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バーとマスターと刀剣とネズミの日常と非日常  作者: お魚さん


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11/11

11話


「エドさん!ゼルグさんどこか知りませんか?」

息を切らしながら弟子が駆け込んできた。


「ゼルグさん、、、?、今夜は来ていませんが、、、」

エドは手を止め、弟子を見る。

「どうかしましたか?」

「それが、、、、早めに寝たはずの師匠がいなくなっているんです、、、」

弟子は不安そうな表情を浮かべながら、一枚の紙を取り出した。

「あと、、、枕元にこれが、、、、、」

差し出された紙を、エドが受け取る。

そこには、短い一文だけが書かれていた。


ーーー旧王城跡地に来い。


「なるほど、、、」

紙を見つめるエド。

理由はわからない、ただの勘にすぎない。

それでも、頭に浮かんだのは、あの呪印を操る魔術師だった。

「ここに来る前にギルドに行ったんですが、、、ゼルグさん重要任務中で、、場所は教えられないと、、、」

「そうですか、、、」

エドは、少し考える。

「ギルドマスターが動くとなると、、、」

「もしかしたら、大祭来賓の要人達の護衛中かもしれませね、、、」

「エドさん!どうしたら、、、、」

不安そうに尋ねる弟子。

「そうですね、、、アルマさんなら可能性があるかもしれません」

少しの間を置き、続ける。

「ただし、直接会えるのであれば、ですが、、」

「、、、?」

「この話は他の騎士団員たちにはあまり言わないほうがいいかもしれません」

「わかりました!行ってきます!!」

そう言うと、弟子は急いで店を後にした。


「ふふ、出番ですよ。エド」

「エド、やっちゃいなさいよ」

雷華とスライだった。

「ええ、行きましょう」

エドはそう答えると手早く閉店作業を終わらせる。

そして、雷華を片手に倉庫へと向かった。


ーーーーーーー


「さぁ、行きましょう」

倉庫から出てきたエドの姿は『ラット』へと変わっていた。腰に雷華を差している。


「旧王城は城壁の外側です。ちょっと飛ばします」

そう呟くと、エドは闇の中へ駆け出した。

(バルカンさん、、どうか無事で、、、)


夜の裏路地を、影が駆け抜ける。

屋根から屋根へと飛び移り、勢いを殺すことなく、城壁の高い壁をも一気に飛び越える。


そのまま、闇を切り裂くように走り続けーーー

あっという間に旧王城跡地へと辿り着いた。


足を止め、周囲を見回すエド。


かつて、王城だった場所。

今では建物の大半が崩れ、月明かりに照らされた瓦礫だけが静かに残っている。


その静寂を破るように、声が響いた。


「ククク、やっと来たな、、、、」


「、、、、」

エドが振り向く。

そこには刺繍が施されたローブを深々と被った男が立っていた。

そしてその足元に倒れたバルカンの姿があった。


その男から感じる魔力や気配、視線の質に覚えがあった。

キングワイバーンの群れと戦った時、あの時に感じたものと同じだ。


「まさか、ラットに会える時がくるとは、、、ククク、、、」

男は嬉しそうに笑いながら、天を仰ぐ。

エドはその一瞬の隙に地面を蹴った。

一直線にバルカンへ向かう。


しかしーーー


「!!!」

バルカンまであと少しの所。

地面を抉るほどの威力を持った巨大な風の刃がエドへ向かって飛来した。


エドは腰の雷華を抜き、迫り来る風の刃を斬り裂き、その勢いを利用して後方へ飛ぶ。


ズサァァァァァーーーー!

地面を滑りながら、エドは体勢を立て直した。


「ククク、、、まぁーそう焦るなよ」

ローブの男が笑う。

「邪魔は入らないようにして、おまえを待っていたんだからな」


「エド、この魔法、昔どこかで、、、」

雷華が尋ねる。

「ええ、たぶん東の国、ロフィア人だと、、、」

エドは男から視線を逸らさない。


「、、、なぜ、俺を?」

疑問を感じとったかのように、男は口元をゆがめた。

「そう思っているだろ?、、、ククク、、分からないか?」

「まぁ、当然か、、、」

男はゆっくりフードを下ろした。

月明かりが、その顔を照らす。

「私はネリス」

「『ロフィア帝国』『剣聖ラウザ』の息子だ、、、」

ローブの男がローブのフードを下ろしながら言う。

月に照らされ、顔が見える。


ネリス。


東の国ロフィア帝国の『魔帝』部隊長。

先代剣聖ラウザの息子

次期『魔帝』候補にも名が上がる実力者。

長身の痩せ型体型

黒髪、肩ぐらいのロングのセンターパート

呪印や闇魔法に長けているが戦闘系の魔法もかなり使える。



「ククク、、おまえ、あの『ラット・オブ・ソードマスター』だろう?」

口元を歪めながら言う。

「、、、、」

エドは何も答えない。

「あの日、父をおまえに討たれた日からどれだけおまえと対峙するのを待ちわびた事か」

ネリスの声に憎悪が滲む。

「やっと、、、おまえに復讐できる」

そう言うと、ネリスは倒れているバルカンへ手を向けた。バルカンの身体がゆっくり浮き上がる、無理矢理立たされるバルカン。

そして、、、ドゴッ!!

魔法によって強化された拳が、バルカンの腹部を直撃した。

「ぐはっ、、、!!」

バルカンの身体が、地面を転がりながら吹き飛んでいく。

エドが瞬時に反応する。

しかし、二人の間に強烈な風が巻き起こりエドの動きを阻んだ。

足を止めるエド。

そして、バルカンへ向けていた視線をネリスに戻した。

その一瞬、エドから殺気が漏れた。


「ククク、、、」

それを感じとったネリスは、嬉しそうに笑った。

「そうだ、、、いいぞ」

「それでこそ殺しがいがある、、、」

ネリスの言葉とともに、過去の記憶が蘇る。

ラウザがグランツ王国の若い傭兵に討たれた。

その情報は、瞬く間にロフィア帝国全土へと広がった。

軍事において完全実力主義を掲げるロフィア帝国では、敗北は許されない。

それが『剣聖』ならさらだ。

どれだけ功績をあげていても、敗北すれば、その価値は一瞬で失われる。

ラウザの訃報を知った部下たちは、口々に嘲笑った。

「ははは、結局ただのザコじゃねーか!」

「だな!散々偉そうな態度とっておいてな!」

「しかも、ただの若い傭兵だってよ!」

「軍の面汚しが!」

その言葉を、まだ若かったネリスは聞いていた。

父を侮辱する言葉。

それはまだ一般兵だったネリスの心に深く突き刺さった。

それは、しだいに激しい憎悪に変わっていった。


「ククク、、さぁー始まりだ」

ネリスが右手を掲げる。

右手に赤い炎、左手に黒い炎。

異なる二つの炎が、それぞれの手に渦巻いていく。

そして、同時にエドへ向かって放たれた。

「、、、、」

エドは動かない。

ただ、ラットの仮面をスッと押さえ直す。

次の瞬間、雷華を抜いた。

迫り来る二つの魔法。

エドは一歩も動かず、雷華を振るう。


ズバッン!ーーー


赤と黒の、二つの炎が真っ二つに切り裂かれた。

「エド、、、やりすぎたらダメですよ」

雷華が静かに声をかける。

「、、、今は黙っててもらっていいですか」

雷華を強く握り直した。

(あまりよくない状態ね、、、)

雷華はエドの変化を感じていた。

(怒りに、、支配されはじめてる)


「魔法を斬るとはな、、、」

ネリスの顔から笑みが消える。

「ククク、、生意気な、、、」

そして、、再び手を掲げた。

「殺してやる」

次の瞬間。

無数の風の刃が生み出される。

それは巨大で刃物のように鋭く、地面を抉りながらエドへ向かって飛んでいく。


「死ね!」

十発。

「死ね!」

二十発

「死ね!死ね!死ねぇぇぇーー!!」

無数の刃が夜の大地を切り裂く。

エドは風の刃を次々に斬り落としながら、ネリスとの距離を詰めていく。

一歩。、、、、また一歩。


そしてーーーフッ。


エドの姿が、一瞬だけ消えた。

「、、、、!」

ネリスの懐、すでに居合いの構えに入っていた。

「な、、、、!?」

ネリスが目を見開く。


スパン!!!!


一閃。


鋭い斬撃がネリスの身体を横薙ぎに斬り裂いた。

上半身と下半身がずれる。


しかし、エドは違和感を覚えた。

「手応えがない、、、」

雷華が呟く。


その瞬間ーーー



斬られたはずのネリスの身体が、黒い霧へと変わった。

その霧は夜の闇に溶けるように、ゆっくり消えていく。


「ククク、、さすがだ」

背後から声がした。

「速いな、、」

エドが振り返る。

そこには、傷一つないネリスが立っていた。


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