第5話 メールニア帝国
第5話 メールニア帝国
メールニア帝国 帝都 ガッパギア
メールニア帝国はエルミハナ大陸の約半分を支配する大国であり高度文明大国の中で最も繁栄している国であり、次の準列強国に選ばれる国としても有名である。
その帝都であり港湾都市でもあるガッパギアは人口90万人の大都市であり、エルミハナ大陸の交易の中心で毎日多くの人々が賑わっている。
その都市の道路には馬車が走っているなかメールニア帝国軍の騎馬によって先導されている黒い車に乗っている人間が2人いた。
「いや~さすがは大陸1の国ですねアルシンダ王国よりも発展していますよ。それにエルフやドワーフまでこうして見ると本当に異世界なんですねぇ。」
そう言ったのはアルシンダ王国で外交官として参加していた山下竜舞であった。彼はアルシンダ王国との会談のあとその経験を考慮されメールニア帝国との会談に参加することになった。
「確かに発展しているがやはり地球程じゃないな。分かってはいたが公害が酷いし治安が悪そうな場所だってあったしな。それに・・・」
山下の話に反応したのは50代の黒い髭が特徴的な高田渡である。彼は熟練の外交官でかつてのアジアの大国である中国との外交官と最前線で戦ってきた人物である。
そんな彼があるものを見て言葉を濁した。
「あれですか?・・・確かに異世界物でしたらあれがあっても不思議ではないですね。見ていて気持ちの良いものではありませんが」
山下もそれを見て眉をひそめる。彼らが見ていたのは奴隷市場だった。メールニア帝国では奴隷制度を採用しており主に鉱山や農業兵士や娯楽目的として売買されている。
最近では亜種族の襲撃で捕虜としたゴブリンやオークらを軍が前線に投入して自国の被害を減らす流れで奴隷売買はより活発化した。
「あぁ・・・地球でもアフリカ等の発展途上国では奴隷同然の扱いを受けているのが未だに続いているらしいがこの世界ではそれが当たり前らしいな。アルシンダ王国にも奴隷制が採用されているらしいな。」
高田の言葉に山下が言う。
「ええ。あそこはここほど奴隷が多くはありませんが、しかし犯罪者等を奴隷にして農業等で働かせていると聞きましたね。」
「うむ、しかし違和感を感じるのは文化ではなく言葉だな。まさか言葉の壁がこの世界に無いとは・・・」
その言葉に山下は苦笑いした。彼も最初はとても驚いた。まさかあれだけ多くの言語学者を連れてきたのに言葉が通じるとは予想外で彼らに罪悪感を感じていたのだから。
「えぇ、でもお陰で別の世界に転移したと説明するときは質問責めで答える時は助かりましたよ。言葉が通じなかった場合はどれほど時間が掛かっていたか。」
そう会話しているうちに目的地に着いたのか車がとある建物の前に止まった。
下等外務局
メールニア帝国には上等外務局と下等外務局の2つの外務局が存在する。
上等外務局は主に高度文明大国以上の国に対して相手をする場所で高度な外交術を必要とされる。
逆に下等外務局は上位大国以下の国に対して相手をする場所で国の威厳を損なわないように相手国に譲渡させるかの上等外務局よりも必要とする技能は下だがそれでも高い技能を必要とする。
下等外務局に通された2人は戦場に着いたと覚悟を決めたのだった。
「しかし下等と呼ばれているのに見事な建物ですね。」
品位を損なわないよつに目だけで見渡していた山下がそう言う。
「ああ、大陸随一なだけはあるな。だがここに通されたということは・・・」
「ええ、分かってます。我々は下に見られているということですね。」
高田は目立たないように頷く。
この国に来る際アルシンダ王国にメールニア帝国がどのような国なのかを知らされていたため政府は今回も護衛艦を連れてきていたのだが、どうやらメールニア帝国はいかに巨大な船を保有していても名前も聞いたことのない国にはそこまで特別待遇はしないようだ。
そう話している間に受付の者によって会議室に通されそこでしばらく待つよつに言われた。
2時間後
ようやく会議室の扉が開いた。入ってきたのは金髪で50代ほどの男性とその秘書らしき20代前半の白髪のストレートに伸ばしたエルフそして、その後ろには金髪の30代後半の男性の3人だった。
「待たせてしまって申し訳ない。私はこの下等外務局の副局長であるハワード・ルイスそして彼女は私の秘書でメアリー・リードそして彼が」
「課長のフルデリック・レイメクです。」
2人は顔には出さないが驚いた。いくら護衛艦を連れていったとは言え彼らからすれば未開の地から来た者達に対してこの外務局の副局長が来たのだから。
「これは、どうもご丁寧に私は日本国外務省から来た高田渡と・・・」
「同じく外務省の山下竜舞です。」
お互いに自己紹介が終わると会談が行われた。
副局長と課長の2人が向かい合って座り秘書がその後ろに立った形で行われる。
ルイスが最初に口を開いた。
「我が国としては本来なら遠方より来られた国に対しても私がこうして参加することはないのだが貴殿らが乗っていた船に興味がありこうして参加することになった。貴国らはとても高い造船技術を持っているようだ。」
その発言に2人は目を合わした。護衛艦を連れてきたお陰でこうして上の立場に会えたのだから成功したということに安堵した。
「なるほど、それはとても嬉しいことです。我が国は四方を海に囲まれ豊富な海産物そして文化に恵まれた国なのですよ。」
「なるほどそれで貴国らは我が国との国交を結ぶために来られたのだな?」
「ええそうです。エルミハナ大陸随1の大国である貴国らと対等な関係で貿易を結びたいのです。」
高田の発言に課長が食いつく。
「我が国との対等な関係?高度文明大国ですらないのにバカなことは言わないでいただきたい。」
課長の発言に2人は驚くが副局長は咎めない。それはつまり同意見だということだろう。
「ふむ・・・確かに我が国との対等な関係を結ぶのは厳しいだろう。既に我々は貴国に対しての国交を結ぶための条件は決まった。」
そう副局長が言うと今まで側に控えていた秘書が持っていた書類を机に広げる。
2人はあらかじめアルシンダ王国の外務卿らによって文字はある程度覚えていたために読めるがその内容は眉をひそめるものだった。
その内容とは
第1 ニホン国はメールニア帝国人の治外法権を認
めること。
第2 ニホン国は関税自主権を認めること。
第3 ニホン国は毎年メールニア帝国通貨であるメ
ロス金貨で8000枚を支払うこと。
第4 ニホン国はアルシンダ王国との国交を断つこ
と。
第5 ニホン国はメールニア帝国に造船技術を開示
すること。
という内容であった。
「これは一体どいうことですかな?」
高田の質問に副局長は答えた。
「貴国は確かに高い造船技術を持っているが軍艦を作る技術はそこまでないようだ。あんな多少細長い砲だけとは・・・いくらなんでも勿体なさすぎる。よって我が国が立ち会いの元貴国の技術を有効活用させてもらう。」
この発言に高田は失敗したと思った。今回連れてきたのは護衛艦の中でも小さい方でありヘリ空母等の大型艦を連れてくるべきだったと今更ながら後悔した。
「このような内容では我が国は同意しないでしょう。また、後日ということでよろしいですか?」
「勿論構わないが、我々はこれを変えるつもりはない。奴隷制がない貴国を考慮して金貨で支払うようにしたのだが無駄だったようだな。」
その後2人は車に乗り護衛艦まで戻った。
車に乗る2人を見ていた課長は副局長に聞いた。
「しかしよろしかったのですか?あのような無礼な者達をこのまま帰して。」
すると副局長は報告書を書きながら質問に答えた。
「かまわん。どのみちあの国はアルシンダ王国らと一緒に攻撃するそうだ。」
「ということはようやく・・・」
「あぁ、そうだ。皇帝陛下はとうとうエルミハナ大陸統一をすることに意を決したそうだ。」
その言葉に課長と秘書が驚き秘書が問う。
「しかし、5ヶ国を相手にする等いくらなんでも危険なのでは?」
「いいや、何ら問題はない。今回の戦争ではオーマバス神聖教皇国が援助するのだから。」
この発言に2人は更に驚いた。なんと別大陸にある列強国の名前が出るとは思えなかったからだ。
「なんと・・・まさか同盟国とは言え列強国が今回の戦争に援助してくれるとは」
「今回の戦争はもはや只の虐殺となるだろう。敵とはいえ哀れな話だが元老院らは既に植民地経営の準備を初めておる。」
メールニア帝国が着々と戦争の準備を始めているなか日本にも戦争の危機が来ていたのだった。
どうも、作者です。
今回ちょっと考えていた列強国の名前を出してみました。
読者さんからの意見で古代文明の国の名前を使ってみようとおもいます。
ありがとうございます!!
オーマバス神聖教皇国についてのスペックは近いうちに出そうとおもいます。
あと誤字脱字報告ありがとうございます!!
次回はついに戦争が起こるとおもいます。