第1話「森の目覚め」
目を覚ましたとき、最初に感じたのは土の匂いだった。
湿った空気。
背中に伝わる冷たい地面の感触。
ゆっくり目を開ける。
視界いっぱいに広がっていたのは、見上げるほど高い木々だった。
「……森か」
短く呟き、体を起こす。
まずは状況確認。
ポケットを探る。
スマホ、なし。
財布、なし。
鍵、なし。
「……何もないな」
軽く息を吐く。
記憶を辿る。
仕事帰り。
いつもの道。
スマホを見ながら歩いて――
そこで記憶が途切れている。
「事故、かな」
周囲を見渡す。
人工物は見当たらない。
道もない。
建物もない。
あるのは木と土だけだった。
「……まあ」
少し考え、結論を出す。
「異世界、っぽいな」
口にした瞬間、胸の奥が少し軽くなる。
(……異世界か)
(こういうの、よく読んでたな)
いわゆる異世界もの。
――なろう系。
(……正直、ちょっと楽しい)
ふと、あることを思い出す。
(こういう時ってさ)
反射的に、自分の身体を確認した。
腕を動かす。
肩を回す。
軽く跳ぶ。
「……軽いな」
明らかに身体が動く。
(これ、若返ってるな)
すぐに確信した。
(当たりじゃん)
少し気分が上がる。
そして、小さく息を吐いた。
(……52歳の身体からしたら、これだけでも十分ありがたいか)
思わず苦笑する。
関節の重さがない。
疲労感もない。
昔の身体だ。
(まあ、欲を言えば色々あるけどな)
そう思いながらも、不満より満足感の方が大きかった。
だが――
(……で、能力は?)
軽く集中してみる。
魔法をイメージ。
何も起きない。
ステータス画面。
出ない。
スキル。
反応なし。
「……なし、か」
あっさり終了した。
(神様にも会ってないしな)
(まあ、そんなもんか)
肩の力を抜く。
(でもまあ、身体が若いだけでも十分か)
気持ちを切り替える。
「とりあえず、生きるか」
必要なのは、
水。
食料。
安全。
順番は分かっている。
コウは地形を確認し、低い方へ歩き始めた。
◇
しばらく進んだところで、足を止める。
「……これ」
見覚えのある草が生えていた。
しゃがみ込み、葉を軽く潰す。
独特の香りが立った。
「薬草っぽいな」
その瞬間。
扱い方が妙にはっきり頭へ浮かぶ。
「乾燥させた方がいい、か」
口に出してから、少し考える。
「……なんか、やたら分かりやすいな」
知識として知っていた気はする。
だが、ここまで整理されていただろうか。
(若いとこんな感じだっけ)
少し首を傾げる。
まあいい。
「使えるなら問題ないか」
コウは薬草を採取した。
そのまま歩き続ける。
すると――
「……罠か」
小動物が罠に掛かっていた。
周囲を確認する。
人の気配はない。
「ちょっと待つか」
少し様子を見る。
……誰も来ない。
「じゃ、もらうか」
コウは手早く仕留めた。
そこで次を考える。
「……保存どうするかだな」
このままでは腐る。
「干し肉、かな」
肉を処理しながら、手順が自然と頭へ浮かぶ。
(やっぱりやりやすいな)
だが――
「……塩ないか」
少し考え、周囲を見る。
「代わりになるやつ、探すか」
森を歩く。
香りの強い植物を探す。
そして――
「……これ、いけそうだな」
実を潰す。
ピリッとした香りが広がった。
「山椒っぽい」
肉へ擦り込む。
簡易の干し場を作る。
作業は驚くほどスムーズだった。
時間が経つ。
形になった干し肉を、一口齧る。
「……普通にうまいな」
ちゃんと味が付いている。
「これ、いけるな」
頭の中で整理する。
生肉は腐る。
干し肉は持つ。
しかも味付き。
「……価値、全然違うな」
薬草も同じだった。
素材と加工品。
差は大きい。
「……これ、商売になるな」
コウは小さく笑った。
戦う力はない。
魔法もない。
だが――
「稼ぐことはできそうだな」
やることは決まった。
「人探すか」
売る相手が必要だ。
情報も欲しい。
コウは立ち上がる。
一歩踏み出す。
何もないところからのスタート。
だが――
手の中には、もう商品がある。
(……さて、どこまで通じるかね)
少しだけ口元を緩めながら、
神谷恒一――コウは、森の奥へ歩き出した。
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日数管理(1日目)
* 朝:森で目覚める
* 昼:薬草採取、小動物回収
* 夕方:山椒発見、干し肉加工
* 夜前:人里を探して移動開始
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収支表(1日目終了時点)
開始
* 所持金:0ルク
* 所持品:なし
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採取
* 薬草:数本
* 山椒:少量
* 小動物肉:1
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加工
* 小動物肉1
→ 干し肉1
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消費
* 山椒:少量使用
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終了
* 干し肉:1
* 薬草:数本
* 山椒:少量
* 所持金:0ルク
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資産表(1日目終了時点)
携帯資産
食料
* 干し肉:1
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素材
* 薬草:数本
* 山椒:少量
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通貨
* 0ルク
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拠点保管
* なし
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固定資産
* なし
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拠点
* なし




