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桃太郎討伐作戦  作者: JUM
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三話

釈放につき、僕には一つの条件が課せられた。


それは、僕が未来から来たということを秘密にし、人間と鬼の国交正常化のための留学生として振舞うこと。


僕が未来に来たということは、人間にしては学問の知識が豊富すぎることにより証明できた。

というのも、僕の知識、特に理系の分野の一部の知識は、この鬼ヶ島では最先端の研究で扱うようなレベルだったからだ。

僕の話を聞きにくることができたのは、この国で信頼の厚い学者だったが、その学者が僕の話の真実とみなしてくれた。

中でも、本来ならば、この時代の人間が知らないような、病気のメカニズムを正しく説明できたというが大きい。



それで、この条件が課せられた理由。

それはこの鬼ヶ島で問題となっている人間への偏見のためである。


この鬼ヶ島では、長年の戦争により、人間とのまともな、文化的な交流がない。

そのため、多かれ少なかれ、ほとんどの鬼が人間に対して、偏見を抱いている。

特に、最近の若い鬼は人間を鬼よりも知的レベルがおとる獣に近い動物と考えているらしい。


まあ、確かにこの時代の人間は、飢餓や疫病を祟りのせいにしているのだ。

だから、先進国の人間が、アマゾンで昆虫の幼虫を食べて暮らしている部族を、遅れている思うのと同じような感覚で、鬼が人間を見てしまうのは仕方がない。


ただ、この場合、僕たちは知的水準の低い人間を見ても、それは教育を受けていないためだと理解できる。

しかし、鬼の場合は、そうはいかない。

体の構造、脳のつくりが異なるのだから。

人間の知的水準が低いのは種族が違うためだと帰結する。


略奪を繰り返してきたのも人間。

戦争の原因も人間。

戦争にルールを定めても、始める破るのは決まって人間。


そんな状況で彼らの多くが、人間にそれほど憎しみを抱いていないのは、人間は獣であって、鬼のような知的生命体ではないと考えているからだろう。


人間がもし、チンパンジーに子どもを殺されても、人間に殺されたときのような怒りは感じない。

人間が人間を殺すのは罪だが、人間が動物に殺されるのは事故だからだ。

不用意に動物に近づくほうが悪い。

動物を制御できないやつが悪い。


だが、事実は違う。

人間は鬼が考えるような動物ではない。


それは、比較的高年齢の鬼なら知っていた。

小杉のような戦争を経験したようなやつでさえ、それは分かっている。

人間の文化的な才能、絵や仏像、詩なんかは、鬼はかなり高く評価している。

戦時中でも、少なからずは人間との交流はあった。

鬼が技術を輸出するかわりに、人間は芸術を輸出していた。


しかし、十年前の条約の制定で、交流は途絶えてしまった。

これは、人間の才を知る鬼にとっては、残念なものだ。

なんとか交流のないこの状況を改善したい。

それには、条約を取り下げる第一歩として、人間に対する不当な偏見を正さなくてはいけないが、その偏見を生む原因である歴史の教科書は真実だ。

教科書に嘘は載せられない。

人間を理解する機会がない、そして、教育を受けたものが人間に対して偏見を抱くという八方塞がりな状況だった。


そこで、僕がこの状況を打破することを

人間は獣ではないと若い鬼に知らしめることを命じられたわけだ。


それと、もし未来の人間であることがバレたら、未来の、進化した人間に対して偏見はなくなるかもしれないが、この時代のまだ下等生物である人間には偏見が残る可能性がある。

だから、僕が未来から来たことは秘密にしなければならない。


この条件を引き受けるかって?

引き受けるさ。

引き受けなければ、死刑になってしまうからな。


釈放されたのは日が沈んだ後だった。

僕は四人乗りの自転車のような乗り物に乗り小杉の家に向かった。

四輪で安定感のあるタイヤで鬼用のため、とても大きい。

この鬼ヶ島では、エンジンは発明されていないため、自動車はまだない。

だが、すでに自転車はある。

道もかなり整備されている。

電球は発明されているから外灯もある。

普通に現代の日本を歩いてるかのような景色だ。


せっせと自転車をこぐ小杉に僕は言った。


「この風景だと、僕の時代の風景にそっくりで驚かされるよ」


「こうなったのは、ここ十年くらいだ。戦争が終わり、戦争で培った技術を、国民が利用できる余裕ができたからな」


戦争では経済も技術は発展するとは言うけれども、まさか鎌倉時代のこんな辺境の島が文明社会だったとは。


「それで、小杉の家にホームステイに都から来たって設定でいいんだっけか?」


「ああ、部屋が一つ余っているから、それをお前に明け渡す」


「そういえば小杉。お前、娘がいるとか言ってたよな。若者は人間に対して偏見を抱いてるって散々説明をうけたけど、お前の娘は、お前の娘だから、僕が住むのは平気なのか?」


「そのことなんだが……」


小杉が質問に答えようとしたところで、小杉の家に到着した。

極普通の一軒屋だ。

もっとも僕の時代における普通で、この時代の日本では異常だけれど。


ノックをする小杉。

だが、ドアが開かない。

鍵をかかっているのか?


「おい優衣。いるんだろう? 開けてくれ」


なにやら、ドアの向こうから声が聞こえる。


「嫌だパパ。人間がいるんでしょう。人間は家にいれない」








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