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出戻り令嬢の日常と、一つの出会い ①




 私はこのスフィワネ子爵家の中で最も早く目を覚ます。

 朝からご飯の準備や、掃除などの家事をすませる必要があるから。


 貴族の娘だというのにも関わらず、私は貴族令嬢らしからぬ手荒れをしてしまっていた。



 昔の私は、もっと将来に夢を見ていた。

 そしてもっと、結婚にも夢を見ていた。



 ――でも今の私は、そういう当たり前の貴族の令嬢としての幸せは見れなくなっている。




 掃除を進めて、朝食の準備をする。

 朝食を机に並べて、そして私は自分の部屋で残飯を食べる。



 まだご飯をもらえているだけ喜ぶべきだろう。世の中には私以上に酷い目に遭っている人は沢山いるのだから。死ぬほどの辛い目に遭っているわけでもないし、これから自分がどんなふうに生きていくかというのも選び取ることだって出来る。




 そう考えると、私が行動さえすればどうにでも出来る気がする。

 私の住まうジェネット王国では、活躍している女性が沢山いる。私はそういう女性の活躍を噂で聞くたびに、自分と比べて少し落ち込んでしまう。



 何の力もない私。――そういう風に、一人で考えてしまうことが時々ある。でもそういうことをずっと考え続けていても仕方がない。




 私は家のことを終えると、街へと向かう。

 買い物をして、そして仕事を少しだけする。思いっきり働ければまた未来への希望が広がっていくのだろうけれど、もし貴族でありながら働いていることを知られたら……両親に何を言われるかもわかったものではない。



 街の人たちとは、結構顔見知りになっている。はじめて一人で街に顔を出した時は、結構挙動不審だったり、周りから不審に思われてしまっていたりしていたけれど――今はすっかり平民にも混ざっていても違和感がなくなっている。




「こんにちは!」

「あら、ペネちゃん。こんにちは。今日もよろしくね」

「はい。よろしくお願いします」




 仕事先である雑貨屋さんに顔を出せば、オレユさんがにっこりと笑いかけてくれる。

 この場所で働き始めて数か月。まだまだお金は貯まっていない。

 それにしても私はあくまで貴族として生きてきたからこそ、普通に生きていくための常識がない。お金を貯めたところで、今の暮らしを捨てた場合、私は生きていけるのだろうか。



 街で仲よくしている人たちは、私が逃げようとしたら助けてくれる……とは思う。けれど私が今の状況からただ逃げ出すだけだと、両親にただ連れ戻されたりして終わりになるのかもしれない。





「ペネちゃん、どうかしたの?」

「何でもないです。それより今日は街が少し騒がしいですね」



 雑貨屋に向かう最中に少し気になっていた。

 街が少し騒がしくて、何だか落ち着かない様子の人が多かったから。私は毎日街に下りてこれるわけじゃないから、どうしてそういう様子なのか分からなかったのだ。



 オレユさんは私の言葉に笑いながら言った。





「このあたりに王宮騎士団が来ているんだよ」

「……王宮から? 王都から騎士が来るなんて何かあったんですか?」



 このスフィワネ子爵領は、王都から離れた場所にある。王都に私はあまり行ったことがない。ちょっとしたあこがれはあるけれど、きっと王都に行くこともあまりないんだろうなと思っている。

 王都の騎士団は、この国の人たちにとってのあこがれの的である。男の子は騎士団に入りたいって憧れる人たちが多い。




「ああ、近くの領地で魔物の被害があったらしいんだよ。魔物退治と見回りもかねてきているんだって話だ」


 両親はもしかしたらその話を聞いているのかもしれない。仮にも貧乏子爵家とはいえ、貴族なので、王宮騎士団たちと会話も交わすのかもしれない。

 とはいえ、私は関わることはまずないだろう。




「ペネちゃんも、騎士団にはあこがれがあるの?」

「少し。だってやっぱりそういう力があって、誰かを守る力がある人ってかっこいいじゃないですか」

「ふふ、そうだねぇ。私もかっこいいと憧れるよ。私は何より《炎剣帝》様が憧れるよ。同年代であれだけ活躍している女性はいないからね」



 オレユさんが楽しそうにそんなことを語る。



 私の住んでいるジェネット王国には、《炎剣帝》と呼ばれる英雄がいる。

 私が生まれる前からずっと、国内外に名をとどろかせていた英雄の女性だ。子爵令嬢である私は会ったこともないが、この国で一、二を争うぐらい有名な方だ。


 オレユさんは《炎剣帝》様と同年代だから、余計に憧れている気持ちがあるらしい。





「そうですね。私も、《炎剣帝》様は凄い方だと思います」

「一度でいいからお目にかかりたいものだよ。まぁ、難しいだろうけれど」

「そうですね」



 そういう会話を交わしながら、雑貨屋での接客業をしていく。

 お客さんは、あまり来なかった。常連の男性から騎士団の話と魔物の話を聞いた。強大な魔物が森の中を逃げ回っているらしい。だからそれを倒すために騎士団は森に入っているんだとか。


 それにしても魔物が逃げ回っているなんて、少し恐ろしい。街の中にまでは入ってくることはないだろうけれど……早く退治されたらいいなと思った。





 

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