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強化日本異世界戦記  作者: 関東連邦
第3章 国際社会の台頭
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第38話 ムー共和国の来日

第38話 ムー共和国の訪日


日本列島から東に約400キロメートルほどの太平洋上空を、大型ジェット旅客機が飛んでいた。


別にそれだけなら珍しくないのだが、その旅客機は日本が保有する旅客機のどの型にも当てはまらなかった。


両翼の下には4基のエンジンが装着されており、特に目立つようなものはなかった。しかし旅客機の両面の一部分には、国旗が描かれていた。


その国旗は地球にはないものだが、この異世界においては知らぬ者はいない程に有名な国だ。


その国こそ超大国の一角であるムー共和国である。


その旅客機は政府専用機であり、それに乗っている者達は当然、観光客ではない。


ムー共和国外務省の選ばれたエリート達が乗っており、彼等は、オーマバス神聖教皇国・レムリア連邦の列強2ヶ国を撃破した日本を、来年行われる「世界会議」に招待する為の使節団である。


その機内では、機長からのアナウンスが流れていた。


「機長です。たった今、日本国の排他的経済水域に入りました。日本国からの無線により間もなく同国の戦闘機が近付いてきますが、先導役ですのでご安心ください。」


そうアナウンスが流れると、機内で長時間座っていた者達が背を伸ばしていた。


「ん~・・・もうすぐ到着か。長かったな。」


外務省職員の1人がそう呟く。ここまで来るのに何十時間もの間、座りっぱなしだったのだ。途中の空港で休憩したり座席を倒して横になることも出来たのだが、それでも4日間の疲労は回復しきれなかった。


「こんなに苦労して来たんだ。噂の日本が噂以上の国であることを祈るよ。」


「あまり期待し過ぎるなよ。不意打ちとはいえ、オーマバス程度に手痛いダメージを受けるような国だ。転移国家だったとしても期待できんよ。」


「戦闘機が来ると聞いていたが、ジェット機が来るのだろうか?」


「確かに、大連合戦争中、レシプロ機らしきものは確認出来ず、代わりにジェット機のようなものがオーマバス空軍を圧倒していたと聞いたが・・・信じられんな。」


「そのとおりだ。」


そう会話していると少し後ろの座席から声が聞こえた。


「我が国の技術者達がどれ程多大な時間を掛けて研究し、どれ程多くの失敗の末に今のジェット機を作り出したか・・・それを転移してきたと言う国だろうと保有するなど・・・ありえぬ!」


彼は、前回にも出ていた国防兵器高等研究開発局の局員であった。


彼は、かつてレシプロ機から次世代の新たなる戦闘機開発に貢献した技術者達を心底尊敬しており、その彼等の苦労を知っていた。


音速の壁を越える航空機など開発不可能だと周りに言われながらも、諦めずにやり遂げた話に彼は感動したのだ。


それをぽっと出の国が持つなど、とても受け入れ難いのであろう。


「まぁ落ち着けよ。気持ちは分かるよ。私だってそんなものはデマに過ぎないと考えている。異世界の兵器が偶然、我々の戦闘機と酷似していたのだろうよ。」


「確かにな。だが、油断するなよ。もうすぐその戦闘機が見えるはずだからすぐにハッキリするさ。」


そう使節団の1人が言った瞬間、機内のある窓の外を2機の戦闘機が擦れ違った。その少し後にジェット機特有の轟音を連れて。


ドオォン!!


「な、何だ!?今のは!」


「せ、戦闘機らしきものと擦れ違いました!一瞬ではありましたが・・・我が国の戦闘機と似ているようにも見えました!」


「何だと!?」


すると2機の戦闘機は、政府専用機の後方で向きを変え、あっという間に追い付いてきた。それは彼等の座る窓からハッキリと見えた。


「あ、あれは!?うちの戦闘機と似ているぞ!?」


研究開発局の局員が、驚愕して目を見開いていた。


「あ、あれは!?・・・後退翼か!?そんなバカな!!」


聞き慣れない単語に、外務省職員の1人が、思わず彼に質問する。


「後退翼とは何です?」


「・・・解りやすく言えば、音速レベルでの高速飛行に適した翼だ。音速を越える際に生じる衝撃波の影響を、最も受けにくい翼だ。だが、失速しやすいデメリットもあるものだ。しかもあの機体・・・後退角が明らかに大きい、音速を優に越える可能性があるぞ!」


「音速を!・・・この飛行機の時速はいま何キロ出ているんだ!?急いで確認をとれ!」


その後しばらくして速度が判明した。


「機長に問い合わせたところ、現在は時速820キロとのことです!」


時速800キロ、これは列強国程度の戦闘機であれば追い付くことの出来ない速さだ。上位列強国でもここまでの速度を誇る戦闘機は数が少ない。


「とすると・・・擦れ違ってからあの僅かな時間でこの機に追い付いたことも考慮すると・・・少なくとも900キロは完全に越えているっ!?」


その言葉に、この場にいる者達は絶句した。時速900キロを越えるなど、列強国レベルではない。上位列強国ですらも、辿り着いたのは空軍国家であるガーハンス鬼神国くらいだ。そのガーハンスもドラゴン以外では、そこまでの速さを持つ戦闘機は保有出来ていない。


最上位列強国であるチェーニブル法国の戦闘機すらも、最近になって800キロの壁を越えられた程度なのだ。


それなのに日本の戦闘機は少なくとも900キロの速度を持っている。そのことに驚愕したのだ。


「そんなバカなっ、こんなことがあってはならん、何故だ・・・日本はどうやって・・・」


研究開発局の男性は小窓から見える戦闘機を見ながら呆然と呟いていた。


この面子では一番航空機に詳しいであろう彼の反応を見て、使節団は、これから行く日本が自分達の予想を越える強国であることをようやく認識した。


「お前達、少し落ち着け。」


未だに混乱している使節団を、団長であるザメハーカ・ウロドロイス副外務大臣が宥める。


「お前達の気持ちもよく解る。だが、こんな所で騒いでいても事実は変わらん。我々は常に超大国の使者として堂々とせねばならん!それを踏まえて落ち着くんだ。」


その言葉に、混乱していた彼等は落ち着きを取り戻した。さっきまで何か呟いていた開発研究局の男も途中で正気を取り戻し、冷静に戦闘機を分析し始めた。


「どうだ、他に何か判ったか?」


ザメハーカ副外務大臣がそう尋ねると、局員の男は、顔をしかめながら答えた。


「・・・見た目では、我が国の戦闘機と大きな違いはありません。先ほどの動きを見ますと、機動力も中々のものです。武装は・・・判りません。ミサイルらしき物も見えません。保有していないのか、戦闘任務ではないので装着していないのか、そのどちらかです。」


「そうか・・・あれは音速を越えると思うか?」


その質問に彼は再び戦闘機を注視し、暫く考えた後に言葉を発した。


「この機体が時速800キロで飛行しており、擦れ違った後にあの戦闘機は10秒も掛からずに向きを変えて追い付いてきました。そしてあの後退翼・・・あれは間違いなく、音速飛行を考慮しているもの。音速を越えて飛行出来るのは間違いないかと。」


「・・・まさか・・・いや、しかし実際に今目の前に存在しているのだから、そうなのか。日本はそこまでの技術力を持っているのか!」


機内に重苦しい空気が流れた。そんな状態が暫く続いたのち、小窓から日本列島が見えてきた。


その窓から見える、上位列強国よりもさらに洗練された巨大都市を見て驚愕する。


「これが日本の都市だと!」


「高層ビルがあんなに見えるぞ!」


更に暫く待つと、遂に彼等の目的地である東京国際空港、通称羽田空港が見えてきた。


この世界では日本が強化されているが、日本最大の空港である羽田空港も、当然ながら史実日本より巨大化されている。


異世界に転移する前は世界でも五本の指に入る程の規模を誇る羽田空港は、この異世界の覇者であるムー共和国から見ても、驚愕に値するものだった。


まず、史実日本の羽田空港よりも5倍の敷地面積を誇り、滑走路も8本と史実アメリカ最大の民間空港であるシカゴ・オヘア空港と同じである。


そんな巨大空港を見て、彼等は目を見開いた。何せムー国内で最大規模を誇るムゲロナ国際空港よりも大規模で、なおかつ上空から見ても判るほど洗練された造りになっていた。


なによりも空港の近くにある都市が、この機体の窓から見えるのだ。日本最大の規模を誇る巨大経済都市、首都東京が見えるのだ。


「あれが・・・この国の首都なのかっ!?」


「先程見た都市よりも巨大だ・・・」


ちなみに最初彼等が見た都市は、千葉県にある都市である。


「空港にある飛行機も見てみろ。物凄い数の大型飛行機が見えるぞ。」


窓から空港を見ていた使節団の1人がそう周りに言う。彼の言葉を聞いた仲間が探そうとするが、その必要は無かった。


何故なら滑走路の脇にある大型旅客機がすぐ見えたからだ。ムゲロナ国際空港よりも多くの旅客機が置かれており、遠目から見てもどの旅客機もかなりの大型だった。


ひょっとするとこの政府専用機よりも大きいかも知れない。そう彼等が考える程の光景であった。


事実、羽田空港に停止している大型旅客機の半分程は、ムー共和国の政府専用機よりも大きい。


そして遂に日本の国土に着陸した。長い滑走路を走り、空いている場所に専用機は止まった。


止まった場所には、多くの人々が立っており、国を挙げての歓迎をしているのが、よく分かった。


使節団はザメハーカ副外務大臣を先頭にして専用機から降りた。降りると目の前にスーツを着た男達が並んで待っていた。


その1番前で立っていた男性が笑顔で歩み寄り、先頭に立っていたザメハーカ副外務大臣に話し掛けた。


「遠い所までよく御越しくださいました。私は日本国の外務省で副外務大臣を勤めさせて頂いています大野和重と申します。気軽に和重と呼んでください。ここからは私が皆さんをご案内します。」


そう言われ、ザメハーカ副外務大臣も笑顔で答える。


「これはご丁寧にありがとうございます。私はムー共和国の外務省で副外務大臣を勤めていますザメハーカ・ウロドロイスと申します。私の方こそ気軽にザメハーカと呼んでください。」


その後、その場で軽い雑談をした後に、日本の外務省が用意した車に乗り込む。だが、彼等はそこでも驚愕することになる。


(これが日本の車だと?エンジン音が全くしないのは何故だ?魔動力式だとしても音は鳴るのに・・・ましてや排気ガスが出ていないだと?)


ザメハーカ副外務大臣は、日本の車が排気ガスやエンジン音を出さないことに内心で驚く。後ろにいた部下達もそれに驚愕していたが、それをこの場で顔に出す程の愚か者はいなかった。


ただ開発研究局の男は、一瞬ではあったが、驚いたような表情になっていた。


彼等はこれか電気で動かす電気自動車であることに気付いていない。


この世界においては大気汚染等の環境問題がまだそこまで深刻ではなく、電気自動車のようなものは未だに無かったのだ。


科学文明諸国は石油を燃料とする乗り物のより効率化を図っており、環境を考慮した乗り物の開発は同じ時代の地球国家よりも遅れている。


車に乗った彼等は、そのまま発進するが、その電気自動車特有の振動の少なさ、高い加速力に驚く。


車の性能に驚く中、空港を出て暫く進むと東京の中心部に入った。そして彼等はその光景を見てついに驚きの声を出してしまった。


「なんと・・・高層ビルがあんなにも!」


「そんな・・・ここまで発展しているなどっ。」


「あれは大型テレビなのか!?だがあんなに巨大なモニターなど一体どれだけの金を掛けて・・・しかもなんて画質だ!」


彼等の国の首都にも300メートル級のビルはあるが、ここ東京はそれが何十もあり、中には500メートルを越える超高層ビル群も車から見えていた。


そしてまたあるものは、街道にあるデジタルサイネージを見て驚愕していた。


デジタルサイネージのようなプロジェクター等を使って映像や文字を映す広告は未だにムー共和国では開発されておらず、その光景は新鮮に見えたことであろう。


しかも人と同じ位の大きさのものや何十メートルもある巨大なそれを見て驚くのは無理もない。


だが、ザメハーカ副外務大臣やその横にいる補佐官は辛うじて平然として態度を維持することに成功していた。1国の使節団の大使としての職務を忘れずにいたことで出来たのだ。


そんな彼等でも内心では驚きっぱなしではあったが、ある建物を見て思わず運転手に聞いてしまった。


「ッ!?・・・すまない、あの高い塔は一体何なのだ?」


と、その建物を指差して質問する。


「え?・・・あぁ、あれは東京スカイツリーですね。この国で最も高い建造物で、転移前の地球では、世界最大の電波塔でした。高さは634メートルです。」


(600メートルだとっ!・・・しかもあれが電波塔なのか!信じられん。)


ザメハーカは驚くが平常を装い、運転手に礼を言った。


(予想以上過ぎるぞ!こんなの1国が持つべき技術ではない!まさか・・・これ程とはっ。)


使節団の乗った車列は、警察車両とSPに厳重に護衛されながら東京を走っていた。


大通りには、ムーのそれよりも洗練されたデザインの車が多く走っており、大通りに面した建物は、どれも上位列強国のそれとは隔絶されたものだ。


認めたくはないが、自国の首都よりも明らかに見事な都市だと実感した。この国は列強という器には、とても収まらない。そう考えられる程に、彼等から見てこの都市は壮大であった。


「間もなく目的地に到着します。」


運転手の横に座っていた日本外務省の職員が、ザメハーカ達にそう言った。


暫く後、彼等の乗った車は赤坂離宮の門を潜り、迎賓館の前で停車する。古びてはいるがその分歴史の重みを感じさせる、石造りの建物。それはザハメーカ達の目にも、充分に威厳あるものとして写った。


ドアが開かれ車から出ると、大野副外務大臣が既に立っており、中に案内すると告げる。


大野外務大臣の案内のもと、迎賓館に入った彼等は、そこで日本のもてなしを受けた。


彼等が案内された部屋には数人の人物が既に座っており、使節団の入室と共に一斉に立ち上がり自己紹介を始めた。


「遠路はるばるよくぞ御越しくださいました。私は日本国の総理大臣を勤めさせて頂いています、野村矢城と申します。隣にいるのは、外務大臣の神谷勇治です。本日は私達が皆さんを歓迎させて頂きます。」


目の前の人物がこの国の首相だと知って、ザメハーカ副外務大臣もあいさつを返す。


「これは、1国の指導者がこうして我々使節団を歓迎してくださり、感謝申し上げます。この国の首都である東京を見ましたが・・・いやはや、我々の予想を遥かに上回る素晴らしい都市でした。このような素晴らしい都市を造り上げる技術に我々も魅力されてしまいました。」


ザメハーカは、今までもこのように首都の感想を他国に言ったことはあった。しかしそれは、社交辞令としての言葉だった。だが、今回の東京に関しては社交辞令としてではなく、本心からの感想だった。


悔しい限りではあるが、この時点で幾つかの分野でムーは遅れをとっている可能性が判明したのだ。正直に言ってかなりの屈辱と危機感を感じていた。


そんな彼の言葉を聞き、野村総理は笑顔で感謝の言葉を述べた。


「超大国である貴国がそれ程までに過大な評価をしてくださり、私も鼻が高いです。」


「何を仰います。私もこれまで数多くの国々を見て来ましたが、これ程までに発展している国は見たことがありません。それこそ同じく超大国であるアトランティス帝国のように。貴国は実に素晴らしい国ですよ。」


その後も軽い世間話を行い、互いにちょっとした情報交換をしてから本題に入った。


「・・・と私の娘がおねだりをしましてね。とても困ったものですよ。・・・おっと、もうこんな時間でしたか。そろそろ本題に入りましょうか。」


野村総理の言葉にザメハーカ副外務大臣も了承する。これまでの会話で、お互いに相手の国の情報を得ることに成功していた。


そして、ザメハーカ副外務大臣から今回日本にきた最大の理由である世界会議についての説明が行われた。


まず最初に、世界会議は世界中に存在している列強国または準列強国の代表が参加し、各国の周辺の情報交換や今後の世界情勢に関する話し合いを行うものである。


また、世界に混乱を巻き起こしかねない国または組織に対しての対応を協議したり、共同でその対処を行う為の行事でもある。


そしてこの世界会議で、新たな列強国や準列強国の承認、またはその剥奪を協議する為のものでもあるということだった。


一通りの説明が終わったザメハーカ副外務大臣は、ここまで日本側に質問が無いことを確認すると、改めて本題に入った。


「では、改めて・・・我々ムー共和国は、先の大連合戦争において侵略国である列強オーマバス神聖教皇国そして同じく列強のレムリア連邦の2ヶ国と交戦し、それを撃退した貴国日本国に対して、この世界に多大なる影響を与える国とここに認め、来年に執り行われる世界会議に貴国を招待することになりました。そして同じく列強2ヶ国を撃破した地球連盟国にも世界会議に招くことも決定されました。なお、この招待を断ることは、当然出来ます。しかし、貴国等はこの世界において多大な影響を与える国だということを考慮して考えて頂きたい。」


その言葉に野村総理らは内心でほくそえむ。これで遂に日本がこの世界の表舞台に立つことが出来たのだ。これを断る手はないだろう。


そう考えているとザメハーカ副外務大臣の後ろに控えていた彼の補佐官らしき男が、手に持っていた高級そうな箱を手渡した。


「こちらは世界会議の参加資格を持たれた貴国に我が国の大統領からの贈り物です。どうかお受け取りください。」


「おぉ、それはありがとうございます。実は我々も貴国に対して贈り物があるのですよ。交換といきましょうか。」


そう野村総理は言って部下に同じく高級そうな箱を持ってこさせた。


この贈り物というのは、お互いに自国の技術力を誇示する為のものだ。技術格差が地球よりも遥かに激しいこの世界において、それは多くの国々が長い間行ってきた文化のようなものである。


そして、それは超大国であるムーも行ってきたことだ。今回、ザメハーカ達は日本国への贈り物を複数用意していた。


その理由は、日本が想定よりも下回る国か、想定以上の国だったか、その違いで贈呈品を変えるためであり、ザメハーカは、日本の戦闘機を見て後者の贈呈品を持ってきていた。


そうして互いの贈呈品が交換され、両者の承認を得てその箱が開けられた。


野村総理が開けたムー共和国からの贈呈品の中身は、何種類かあった。


1つ目は、ムー共和国の茶菓子のようなものだった。青いスティック状の菓子と円盤状のパンのようなものに、茶葉が入っていた。


そして2つ目は、地球人から見ても断言が出来る程に親しみのある品物であった。それは腕時計である。しかもただの腕時計ではなく、所々に宝石が埋め込められており、デザインも見事なものであった。ムー共和国の技術力だけでなく芸術性も判る。


3つ目には、どうやら世界会議で代表が論議する際に、その代表者の身分を証明する為の特殊なバッジのようだ。


そしてこれ以外にも専用機の貨物室に積まれている贈呈品の内容が書かれている品目があった。


その品目を読んでみると、様々な工業品があり、その中にはムー共和国の高級車があった。


野村総理は、2つ目の贈り物である見事な腕時計を手にし、溢れるような声で呟いた。


「ほう・・・これは見事な腕時計ですね。これに埋め込まれている宝石もそうですが、特にこのデザインは実に素晴らしいです。我が国にもこれ程の腕時計を作れる所は少ないでしょう。貴重な物を頂き感謝の念にたえません。」


野村総理の言葉は心の底からの正直な言葉だ。彼自身は、そこまで腕時計に詳しくはないが、それでもそこらの一般人よりは詳しく、世界でもトップクラスの腕時計を身に付けてきたので、この腕時計がどれ程、細部にまで作り込まれているかは判断できる。


この腕時計に込められている技術は、恐らく日本の最先端の技術には及ばない。それでもそこらの高級品よりずっと作り込まれているかもしれない、そう思わせる程の作品であった。


(これは、腕時計に関しては侮れないな。宝石も派手すぎないように工夫されている。)


そう考えていると、ザメハーカ副外務大臣も日本側が用意した贈り物を開けていた。


その箱の中身は、ムーのものと同じく何種類かに別れていた。


その内の1つは、偶然にも一致した日本の茶菓子であった。羊羮に日本茶の茶葉。日本の代表する和菓子であった。恐らくムー国の茶菓子もそのような物なのであろう。


2つ目は、日本から見たら古いが、この世界においては、驚愕に値する品であった。それは、電子手帳である。


電子手帳は、1980年代に現れた電化製品であり、この世界では、未だに開発されていない大変貴重なものである。


ムー共和国もアトランティス帝国も、基本的には紙とペンで記入して情報を管理していた為、その2つを必要としない電子手帳は多くの人々が欲することであろう。


この世界で、機械に打ち込んで記録しているのは、超大国内でも本当に一握りの学者や軍の技術者ぐらいだ。その学者達でも地球人から見て本当にかなり古い型のパソコンでやっているのだ。


だが、電子手帳というものを当然の事ながら知らないザメハーカ達は困惑した。その為、野村総理が実際に電子手帳を使いながら説明をした。


技術流出を考慮して(ムー共和国もそれを考慮して旧型にしたが、あまり意味はなかった。)電子手帳は古い型のを特別に新しく制作したものだが、ザメハーカ副外務大臣等にとってこれでも十分に最先端の技術だと感じたようだ。


「と、このように瞬時にここに先ほど記入した内容が記録されるわけです。これでいつでも確認することが出来ます。」


「なんと・・・こんなにも簡単に記録を記入できるものがこんな小型だとはっ。」


(バカな!こんな最新の技術を他国に渡すなどこの男は何を考えている!?まさか・・・これすらも旧式のものだというのか!いやそれは考えすぎなのか?)


ザメハーカ副外務大臣は悩む。日本側が用意した電子手帳なるものが日本にとって最新鋭の電子機器なのか、それとも技術流出を考慮されたものなのかが判別がつかないのだ。


「いやはや・・・このような素晴らしい物を頂けるなど、あなた方になんとお礼を申せば良いのか、我が家の家宝にさせて頂きます。」


ザメハーカは、そう言ってどうにか平常心を取り戻そうとする。


「そんな滅相もない。貴国のこの腕時計もどう感謝をすれば良いのか、大切に使わせて頂きます。」


そうして互いに交換が完了し、今度は日本国とムー共和国との国交開設が行われた。


超大国であるムー共和国と国交を結べる国は、非常に少ない。基本的には、準列強国以上の国でないと他国の国交を開設しようとする者達の中に隠れてしまう。


稀に高度文明大国クラスの国が国交を開設する事があるが、それは魔法石や石油、金等の高価な鉱物資源が産出される国だからという理由が大きい。


だが、そんな理由でも超大国と国交を結べれば、それだけでもその国の重要なステータスになる。例え列強国や準列強国でなくとも世界的に上の立場に入ることが可能となる。


その後は、ムー共和国側の自国の紹介が行われた。紹介の流れは書類と多くのカラー写真が使われた。まずムー共和国の人口に、政治形態、歴史・主要産業、大まかな軍か使用している兵器、もちろんこれはある程度は、情報を隠しているだろう。


日本側が驚いたのは、ムー共和国の人口とその軍の兵力だ。


ムー共和国の人口は約4億1500万人、これだけで世界有数の人口大国であるレムリア連邦を上回っていた。そして兵力は約540万人。これは地球で世界最多の兵力を誇っていた中国の520万人を上回っていた。中国の人口は15億人を越えているのにかかわらずだ。これは、かなりの軍人割合だ。


そしてムー共和国の主要産業は、自動車に造船、武器製造、食品に製薬産業、不動産業と金融など、まさに超大国に相応しい程に手広くやっていた。


流石は科学文明国の頂点に君臨する大国だと野村総理らが思った程だ。


野村総理の横に座っていた神谷外務大臣が総理に小声で話し掛ける。


(総理、これは想定を少し越えています。)


(あぁ、解っている。この人口で兵力がここまでだとは・・・誇張という線はあるが、油断は禁物だ。少なく言っている可能性もある。それと主要産業だが、どう思う?)


(・・・技術レベルはある程度は把握しています。それを考慮しますと恐らく我が国の主要産業が潰れる可能性は低いかと。しかし、あの国のものかは分かりませんが他国の人工衛星らしきものを防衛省が確認したようです。その辺りの対策を模索している可能性があります。)


(彼等の様子を見る限り、その可能性は低い気がするぞ?反応が、我々を知っている者のそれとは思えない。)


(しかしムー共和国に、ロケットの発射設備らしきものを確認しています。演技という可能性もあります。あるいは・・・科学衛星や通信衛星などしか持っていない可能性も。)


(偵察衛星や観測衛星を持っていないことがあるのか?)


(さぁ・・・私はそういったことには詳しくないので。)


そう話しているとムー共和国側の紹介が終わった。今度は日本側の紹介ということになる。


「さて、今度は我々の番ですね。」


神谷外務大臣がそう言ってドアの一つを開け、命じる。部下らしき者たちが数人入って来て、プロジェクターの準備を初めた。


ザメハーカ達は、用意しているそれが、映写機のようなものであることは気が付いた。しかし彼等の知るそれよりも、明らかに小型なことに困惑していた。


準備が整い、神谷外務大臣が開始を告げる。


「・・・それでは、我が国の紹介を始めます。」


如何でしたか?ここまでありがとうございます!


さて、遂に超大国であるムー共和国が日本に来ましたね!


次のお話が来るまでお待ちくださいませ!

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― 新着の感想 ―
[気になる点] ところで、ムーの政府専用機を出迎えた日本の戦闘機は、ステルス機ですか? ミサイルはすべて機内に収納していたので、装着していないように見えたと?
[一言] 用地買収がくそほど大変だったろうな>羽田空港 というか成田の拡張でよくねになるやつ。(難易度変わらないだろうからね) 正直機能制限したスマホで良いかなって感じはあるな どうせ外交官が駐留す…
[良い点] ムーとは比較的良好なファーストコンタクトができたようでよかったです。 [気になる点] 前回言っていた「1日で撃退できる」というのはやはり物量ゆえの話でしたか、参考までに零戦の値段を現代価格…
感想一覧
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