出戻り令嬢、街を案内する ②
お店が立ち並んでいるエリアは、活気があって、何だか高揚した気持ちになる。
私はあまりこういうエリアに来ることが少ない。そもそも、私は自由時間が少なく、あまりこちらまで来ることが出来なかったのだ。
それに自由に出来るお金もそんなになく、私は将来のために貯金をしなければならないもの。
自由に使えるお金がそんなにないので、沢山お金を使っている人を見ると凄いなと思ったりする。
結婚をする前の私はそれなりに貴族令嬢としての贅沢はしていたけれど、それでも高位貴族のようにお金を使うことはなかった。結婚生活中は全然自由なんてなかったものね。
そもそも貴族だとこうして買い物に自分で行くって言うより、商人を呼び寄せる方が多いだろうし。
「あの、ラト君。私もそこまでこのエリア来たことがあるわけじゃないからあんまり案内出来ないかも……」
小舟から降りて、私は思わずそう口にした。
だってラト君は、私に案内してほしいって言っているけど、私って此処について詳しいわけではないから……。
そう思うと、私よりももっと他の詳しい人に案内してもらった方がいいのかなって思ってしまった。
ラト君はそれに対して首を振る。
「そんなの気にしなくていいよ。俺がペネに案内してもらおうと思って声をかけたのだから」
ラト君って優しいなとちょっと一緒に過ごしているだけでも思った。
やっぱりこういう人だと、凄く異性にもてるのだろう。
「えっと、ラト君は家族へのお土産を買いたいんだよね。観光客向けのお店見に行きましょう。ラト君の家族って何人いるの?」
「両親と、姉が二人と弟が三人と妹が一人」
「まぁ……ご兄弟がとても多いのね」
ラト君の言葉に私は驚いてしまった。
ラト君のご家族は、ご両親にお姉さんが二人に、弟が三人に、妹が一人……って、七人兄弟? ラト君は七人兄弟の長男なのね。
それにしてもそれだけ兄弟が多いとどんな感じなのかしら。
私には弟しかいないから、そういうにぎやかな家庭はどんな感じなのだろうかってそんな気持ちになる。
「それぞれの好みもあるからお土産を選ぶのも結構大変ね」
「大変だけど、まぁ、楽しいから」
「ふふ。仲が良いのはとても良いことね」
ご両親と七人兄弟のお土産となるとかなりの量が必要になるだろう。
「ペネには兄弟はいるの?」
「弟が一人いるわ」
私の結婚前は、まだ私を慕ってくれていた弟。
でも今はすっかり、私のことを疎ましく思っている弟。
なんだろう、ラト君と一緒にこうして歩いていると私がもし弟と仲良かったらこうして一緒に出掛けることもあったかななんて……そんな風に弟とかぶせてしまっている。
でも何だかそれはラト君に失礼な気もする。でもやっぱり弟と同年代だから、少し同じように見てしまうのよね。
「まずは母さんだな。母さんは何でも喜びそうだけど……なんか珍しいものにするか、それとも武器にするか」
「武器??」
「うちの母さんは凄く強い。俺は勝てない。魔物退治にもよく行くから、武器でも喜びそう」
「……そうなのね」
ラト君のお母様が中々想像が出来ない。
魔物をつって倒して、魔物退治にもよくいって、とても強い。……凄い人だと思う。
それにしても魔物を倒せる人というだけでもすごいと思う。
だって私たちの暮らしは、そういう魔物を倒してくれる人がいるからこそ成り立っているから。
でもお土産で武器をあげて喜ぶなんて面白い方だと思う。
それから武器をみたり、小物をみたり、お菓子をみたりと様々なものを見る。それにしてもラト君は一番真っ先にお母様のお土産を選びたいみたい。
家族の中で一番強いのがお母様なのかしら?
「よし、とりあえずこれ買うか」
ラト君は髪飾りなどの小物や、簡単な武器などを購入していた。
「こういうおしゃれな小物は母さんは自分では買わないけれど、俺たちが買ったら身に着けるんだ。父さんは母さんが着飾った方が嬉しそうだしな」
「へぇ……そうなのね」
「ペネは、何か買ったりしなくていいの?」
「……うん」
私はそんなに自由に出来るお金はあまりない。
だから、なるべくこういうところでお金を使い過ぎないようにしたかった。
もし自分でもっとお金を稼げるようになって、自立できるようになったのならばもっと自分の為にお金を使ってみたいな……とは思っているけれど。
でもわざわざ自分で使えるお金がないなんてことをラト君に言わなかった。だってなんかそういうことをわざわざいうのもなんかなって思ったから。
私の目標は家を出て、一人で暮らすことだから、もっと自分でなんでも出来るようにならなければなって思うけれど、結局その買い物中もラト君に助けられてばかりだった。
人通りが多かったから、ラト君とはぐれそうになってはぐれないように手を掴んでもらったり、本来の値段よりも高いものを見せられている時に「その値段はぼったくりじゃない?」とか教えてくれたり……、ラト君は私より年下だけど、私よりもずっと街での暮らしに慣れているなと思った。




