゃ増える」


 その後。


 ロイドが革袋を差し出す。


「依頼分」


「おう」


 コウが受け取った。


「小麦。

 塩。

 あと鉄類だ」


「ああ」


 購入依頼。


 輸送手数料。


 今日はそれもある。


 ロイドはそのまま、

 熊側リア馬を親指で指した。


「今日は流石に売れんぞ」


「あー……」


 コウも納得する。


 この状態で露店営業は、

 流石に無理だった。


 熊の圧が強過ぎる。


「まぁ、

 今日は町入るだけでも十分だろ」


 ロイドが笑う。


 その後。


 準備を終えた一行は、

 そのまま街道へ向かった。


 朝の街道。


 以前より、

 人が増えている。


 徒歩。


 荷運び。


 行商。


 リアカー。


 馬車。


 様々な人間が行き交っていた。


 その中で。


 熊素材リア馬だけが、

 明らかに異質だった。


「おい……

 あれ熊じゃねぇか?」


「デカ……」


 すれ違う行商人が、

 普通に距離を取る。


 臭いもある。


 圧迫感もある。


 セナはその様子を見ていた。


「……こんな通るのか」


 街道。


 人。


 荷物。


 流れ。


 自分の知っている世界より、

 ずっと広い。


「毎日こんな感じだな」


 コウが普通に返す。


 セナは少し黙る。


 そして。


 前を引くルナを見る。


 重い荷。


 だが、

 普通に引いている。


「……こいつ凄いな」


「ルナか?」


「ああ」


 コウは少し笑った。


「前は俺が引いてたぞ」


 セナが止まる。


「……は?」


「最初はもっと小さかったしな」


「人力で?」


「ああ」


 かなり普通の返事だった。


 リリアも少し苦笑する。


「今思うと、

 かなり無茶でしたね……」


「まぁな」


 当時は、

 今よりずっと小規模だった。


 荷物も少ない。


 一人運ぶ程度。


 だが、

 それでも十分役立っていた。


 セナはまだ少し驚いている。


「で、

 その時にリリア運んだんだよ」


「……運んだ?」


「熱で倒れてたので……」


 リリアが少し困った顔をする。


「ほとんど歩けなかったんです」


「だから町まで連れてった」


 奴隷契約。


 登録。


 あの頃だった。


 セナは少し黙った。


 そして、

 もう一度ルナを見る。


「……今は?」


「今のルナなら、

 2〜3人は余裕だろ」


「ワフ」


 シノまで普通に鳴いた。


 コウは軽くルナの首を叩く。


「かなり楽になったぞ」


 セナは静かに前を見る。


 リアカー。


 リア馬。


 荷運び。


 思っていた以上に、

 生活を変える道具だった。


 しばらく進む。


 やがて。


 フェルド外壁が見えてきた。


 高い壁。


 人。


 荷車。


 門前の騒がしさ。


 セナが少し目を見開く。


「……でか」


 門前はかなり混んでいた。


 だが。


 熊素材リア馬が近付いた瞬間、

 空気が少し変わる。


「おい……

 なんだあれ」


「熊か?」


「でけぇ……」


 門兵まで二度見していた。


 周囲も少し距離を取る。


 熊臭。


 巨大毛皮。


 存在感が凄い。


 シノも少し周囲を見ていた。


 だが、

 無駄吠えはしない。


 そのまま。


 一行はフェルドへ入っていった。


 フェルド内部。


 相変わらず人が多い。


 荷車。


 呼び声。


 金属音。


 村とは空気そのものが違う。


 セナは周囲を静かに見ていた。


 耳が少し忙しそうに動いている。


「……落ち着かねぇな」


「慣れればそんなでもないぞ」


 コウが普通に返す。


「いや、

 多過ぎるだろ人……」


 かなり素直な感想だった。


 その途中。


 熊素材リア馬へ、

 また視線が集まる。


「おい、

 あれ昨日の噂のか?」


「マジで仕留めたのかよ……」


 普通に聞こえてくる。


 ロイドは少し面倒そうな顔をした。


「ほら見ろ。

 だから嫌だったんだ」


「まぁ目立つわな……」


 コウも苦笑する。


 そのまま。


 一行は素材売却所へ向かった。


 広めの場所。


 既に何組か、

 解体素材を持ち込んでいる。


 だが。


 熊素材リア馬が入った瞬間、

 空気が変わった。


「……おい」


「デカくねぇか?」


「なんだこれ」


 視線が一気に集まる。


 セナは少し止まった。


 こんな反応になるとは、

 思っていなかった。


 ロイド達は慣れているのか、

 普通に荷を下ろし始める。


 毛皮。


 骨。


 肉。


 巨大だった。


 特に毛皮を広げた瞬間。


「うお……」


 周囲から普通に声が漏れた。


 かなり大きい。


 商人風の男が近付いてくる。


「おい、

 これどこでやった」


「北崩れ側」


「正気か?」


「ギリギリな」


 ロイドが普通に返す。


 そのまま査定が始まる。


 毛並み確認。


 傷確認。


 爪。


 牙。


 次々見られていく。


「傷多いな」


「このサイズでこの程度なら十分だ」


 ロイドが返す。


「北崩れ側だぞ?」


「……まぁ、

 それはそうだが」


 商人が少し唸る。


 その横。


 エミルがぼそっと言った。


「口ん中入ったからな」


「は?」


「槍。

 よく分かんねぇけど、

 たまたま奥まで入った」


「お前それで死んだのか?」


「知らん。

 でもそっから一気に崩れた」


 かなり雑な説明だった。


 だが。


 ロイドは普通に頷く。


「あれ長引いてたら、

 もっとボロボロだったな」


「だろうな」


 商人側まで少し納得していた。


 コウ達は少し離れて見ている。


 セナは完全に止まっていた。


「……こんなになるのか」


「まぁ熊だからな」


 コウは軽く答える。


 だが。


 ロイド達の空気は、

 もう完全に違っていた。


「いや高ぇ」


「このサイズ見て言ってんのか?」


 普通にやり合っている。


 コウは少し苦笑した。


「もう俺ら入れんなこれ」


「ですね……」


 リリアも頷く。


 セナは静かに見ていた。


 昨日。


 死ぬ気で戦っていた相手。


 それが今、

 大量の金になる物として扱われている。


 少し不思議だった。


「……熊って、

 こんな金動くのか」


「まぁ、

 普通はもっと小さいしな」


 コウが言う。


「今回のはかなりデカい」


 セナは少し黙った。


 あの化け物。


 ただ危険なだけじゃない。


 町。


 商人。


 村。


 全部動かす存在だった。


 しばらくして。


 ロイドが大きく息を吐く。


「全部今日じゃ終わらんらしい」


「あー……」


 コウも少し納得する。


 量が多過ぎる。


 解体。


 加工。


 査定。


 一気には無理なのだろう。


「また後日来るかもしれん」


「場合によっちゃ、

 運搬頼むぞ」


「あー……

 まぁ、

 どうせまた街来るしな」


 コウが普通に返す。


 ロイドも軽く笑った。


「助かる」


 セナはその会話を聞いていた。


 街へ行く。


 運ぶ。


 また戻る。


 それを、

 もう普通に話している。


 コウ達にとって、

 フェルドはもう特別な場所ではないらしい。


 その後。


 熊査定が一段落し、

 一行はまとめて木材側へ移動した。


 木材。


 木炭。


 リアカー。


 荷を見た男達が、

 普通に近付いてくる。


「また増えたな」


「最近多いぞ」


「便利だからな」


 その視線は、

 自然とリア馬へ向いていた。


「これが例のか?」


「ああ」


 ロイドが答える。


「荷運びかなり変わったぞ」


「見りゃ分かる」


 男が苦笑した。


 以前より、

 明らかに荷が増えている。


 人も動いている。


 少しずつだが、

 街道そのものが変わり始めていた。


 その後。


 ロイドが肩を回す。


「俺らはこの後、

 まだ商会回る」


「おう」


「お前らは露店だろ?」


「その予定」


 コウが頷く。


 その途中。


 ロイドが少し笑った。


「また泊まりか?」


「あー……

 多分な」


 コウも少し笑う。


「前来た時も泊まりだったし」


 セナがそちらを見る。


 リリアは少し困った顔をした。


「あの時は本当に余裕無かったですね……」


「熱で潰れてたしな」


「うぅ……」


 少し恥ずかしそうだった。


 セナは静かに聞いている。


 前。


 今。


 同じ町。


 だが、

 状況は全然違う。


 今は。


 荷物もある。


 仲間もいる。


 商売もある。


 かなり変わった。


 その後。


 コウがリアカー側へ向く。


「じゃあ、

 露店行ってくるわ」


「ああ」


 ロイドが軽く手を上げる。


「また村でな」


 そのまま。


 コウ達は露店側へ向かい始めた。


 フェルドの通りを進む。


 人が多い。


 露店。


 荷車。


 呼び込み。


 匂いまで違う。


 焼いた肉。


 香草。


 酒。


 鉄。


 様々な匂いが混ざっていた。


 セナは周囲を見回している。


 耳が忙しなく動いていた。


「……凄ぇな」


「今日はまだマシな方だぞ」


 コウが普通に返す。


「これで?」


「ああ」


 セナは少し黙った。


 村とは、

 もう完全に別世界だった。


 その途中。


 リア馬へ視線が向く。


「お、

 また来たな」


「今日は熊積んでねぇのか」


「流石にもう下ろした」


 コウが苦笑する。


 少しずつだが、

 顔を覚えられ始めている。


 そのまま。


 一行は露店側へ向かった。


 以前使っていた場所。


 通り端。


 人流が少し寄る位置だった。


「空いてるな」


「ですね」


 リリアも頷く。


 コウはそのまま、

 リアカーを止めた。


 荷台を見る。


 干し肉。


 小壺。


 葉っぱ包み。


 販売道具。


 今日はここまで。


 販売準備は、

 次から始まる。


 セナは周囲を見ていた。


 露店。


 客。


 商人。


 呼び込み。


 値段交渉。


 全部が新しい。


「……ここで売るのか」


「ああ」


 コウは普通に返す。


「どうせ町来るなら、

 売った方が早いしな」


 かなり軽い返事だった。


 だが。


 セナには少し不思議だった。


 この二人。


 気付けば、

 普通に町で商売している。


 森で生きていた連中とは、

 かなり違う。


 その時。


 シノが小さく鼻を動かした。


「ワフ」


「腹減ったか?」


 コウが少し笑う。


 シノは普通に尻尾を振った。


 周囲の子供が少し見る。


「犬だ」


「ちっちゃいな」


 シノは少しだけそちらを見る。


 だが、

 吠えたりはしない。


 セナはその様子まで見ていた。


「……本当に変な奴らだな」


「また言ったな」


 コウが笑う。


 リリアまで少し笑っている。


 フェルドの喧騒の中。


 コウ達は、

 露店を始める場所へ辿り着いていた。


PL(第54話終了時)


通常収支


項目増減

開始233ルク

変動なし

終了233ルク


⸻


食料変動


普通干し肉A

開始4

変動なし

残4


⸻


普通干し肉B

開始5

変動なし

残5


⸻


普通干し肉C

開始5

変動なし

残5


⸻


普通干し肉D

開始30

変動なし

残30


⸻


塩干し肉A

開始10

変動なし

残10


⸻


塩干し肉B(加工中)

開始10

変動なし

残10


⸻


塩漬け魚A

開始1

変動なし

残1


⸻


塩漬け魚B

開始6

変動なし

残6


⸻


粉類変動


山椒粉

開始56

変動なし

残56


⸻


セルハ粉

開始56

変動なし

残56


⸻


唐辛子粉

開始25

変動なし

残25


⸻


粉塩

開始35

変動なし

残35


⸻


素材・薬品


乾燥薬草

開始51

変動なし

残51


⸻


乾燥山椒

開始80

変動なし

残80


⸻


乾燥セルハ草

開始10

変動なし

残10


⸻


乾燥唐辛子

開始25

変動なし

残25


⸻


木材

開始30

納品預かり中

残0(町側預かり)


⸻


木炭

開始30

納品預かり中

残0(町側預かり)


⸻


BL(第54話終了時)


食料


完成品(携帯・販売用)


* 普通干し肉A×4

* 普通干し肉B×5

* 普通干し肉C×5

* 普通干し肉D×30

* 塩干し肉A×10

* 塩漬け魚A×1

* 塩漬け魚B×6


⸻


加工中(携帯中)


* 塩干し肉B×10

 ※吊るせるくんごと町へ持参中

 ※加工継続中


⸻


粉類(小壺・携帯中)


* 山椒粉×56

* 唐辛子粉×25

* セルハ粉×56

* 粉塩×35


⸻


素材・薬品(携帯中)


* 乾燥薬草×51

* 生山椒×5

* 乾燥山椒×80

* 乾燥セルハ草×10

* 乾燥唐辛子×25


⸻


販売用積載


* 干し肉各種積載済み

* 小壺類積載済み

* 葉っぱ包み積載済み

* 吊るせるくん積載済み

* 販売布積載済み


⸻


町側預かり


* 木材×30

* 木炭×30

 ※フェルド側納品預かり中


⸻


離れ保管


* 離れ簡易かまど

* 水桶

* 水袋

* 簡易寝具

 ※離れ備品

* 予備葉っぱ

* 予備紐

* 雑布×2

* 薪(大量)


⸻


熊関連


* 熊素材 査定中

* 毛皮・骨・肉・脂 分別中

* 一部後日引取予定

* ロイド側管理


⸻


魚関連


* 魚罠×4(回収済み)

* 交換用魚罠×4(回収済み)


⸻


動物罠


* 動物罠継続設置中

* 本日確認なし


⸻


武器・工具


* 剣×1

* 槍×1

* 片手斧×1

* ナタ×1

* ツルハシ×1

* ショベル×1

* 一輪車×1


⸻


同行状況


* セナ 初フェルド到着

* セナ 街道物流確認

* セナ 熊素材査定確認

* コウ達 露店場所到着

* 次話より販売開始予定


⸻


物流状況


* リアカー利用者増加傾向

* フェルド側でリア馬認知拡大中

* 熊素材量過多により後日追加運搬可能性あり

* コウ側、定期フェルド往復状態へ移行中


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