第39話 日本の紹介
第39話 日本の紹介
神谷外務大臣の開始の言葉と共に室内の明かりが消されて、プロジェクターから高画質のカラー映像がスクリーン一杯に流れた。
まず最初に流れたのは、この日本の歴史であった。弥生時代の話から戦国時代の戦乱の話が流れ、やがてとある武将が統一をすると、この国独自の文化が発展していった。
だが、黒船襲来が過ぎると不平等条約が結ばれていたのにもかかわらず、日本の急激な成長が始まり、僅か数十年で、地球の列強国と肩を並べるまでに成長した。
不平等条約を解除させて東アジアの大国、中国を倒し、そして遂には、アジアの列強であるロシア帝国を相手に勝利した。それにより日本は東アジアで初となる列強国となった。
そして世界規模の大戦争、列強すべてを巻き込み何百万もの戦死者を出した第一次世界大戦でも、先勝国として名を高める。
しかし、また次の世界大戦では、地球最強であるアメリカ合衆国との戦争により日本は敗北した。何百万もの戦死者と悪魔の兵器・・・核兵器を落とされてだ。
その後、日本はアメリカ筆頭の国際連盟及びに連合国軍に無条件降伏をした。敗戦国となったが、アメリカ主導の民主化に伴い、非核三原則等や武力と交戦権、軍隊を保有しない平和主義、そして急激な経済発展が起こった。
そして遂には、世界第2位の経済大国にまでに成長した。一時期は不動の1位に君臨し続けたアメリカを上回るとまでに言われていたが、30年前に隣国の中国という国がかつての日本を上回る速さで経済発展を起こし、世界第2位の地位をとられてしまった。
その後、その中国との間に小規模な紛争が起こり、日本の防衛を担う組織である自衛隊の拡大計画が行われた。あと十年程でその計画は完了すると思われた時に、この異世界に転移したところで歴史編は終わった。
ここまでの映像でザメハーカ達が驚愕したのは複数あった。1つは、列強国同士の大規模な戦争を日本側は経験していたこと。それによる死者が日本だけで数百万にも達していたこと。
そして2つ目は、映像に流れた悪魔の兵器・・・核兵器が地球にもあったということ。これが彼等の警戒心を格段に上げさせた。
ザメハーカ副外務大臣は後ろで控えていた補佐官に小声で話し掛ける。
(彼等の世界にも核兵器があったとはっ!)
(団長、これは早急に本国へ知らせるべき案件です!)
(あぁ、解っている・・・しかしまさか核兵器を使用するとは・・・なんという世界だ。)
(それ程までにおぞましい戦争であったのでしょう。油断出来ません。しかも世界大戦時の映像が流れていましたが、あの武装は列強国らが使用していたものでした。それから数十年も経っている・・・この国の技術レベルは予想を数段上回ると確定しました。)
(急いで国防省の軍事衛星を動員するよう要請しろ。アトランティス帝国なんか後だ!)
(畏まりました。)
最初、日本側はムーの技術を把握していなかったので、偵察衛星を持っていないのかと疑っていたが、これには理由があった。
ムー共和国は、偵察衛星等はあるが、未だに偵察衛星に使用するカメラの技術が十分に発達していなかったり、あっても数の少ない偵察衛星はアトランティス帝国の監視の為に他国を監視する余裕が無かったり、との理由で日本の発見が遅れたのだ。
だが、日本の噂が聞こえても国防省側は、アトランティス帝国が優先だとして偵察衛星を動員しなかったという事情があったのだ。
だがそれも無理はない。長年、ライバル国として度々ぶつかっており、しかも自分達の科学文明国側が劣勢である為に、日本の噂が流れてもそこまで重要だとは思えなかったのだ。そんなことよりもアトランティス帝国が今何をしているのか、警戒しなくてはならなかった。
だが、今回はそれが仇となってしまった。この国がここまで高度な技術を保有していたことが早期に判っていたなら、既に国交を結んでいたものを。
(まさか無いとは思うが・・・この国がアトランティス帝国と手を結んだら最悪だ。)
無論アトランティス帝国も、科学文明大国である日本とそう易々と手を結ぶとは考えにくい。だが、なんらかの理由で手を結び共同で敵対などされたら、ムーは今までに無いほど追い詰められるであろう。
(何よりも・・・日本は核兵器を保有しないと映像でも言っていたが、地球連盟国は保有しているのではないか?あのアメリカという国もそこに参加しているなら可能性はある・・・)
正確に言えば地球連盟国の軍は、殆どがアメリカ軍で構成されている為に、普通に核兵器を保有している。他国の軍人もいるが、休暇等の旅行で偶然来日していた者が殆どで、数は少なく、現在は新たに入った軍人を鍛えていた。
ちなみにムー共和国も核兵器を保有しているが、未だに投下型のそれしか保有しておらず、ICBMの様に地上より遥か上空を飛行して大陸間を横断する類いの兵器を開発していなかった。
構想はされているのだが、現在は強力なアトランティス帝国海軍を倒す為の対艦ミサイル等の強化が優先されていた。
ザメハーカ副外務大臣がそう危惧していると、日本の紹介は、歴史編から日本列島の自然編や文化・政治等の紹介に移っていた。
この辺りの紹介には、さほど重要な情報は無かったが、終盤に入り経済編に入った。
経済編では、戦後の日本の経済成長から始まり、そこから始まる映像の内容を見てザメハーカ達は驚愕することになる。
それは、日本の主要産業は自動車を筆頭とした製造業・金融・運輸・建設業・製薬・・・ここまでは驚くことでもないが、驚いたのはムー国内でも最近になって誕生したばかりの情報サービス産業いわゆるITを産業として行っていたのだ。
まだムーではコンピューター製品等は非常に高額で、政府機関や大企業でしか扱っていないものだ。
民間である大企業ですらもほんの一部でしか導入していない。しかし日本ではほぼ全ての企業が導入しており、一般人ですら購入できるという。
(なんてことだっ!一体この国はどれ程までに情報技術が発達しているのだ!?中小企業だけでなく一般人ですらも使えるとなれば、どれくらいの遅れをとっているんだ・・・)
すると経済関連に詳しい部下が彼に耳打ちをした。
(団長、更に日本の主要産業と、我が国の産業の多くが被っています。IT産業を持つ国が我が国の産業技術を上回る可能性は充分にあります!)
(ここまで来る間に覚悟していたつもりだが、現実になるなど不味すぎる!)
(一刻も速く経済産業管理省に知らせなくてはなりません!)
(わかっている!)
そして経済編も終わり、次に転移後に交流を結んだエルミハナ大陸の現在の状況が流れた。
エルミハナ大陸で一番最初に交流を行ったアルシンダ王国では、上位大国程度であるのにもかかわらず、列強国並みの工業地帯があり、鉄道や車が走っていた。
(あれがアルシンダ王国だと?・・・確か上位大国では無かったか?)
(は、はい。確かに上位大国程度の筈です。しかしこれでは、準列強国以上です!)
(あの短期間でここまで発展させるとはっ・・・たが、これはアトランティス帝国らに追及されてしまうぞ。)
彼の言う通りに、この世界では技術アドバンテージが何よりも大きい。
そんな世界でここまで無闇に技術を他国に流出させれば(しかも科学技術をだ。)アトランティス帝国や他の列強国は、国際秩序を乱す行為として日本を責め立てるであろう。
だが、パースミニア王国のドバラキ公国のように元は同じ国であったり、国際バランスを整える等といった理由で世界会議の承認を得れば、例外的に他国への大規模な技術提供が認められることがある。
(だが、ここまでの技術を持ってるとなるとまず無理だな。我が国もそうだが、アトランティスは決して承認しないだろう。)
そして最後に日本の自衛隊の映像が流れた。最重要情報が得られることを知ったザメハーカ副外務大臣は、考え事を止めてその映像を注視した。
流れる映像は、異世界転移前に行われた富士演習場の総合火力演習の映像だった。
旧式となった数十両程の90式戦車が行進をしながら目標物に向けて一斉砲撃をしていた。その後陸上自衛隊の普通科部隊の射撃映像が流れて終わった。
最低限の映像しか流れず、ガッカリしたザメハーカだが、あの映像を見る限り、少なくとも上位列強国の戦車並みの性能をもつと感じた。
あの映像で誰よりも理解出来たのは、ザメハーカ副外務大臣の後ろで控えていた開発研究局の男であった。
(あの戦車・・・我が国のムグリバと少し似ていたぞ。そしてあの命中率・・・まさか日本は戦車内部の電子化に成功したのか!?ひょ、ひょっとすると射撃補助装置を開発したわけではないだろうなっ!?そんな筈は・・・いやしかし、あの映像を見る限りは・・・)
射撃補助装置とは地球で言うところの射撃管制装置のことである。
この装置が開発されたことによって、従来の戦車砲の命中率を飛躍的に向上させることに成功した。だが、つい最近になって開発されたものなので、不具合や故障が度々生じる為、更なる研究が続けられていた。
それを日本も開発して尚且つ実戦配備されている可能性があることに、彼は驚く。しかし、ここまでの日本の様子を見てそう考えるしかなかった。
実際には今の最新式戦車は、射撃管制装置による自動追尾機能だけでなく、自動装填装置にレーザー測遠機・赤外線・ミリ波レーダー等の各センサー機能をフルに使うことで自動割り振りモードで同士討ちや重複射撃を避けることが出来る等、ムー国の戦車とは圧倒的な性能差がある。
(それに加速性能も申し分無かった・・・砲の口径も、威力から見て105ミリ砲・・・いや、それ以上だと考えるべきなのかっ!糞っ何故ここまでの技術を奴等は持っているんだ!?)
そして更に彼は自衛隊の普通科部隊の装備についても考えた。
(自衛隊と言っていたか?・・・装備も我々とアトランティスの様な豊富な個人装備を持っている。あの銃はアサルトライフルか?ガントバラス帝国のものよりも洗練されたデザインだ。)
そう考えてると日本の紹介映像が終わった。今日1日だけで、数十年分の驚愕をした気分であった。
これで使節団は、世界会議への招待そして国交開設に、日本の調査に成功をしたわけであるが、日本という異世界から来た国家が、自分達の予想を遥かに上回る大国であることが分かり、不安に駆られていた。
迎賓館を出た使節団は、その後に車に再度乗り込み、滞在するホテルに向かった。
今回の使節団では、日本に数日間の滞在予定であり、その間に国交開設についての手続きと駐留場所の決定・日本国の世界会議の参加の是非が決まるまでの滞在となっている。
ザメハーカ副外務大臣らが滞在するホテルは、東京都にある日本最大のホテルだった。
客室は全部で4600室あり、国内だけでなく世界有数の巨大ホテルだ。
ムー国のものとは隔絶したホテルに圧倒されるが、何とかそれを表に出さずにチェックインを済ませた。
「・・・団長、一応今日までの報告書は作成出来ましたが、果たしてこの内容を本国の方々が信じてくれるかどうか・・・」
副団長である外務補佐官がそうザメハーカに言う。彼の表情は非常に困っていた。
だが、それも無理はない。報告書の内容はそのどれもがこの世界の常識を破るものばかりなのだ。写真を撮ってきているとは言え、実際に目にしていない者達がこれを信じてくれるかは分からない。
それを聞いたザメハーカは苦笑いをした。どこか諦めにも近い表情をして。
「言いたいことは分かるが・・・それで虚偽の報告書を提出しても仕方ない。今後も出来るだけ正確に作成してくれ。上の説得には私が責任を持ってする。」
「承知しました。明日はもっと撮影しておきましょう。」
「頼んだ。それでも向こうが信じてくれるかは分からないがね。」
補佐官が退出してこの客室には、ザメハーカ1人だけとなった。
客室にあるフカフカの椅子に座り彼は辺りを見渡す。ムー国内で最高級のホテルよりも豪華な内装だ。
1人では有り余る程の広さ、90インチを越える薄型テレビ・人工知能を搭載したエアコン・声で反応するLEDライト等、家電だけでも驚くものばかりだ。
特に薄型テレビが彼にとって一番の驚愕であった。自国のものはブラウン管であり、非常に分厚くそして画質も粗い。今までならば、それでも高画質だと誇っていたものだが、これを見て自分がどれ程狭い世界にいたのかが分かる。
声で反応するライトというのも驚きだ。ここの部屋の説明を受ける際に、ホテルの者が「電気を消して」と言った途端に電気が消えたのは軽く混乱したものだ。
(人工知能が操作していると聞いたが、未だに信じられん。近くに誰かが控えていると言われた方が、まだ信じられる。)
日本の外務省職員によれば、自分達が泊まっている場所は世界的VIPを泊める為の部屋で、このホテル内でも最上級だという。
内装も凄いの言葉に尽きるが、このホテルの最上階から見下ろせる風景も見事であった。この部屋の窓からは、400メートル級のビル群が見えており、更に今は夜である。
そのビル群から発する夜景が実に見事だった。遠くに見える建造物から照らす景色も素晴らしい。ただ、この方角では無く、反対側の部屋には、東京スカイツリーが見えるらしく、それが見えないのは残念であった。
「・・・眠らない街という言葉はこの街にこそ相応しいのかも知れないな。この国の後は地球連盟国にも行かねばならん。それを考えると憂鬱だな。」
彼のその言葉は誰に向けたものかは分からない。いや、自分自身に向けたものかも知れない。
3日後
使節団が来日してから3日が経過すると、この世界の超大国であるムー共和国の使節団に関連するニュースが至る所で放送されていた。
そんな状況において東京都内のとある500メートル級ビル内では、そのムー共和国について会議している者達がいた。
その人物達は、日本最大の企業である「小島」グループの幹部達とその社長である。
「小島」グループとは、小島弥太郎が明治以降に築いた財閥であり、政治家と手を組む商人「政商」として政治事業を独占して財を築き絶大な力を持ったのが始まりであった。
戦後もその影響力を失うことも無く、世界でも5本の指に入るほどの大企業にまで成長した。
更にこの「小島」グループは2000年以降の中国との紛争を切っ掛けに自衛隊の装備を開発を担っていた吉沢重工・相田重工の2つの企業を買収して、小島重工業を中心に合併をして国防産業にも手を伸ばした。
特に最近では、海上自衛隊の新たなる艦隊の製造計画が始まる為、国防産業の利益は莫大な額になってくるであろう。
そして、この異世界への転移以降において、小島グループは更に急拡大を遂げた。今まで石油やレアメタル・ゴム・リン鉱石などの資源産業には強力な海外企業によって日本は介入出来ずにいたが、転移してからは、海外のライバルが全て消えて、更に日本本土付近に豊富な資源が眠っている島々が出現する等、数々の幸運によってその利益を独占することが出来た。
最初こそ石油等の採掘のノウハウが無い為に、他の企業に遅れをとったが、転移してから数年が経過した現在では、その遅れを取り戻していた。
それと同時に小島グループは、海運にも力を入れた。地球にいた頃からも海運業関連の企業を従えていたが、転移してから潰れ掛けていた永山海運を新たに合併。
それと既存の海運関連会社をフルに使い、秋津島や海北島にエルミハナ大陸との国々の貿易に使う貨物船で利益を独占した。更に1年前よりヨンバハーツ大陸・レンモネス大陸の大陸にも日本政府が勢力を伸ばした為に、その利益は拡大した。
そんな日本の誇る大企業が保有する超高層ビルの会議室で会議が行われているのだ。
スモールアイランドタワー 112階 第1会議室
「・・・と防衛省から入手した人工衛星からの画像よりムー共和国の技術力は1960~1970年代の先進国のいずれかと思われます。」
「小島」グループの役員がそう報告をしていた。それを聞いていたこの会社のトップである社長の小島宗次郎が発言した。
「そうか。超大国とは言えまだまだその程度の可能性があるということか。油断は褒められたものではないが、これで海外からの企業に怯えることは無さそうだな。」
50代程の所々に白髪が目立ち威厳のあるその顔の通りに体の底から響くような声でそう言った。だが、その言葉に別の役員が発言する。
「社長、まだまだ確定ではありませんが、それでも国交開設は既に完了したようです。ムーとの貿易の為の製品の製造に尽力を尽くしましょう。傘下にある関連企業にその時代にあった製品の製造ラインの確保の許可をください。」
「ふむ・・・確かに時間は限られているな。まだムーの技術力は確定ではない。そして今後は列強国との貿易もある。良いだろう、各工場に指示を出すように頼む。」
「承知しました。」
すると、今度はこの会社の本部長が挙手をして発言をした。本部長は社長の実の息子であり、社長は次期後継者として本部長に勤めさせているのだ。
息子の本部長である小島修治は起立して発言をした。まだ20代後半の若さが目立つが、それでも何か人を集めるカリスマのような雰囲気を感じる。
「社長、防衛省から更なる戦闘車両の納入依頼が出ています。また、自衛隊全体が使用する各種弾薬、海上自衛隊の艦艇の件もあります。製造ラインの確保も含めますと・・・莫大な投資が必要になります。この場でどこまでのラインを確保するかを決めるべきかと。」
「確かにそうだな。だが、すまないが私はこの後、総理との会食がある。ここからは専務が変わりに纏めてくれ。」
「承知しました。お疲れ様です社長。」
一同は、そう言い、社長が退出するまで頭を下げ続けた。社長が退出すると会議が再開した。
「さて、それでは僭越ながら私がまとめやくを勤めさせて頂きます。」
「では、まず電化メーカーには、最大で800億までなら投資が出来ますので・・・」
数時間後
場所は変わり、東京都内のとある料亭の1室で2人の男が会っていた。周囲は黒服のSPが二重三重で警備をしており、誰も入れないようにしていた。
「お久し振りです野村総理。」
総理と呼ばれた男は笑顔で返事をした。
「こちらこそお久し振りです小島さん。暫く会わない間にまた事業が大成功をおさめたようではないですか。全く羨ましい限りです。」
小島と呼ばれた男は先ほど登場した「小島」グループの責任者である小島宗次郎であった。
この2人は野村が議員に立候補する時からの知り合いであり、野村の資金面を小島がカバーしていた。
いわゆる資産家との癒着であるが、小島自身、彼が総理になればこの国を良い方向に導けると思い彼を支援したのだ。事実彼の率いる政権になってからは国内の麻薬犯罪の減少、北朝鮮の拉致被害の悲願の返還の成功等、国内の問題を解決していったのだ。
「何を仰います。これもあなた方が我々民間企業の参加を許可してくれたからですよ。」
「ははは、私は、大したことはしてませんよ・・・まぁ表向きの話は置いといて、小島さん、ムー国についてどう考えますか?」
野村は先ほどまでの笑顔とは一転、真面目な顔になった。その顔は正にこの国の総理大臣に相応しいものであった。
「ただの商人には分からない・・・というのがお望みの言葉でも無さそうだ。そうですね、あの衛星画像と国土を見る限り・・・技術力は昭和45年くらいの日本で国力はアメリカ並みと言ったところで良いかな?私が生まれた頃の時代だよ。いやぁ懐かしいねぇ。」
「えぇ、私の方でもそう予想されています。将来的には、ライバル国として悩まされるでしょうな。」
「はぁ~嫌だ嫌だ。政治家というのは、何でこうも敵対的な目で見るのかねぇ~。」
その言葉に野村は申し訳無さそうな表情で頭を掻きながら謝罪した。
「これは申し訳ありません。何せ仕事柄、怪しまなくては生き残れないものでして。」
「いいえ、構いませんよ。それを期待して貴方を支援したのですからね。」
「ありがとうございます・・・それで、万が一に備えて自衛隊いや、国防軍の拡大の件について。」
国防軍という単語に小島は片眉を上げて反応する。
「国防軍、か・・・結構前にそれで国民投票があったな。それが遂に本格的にやるわけか。少し前に国土交通相とも話をしましたよ。イージス艦だけでも追加で20隻以上に、原子力空母、巨大強襲揚陸艦、はっきり言って無茶苦茶ですよ。身の丈にあっていない規模だ。しかもイージス艦の中には1隻だけで8000億円も掛かる奴があると聞いた。野村さん、この国の限界を知った方がいいよ。例え時間を掛けてやるとしてもそれ程の力を持てばこの国はまた覇権国家に成り下がる。」
「仰りたいことはよく分かります。しかし、この国を守る為にはどうしても必要なんです。私が脅威だと感じているのは、ムー国ではない。アトランティス帝国という国が脅威なのです。」
「アトランティス帝国?確かもう1ヶ国の超大国でしたか。」
「はい。今日のムー国の大使との会談で詳しい情報を得ました・・・あの国の人口は凡そ6億人、世界最大の魔法石の産出国、兵力は400万人を越え、その兵士の中には化物のような強さを持つ。そして我々の常識が役に立たない魔法・・・あの国には、300メートルの軍艦を浮かばす技術を持つと言います。我々の知らない魔法という技術で。彼等は我が国を敵対視するてしょう。世界のバランスを崩す恐れがあるのだから。」
「その国から我が国の国民を守る為に?例えそれが覇権主義国家になる切っ掛けになるかも知れなくてもかい?」
「・・・それはさせません。」
「随分と覇気の無い御返事で、どうやって?貴方がそうさせなくても未来の国民がそれを望んだら?それを止める手段はあるのですかい?大日本帝国の二の舞を阻止できると?」
「それを確実に止める手段は今のところありません。しかし、未来だけを気にして今を無視し続ければ、そんな未来すらも来なくなります。どうかご協力下さい!今、この国には、武力が大切なのです!誰にも侵略されない力がっ!!」
暫く沈黙の時間が流れた。室内は庭の方から聞こえてくる鹿威しの音だけが聞こえた。
「・・・今が大事か。まぁその頃には、我々は老いて死んでいるだろう。分かりました。傘下にある重工各社にそのように発注させます。この大型揚陸艦の製造もね。ただ、人員は大丈夫なのですか?」
「中国との紛争以降、自衛隊に志願する者は年々増えています。大連合戦争後には、少々減りましたが、それでも十分な志願者が毎年来ています。厳しくても、予備役もいます。ご心配無く。」
「なら、良いのです。しかし、莫大な金額と時間を要します。全て完了するには、最低でも約30兆円以上に、20年以上は掛かります。ご了承下さい。」
「もちろんです。我が国を守る為にも。」
これで話は纏まった彼等は乾杯をして酒を飲んだ。その時の酒はとても旨かったようだ。
如何でしたか?
今回、「小島」グループという企業を登場させてみました。
実は自分は韓国ドラマを見ておりまして、その中で作中に何とかグループという財閥が出ていて、自分もこの作品に登場させたいと思い、今回これを書きました。
遅れましたがやっと総理の名前が出ましたな。
後は、アトランティス帝国・・・まだまだあの国の凄さが出てくるのかな~?
ここまでありがとうございました!




