第4話「繋がり」
朝。
目を覚ましてすぐ、コウは外を確認した。
静かだった。
昨日までと同じ、変化のない森。
(……今日は外れそうだな)
なんとなく、そんな気がした。
「まあ、やるか」
立ち上がり、いつもの流れで動き出す。
◇
まずは罠。
設置した場所へ向かう。
歩きながら、嫌な予感が少しずつ強くなる。
そして――
「……外れか」
罠には何も掛かっていなかった。
痕跡も薄い。
今日は完全に空振りだ。
「きついな、これは」
小さく息を吐く。
肉が入らないのは痛い。
◇
次に山椒の場所へ向かう。
実はなっている。
量も悪くない。
だが――
「……今日はいいか」
手を伸ばしかけ、止める。
肉がないなら使わない。
無駄に採っても意味がなかった。
判断し、そのまま引き返す。
◇
帰り道。
山菜を見つける。
葉は広がっている。
量もある。
一瞬、足が止まった。
(……いや、駄目だな)
コウは小さく首を振る。
鍋がない。
ちゃんと煮られない。
アクも抜けない。
焼くだけで食えば、腹を壊す可能性が高かった。
(酸味も強いしな……)
この世界へ来てから、そこはなんとなく分かっていた。
刺激が強いものは危ない。
まして、今は腹を壊す余裕なんてない。
「……ひもじいな」
ぽつりと漏れる。
だが、採らない。
食えないものを抱えても意味はなかった。
◇
次は薬草。
いつもの場所を回る。
「……五つか」
悪くはない。
だが、多くもなかった。
とりあえず確保しておく。
◇
そのまま川へ向かう。
水面を覗き込む。
「頼むぞ……」
軽く追い込みを試す。
結果――
「……一匹」
苦笑が漏れた。
「坊主よりはマシか」
小さく呟く。
魚を持ち上げる。
細い。
大きくもない。
「やっぱ弱いな」
その場で焼いて食べる。
足りない。
全然足りなかった。
だが、魚は仕方ない。
時間が経つと、一気に臭みが強くなる。
腹も壊しやすい。
(……保存向きじゃないな)
加工出来る肉との差を、コウは少しずつ理解し始めていた。
◇
拠点へ戻る。
火の前へ座る。
だが、追加で食うものはない。
腹は減っている。
それでも、今ある干し肉を減らしすぎるわけにもいかなかった。
(今日は厳しいな……)
そう思った、その時だった。
――音。
微かな足音。
枝を踏む気配。
コウは顔を上げた。
(……来たな)
ゆっくり立ち上がる。
視線の先。
人影が三つ。
剣。
槍。
弓。
(狩り組か)
その視線が、すぐ別のものへ向く。
――獲物。
ウサギが二体。
(……いけるな)
判断は早かった。
◇
コウはゆっくり前へ出る。
「――ちょっといいか」
三人がこちらを見る。
警戒はある。
だが敵意はない。
コウは距離を保ったまま、手を見せた。
そして――
干し肉を取り出す。
風に乗って香りが広がる。
三人の反応が変わった。
明らかに食いついた。
(やっぱりな)
「交換、しないか?」
短く伝える。
三人が顔を見合わせた。
視線は干し肉とウサギを行き来している。
コウは軽く考える。
(普通なら――)
干し肉一つで、ウサギ一体。
それが妥当。
だが今回は違う。
(三人いるしな)
小さく息を吐く。
「三つ出す」
指で示す。
「そっちは、その二体でいい」
少し間が空く。
三人はまた顔を見合わせ――
すぐに頷いた。
「いいぞ」
あっさり決まる。
◇
交換成立。
干し肉三つ。
ウサギ二体。
受け取る。
ずしりとした重み。
(……十分だな)
向こうはすでに干し肉を口へ運んでいた。
反応は分かりやすい。
「うまっ……!」
「なんだこれ……」
「味ついてるぞ……!」
(まあ、そうなるよな)
少しだけ口元が緩む。
(かなり得だな)
頭の中で計算する。
ウサギ一体で干し肉五つ。
二体なら十。
それを三つで手に入れた。
(悪くない)
◇
ふと、一人が声をかけてくる。
「なあ、次いつ来る?」
コウは少し考えた。
「……三日後でどうだ?」
「いいな」
すぐ返ってくる。
そこで、もう一歩踏み込む。
「できれば、肉……多めに用意してもらえると助かる」
一人が肩をすくめた。
「それは狩り次第だな」
「約束はできねえが、まあ頑張る」
「……それでいい」
無理は言わない。
そして、もう一つ。
「あと、村の場所。教えてもらえないか?」
三人が少し反応する。
少し考え――
一人が口を開いた。
「じゃあ、三日後だな」
「次の取引が終わったら、案内してやる」
コウは軽く頷く。
「それでいい」
約束成立だった。
◇
少しの沈黙。
やがて――
「じゃあな」
三人が去っていく。
コウはその背中を見送り、小さく呟く。
「……繋がったな」
◇
拠点へ戻る。
すぐに作業へ入った。
石ナイフを取り出す。
ウサギを捌く。
(やっぱり、この量は助かるな)
肉を分ける。
干し肉用へ回す。
山椒を取り出す。
「10、使うか」
潰し、擦り込む。
干し場へ吊るす。
風へ当てる。
これで――
回る。
◇
作業を終え、腰を下ろす。
干し肉を2つ取り出した。
「……今日は食っとくか」
ゆっくり噛む。
味が広がる。
「……やっぱ、これだな」
ようやく落ち着いた。
◇
空を見上げる。
(村、か)
少しだけ笑う。
「面白くなってきたな」
最後に在庫を確認した。
⸻
収支表(第4話終了時点)
開始
* 干し肉:6
* 山椒:20粒
* 薬草:10束
* ルク:0
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採取・加工
* 薬草5束採取
* 魚1匹捕獲
* ウサギ2体入手
→ 干し肉加工
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交換
* 干し肉3
→ ウサギ2体交換
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消費
* 魚1匹消費
* 山椒10粒
→ 干し肉加工用
* 干し肉2消費
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終了
* 干し肉:11
* 山椒:10粒
* 薬草:15束
* ルク:0
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資産表(第4話終了時点)
携帯資産
武器
* 木槍1
* 石ナイフ2
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作業用品
* 石斧1
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食料
* 干し肉11
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素材
* 薬草15束
* 山椒10粒
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通貨
* 0ルク
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固定資産
* 簡易拠点1
* 干し肉ラック1
* 薬草乾燥場所1
* 簡易罠数個
* 簡易魚囲い1




